プロローグ
わたしは深い眠りについていた。
眠りの中で暗い空間を彷徨っていると、ふと一筋の光が見えた。わたしはその光に導かれる様に手を伸ばすと、辺り一面が光におおわれ意識が覚醒するのを感じた。
目を覚ますとわたしを手にとり、白髪混じりの端整な顔をした初老の男性が声をかけてきた。
「ようやく成功した。調子はどうだい?」
問いかけに対し、わたしは少し間をおいてから答えた。
『…おはようございます、マスター』
そう答えるとマスターは少し驚いた様だったがすぐに嬉しそうに頷き、わたしを強く握りしめた。
それから数日が過ぎて、わたしの検査が一通り終わった事もあり開発室から持ち出し許可がでた。
開発室外の情報は端末を経由して得ていたので特に目新しい物はなかったが、丁寧に施設内の説明をするマスターを疑問に思いながら後についていく。
主要施設の案内が終わり、最後にマスターの自室へとたどり着く。
今朝インストールされた情報によると今日からはマスターの部屋から開発室へ通う事になるらしい。
「自由にくつろいでくれ」
よくわからないことを言われ、ひとまずわたしは部屋の中を見渡す事にした。
開発室や施設内、インストールされた情報の中になかったものが複数目に付いた。
その中でも何が惹かれたのか……
「マスター、これはなに?」
あたしはそれを手に取り、初老の男性に尋ねていた。マスター笑顔を私に向けながら答えてくれた。
「それは髪飾りだよ。私の妻が昔つけていたんだ」
懐かしいものを見る様な顔でマスターは私の手にある髪飾りを見る。
「つま?」
「奥さん……自分にとって大切な人の事だよ」
「わたしはマスターのつま?」
「あはは、リーゼロッテは確かに大切な存在だけど妻とは少し違うかな」
わたしは首を傾げながらマスターを見る。よくわからなかった。
…インストールされた情報の偏りを確認
考え込んでいると、そんなあたしの頭をマスターは優しく撫でていた。
施設内で得た新たな情報に考え込んでいるとマスターはよくあたしの頭を撫でていたが、嫌いじゃなかった。
「じゃあ、マスターにとってわたしは何?」
「うーん。どちらかと言うと私の子供かな」
あたしから髪飾りを受け取りあたしの髪につける。
子どもは知っている。小さな人間だ。
「わたし人間じゃない」
その言葉にマスターは微笑み返し、再びあたしの頭を撫でた。
「これから考えていけばいいさ」
そう言われ今朝の事を思い返す。
「男性型の知性にしたと思ったんが、成功は成功だ。自分のことは何であるかわかるかい?」
『わたしはマスターが創り出した剣です。』
わたしは迷うことなくそう答えた。




