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28話 空の人

「…惨いね。」


サーシャは飛行船艦の窓から地上軍の惨状と飛行船艦の亡骸を見て呟いた。


そんなサーシャの肩をベルメールが叩く。


「サーシャさん。そろそろ…。」


その声を聞いたサーシャは視線を窓からベルメールに移して言った。


「分かった。今行くよ。」


サーシャは腰を上げ、降下装備を棚から取り出す。重い足取りで窓を離れて飛行船艦の最下層まで降りた。



****************************



最下層に到着したサーシャは自身の小隊の整列や降下衝撃対策の為に脚部に身体強化魔法を施した。


各小隊が集合すると先程第一波を見送った大隊長が口を開いた。


「よし。お前たち、準備はいいか!?第一波の降下は無事完了した。次はお前たち第二波の出撃だ!

警備バディ同士で降下装備とレールの接続を確認しろ。」


大隊長が指示をすると集結したC中隊の皆は、レールをカチャカチャと鳴らしてパラシュートを自動展開レールに接続。その後バディ同士の指差し確認を済ませた。


「通信兵は落下中も通信線を維持。降下後に降下状況を報告しろ。」


腹と背に有線通信装備を担いだ通信兵が頷く。


「中隊降下後は降下地点から直ぐに離れろ。追加装備と進入用大型魔導器を投下する。」


大隊長はレールの最後方の荷物を指差して言った後に続ける。


「よし。最初の降下は第一少隊からだ。

グレムシア帝国万歳!健闘を祈る!」


その掛け声とともにサーシャを先頭とした第一小隊は降下口へ駆けて行き、大空にその身を投げる。


―ジィィィ…パキンッ


冷たい風がサーシャの身体を叩く。


パキンッという音と共にサーシャ達は空へ放たれ、重力が一呼吸遅れ、思い出したかのように全身に働いた。


自身に突きつける冷たい風が訓練を思い起こした。するとパラシュートがガバっと開かれ、雲の切れ間から覗かせた朝日が照らす。


サーシャの周囲では小隊の皆がいる。大型魔導器で互いに衝突することがないように調整された皆の顔は薄ら笑みを浮かべている。


「大丈夫!?」


サーシャの問いに一番近いバルツが答える。


「大丈夫です!」


次第に降下地点に近づき小隊は順番に着地していく。身体強化魔法により怪我をするものは居なかったが、サーシャは足にジーンとした感覚を覚えた。


「小隊集合!分隊ごとに点呼!」


すかさずサーシャは降下地点から離れて小隊に集合と点呼を呼びかける。


「サーシャ。各分隊で無事を確認した。」


サーシャの補佐として働くカールが状況を報告する。


小隊全員の安全を確認した第一小隊は第一波のAB中隊に合流し、残りの小隊の降下を待った。


その史上初の空挺降下の様子は旧帝博で見た『ウィリアム・ブレイク「ヤコブの梯子」』に似た神々しさを帯びていた。



****************************



リュミエール要塞群は三つの要塞から成る。


現在地上軍の歩兵師団が突撃を敢行している第二第三要塞と司令官や主発電室や弾薬庫を抱えた少し後方の第一要塞だ。それぞれの要塞は地下道で繋がっており、たとえ第二第三要塞に侵入されようと対処が可能な設計が成されている。


サーシャ達が降下したのは三つの要塞が作る三角形の中心だ。


要塞の目である装甲観測ドームの死角から降下できる唯一の地点である。


陽動部隊のAB中隊は火炎放射装備や重装甲装備で身を包み、覆土の薄い後方弾薬庫直上へ向かった。


隠密部隊のC中隊は追加で投下された大型魔導器をスパイの情報を頼りに主発電室の直上かつ、直線上に別の構造体が存在しない場所に固定して、全魔導兵の血を注ぐ。


大型魔導器が血に反応して赤い煙を吐き、辺りに血の匂いが立ち込め、全員が顔をしかめる。


次の瞬間大型魔導器の中心が淡く光り、覆土やコンクリートを溶かして、三人が余裕を持って通れる竪穴で地下深くの主発電室までを貫いた。


中隊長が火をつけたタバコを落として深さを確認するとロープを二本垂らして告げた。


「第一小隊からだ。スパイ曰く司令部より奥の主発電室内に警備は居ないらしいが警戒は怠るな。

ここからは相手のテリトリーだ。」


普段より一層険しい顔でシュポアが告げると第一小隊小隊長たるサーシャは強く答えた。


「了解しました。」


サーシャは小隊に視野強化魔法を施して暗闇に対抗することができるようにした所で一日における血液使用量の限界を携帯魔導器が告げた。


ここから魔法の使用がサーシャの戦闘不能状態を指す事になった。


第一小隊は小隊長補佐のカールを先頭とした偵察隊を再編し、偵察隊が主発電室内の安全を確認すると深さを確認した時のタバコを振って安全を伝えた。


第一小隊は小隊長サーシャを先頭にロープを深く、より深く下って行く。


サーシャは血液使用限界に届いていない魔導兵を確認しつつ残りの小隊の到着を待った。



****************************



「よし。大型魔導器と通信の死守は任せたぞ。」

「了解です。守り抜いてみせます。」


シュポアの声に通信班は答え、飛行船艦の大隊長、陽動部隊、隠密部隊との通信を続けた。


「私で最後だな。…この戦争もこれで終わるのか?」


シュポア中隊長は幾ばくの疑問を浮かべつつロープを下った。

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