4.第1章
緊張がピークに達した。今まで、母親以外の女性とまともに、
会話したことがなかった。画面越し、直接向き合っているわけでないけど、
僕には「できない」ことのように思えた。「逃げよう」終了のボタンを押そうとしたら、
彼女が、ゆっくりとした口調で、「はじめまして」「こんにちは」と声をかけてくれた。
優しい、包み込んでくれるような、甘い声だった。
僕が返事をしないので
彼女が「聞こえてるかな?」「今日はネットが不安定?なの」と続けて発言した。
僕は慌てて「聞こえてます」と、テキストで返事した。
これが初対面の第一声なのかと、なんて気の利かない男なんだと自分で思った。
彼女は、そんなこと気にせず、「よかったぁ~」「聞こえてて」と
嬉しそうに答えてくれた。目を細めた。笑っていた。
僕も嬉しくなった。まだ「聞こえてます」としか、言ってないのに、
もう、繋がった気がした。また強く惹かれた。
「今日は寒いですね~」彼女は次々、話しかけてくれた。
僕は「はい」とか「そうですね」としか、書いてなかった。
きっと彼女も、つまらないだろうなと、思った。
そのうちに、彼女が「今日はどうしますか~?」「このままお話する~?」
と聞いてきた。
彼女を探す過程で、このサイトが「何か秘密めいた事=女性が性的な事」を
する場だと理解していた。僕も内心、望んでいた。期待していた。
僕が黙っていると、彼女の方から「じゃ、しよっか?」「見ててくれる?」
少し、おどけた口調で言った。「いつも最初は恥ずかしいんだけどねぇ~」と
甘い声で。始まった。美しかった。
そうこれが、すべての始まりだったように思う。




