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「君を求う きみをこう」  作者: 旭 諭


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10.第7章

 朝がきた。そわそわした。大学の卒業式でもしなかった

身支度をした。ヘアスタイルが気になった。

会うわけでも、映すわけでないのに、彼女に嫌われたくなかった。

あんなに、

わくわくしていたのに、楽しみにしていたのに、待ち望んでいたのに、

画面越しの彼女見て、怖くなった。逃げたくなった。


彼女は、なにか「不安」「悲しそうな」表情をしていた。

いつも、見ない表情だった。「見るだけ」の僕は、彼女の表情をよく眺めていた。

いつも、穏やかな表情。相手を「安心」させる、そんな雰囲気。


でも、今日は違った。「僕」なんかとの「約束」だから。


目が合った気がした。入室のボタンを押した。


「おはよ」彼女が柔らかに言った。目が細くなってた。

続けて「よかったぁ~遅い!来ないのかと思ったよ~」

笑っていた。頬を膨らませていた。


僕の気持ちが明るくなった。

待たせたこと、謝った。嫌われたくなかった。


「おはようございます」と僕は書いた。

「なんで、このタイミングで挨拶なの~?」と彼女が笑った。

僕も笑った。打ち解けられた気がした。繋がったと。


とりとめのない会話した。明日になれば、忘れることを。


「じゃ、しよっか?」「見ててくれる?」「ちょっと待ってね」

優しい声だった。幼いころに聞いた、母と重なった。


僕は待っていた。望んでいた。


「やっぱり恥ずかしんだけど」と彼女が言った。

服を脱ぐ姿、しぐさが、美しかった。


今日も「僕の名前」呼んでくれた。「一緒に」と

自然に手が動いた。夢中で「シタ」

そこには、いつもの想像の彼女ではない、生身の彼女がいた。

画面越しの、手は届かない、体温も、匂いも、ない、行為。

さっきまでの、母のような姿ではない、乱れたひとりの女性。

確かに繋がった。「一緒に」果てた。


終わった直後、彼女が小さな声で言った。

「今、ちょっと大変な時だったから、あなた一緒にできて、よかった」と

いつもの意気地の無い僕は、きっと、聞けないのに、

今日は聞けた。2度の行為で、繋がった気がしていたから。

「シングルマザーなんだ~私」照れたような口調だった。

「ママがこんな事していて、幻滅したかな?」「子供には言えないし」

諦めたような、彼女の表情。

僕は「そんなこと無いです」「もっと好きになりました」と書いた。

「好き」などど書いてしまった。少し後悔した。

彼女が「ありがとう」「元気でた」

「元気を癒しをあげないといけないのに、私がもらっちゃった」

彼女が笑った。いつもの下がった目尻が、光っていた。

少し濡れているようだった。気のせいかもしれないけど。


「今日はありがとう。強引に私から誘っちゃったから、嫌じゃなかった?」

僕は「いつでも、誘ってください」「暇が取り柄です」

精一杯の冗談を伝えた。初めて、女性に頼りにされているように思えた。


「ありがとう」と、彼女は短く、ゆっくりと言った。


僕はこのとき、感じた事の無い、「達成感」を得た。








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