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18話 戦場における魔導兵の活用例

ゼクレスは自身のテントに中隊長と小隊長を集め、テーブルの上の地図を棒で指しながら説明する。机に広がるのは帝国航空軍の偵察機による情報から作られた地図で、様々な情報が書き込まれていた。


「A中隊は連絡壕の確保と敵の連携遮断。身体強化魔法と装甲魔法を装甲装備と併用し、重装甲兵として正面突撃。敵機関銃の注意を引きつける。そして機関銃を気にせず中央を突破し、装甲を用いて塹壕中央で持ちこたえる。」


「B中隊は右翼の突破。A中隊に敵が集中している間に、精神阻害魔法を用いて鉄条網まで静かに進む。鉄条網を熱魔法にて切断して機関銃陣地αの死角から侵入し、制圧。興奮魔法と精神阻害魔法を使って塹壕戦を有利に進める。」


「C中隊は左翼の突破。A中隊に敵が集中している間に、精神阻害魔法を用いて鉄条網まで静かに進む。鉄条網を熱魔法にて切断して機関銃陣地βの死角から侵入し、制圧。興奮魔法と精神阻害魔法を使って塹壕戦を有利に進める。」


「D中隊は第二波の拡張役。機関銃陣地制圧後、突破後の敵塹壕内を左右に掃討。火炎魔法を利用して壕の中まで焼き払う。」


「E中隊はD中隊と同じく第二波の拡張役。魔法で敵位置を共有し、残存兵を排除する。尚、不測事態の発生時はE中隊の支援の下撤退を行うため魔法は二回までの使用とする。」


「F中隊は後方支援。負傷者の回収と通信維持を最優先で行う。一部分隊は塹壕にて治癒魔法を使用し、戦闘要員の数を維持する。」


地図の各所を指して詳細な作戦の内容を伝えた。


(つまりAで敵火力を固定し、その隙にBCが機関銃を制圧してDを加えてFの支援の下で掃討し、もしもの場合はEの魔法を頼りに撤退って感じかな。)


サーシャは頭のなかで作戦を整理、理解して小隊に説明ができるようにしておいた。


「この作戦は準備砲撃を行わず奇襲という形である。無論、精神阻害魔法のみで行動を隠匿するのは無理がある。故に暗闇を進む。魔導視野で何とか視界が確保できる日の出の一時間前に作戦を開始する。

尚、A中隊が塹壕に突入後、十五分経っても機関銃陣地を制圧できない。B・C中隊いずれか片方、または両方の全滅。E中隊の全滅。通信断絶。これらの内一つでも発生すれば作戦は失敗だ。その場合、魔導兵は限界ギリギリまで魔法を使用して全員撤退だ。」


作戦の説明を受けると、それぞれ自身の指揮する小隊のもとへ向かった。サーシャは塹壕に戻り作戦を小隊全員に伝える。その中には勿論この前の下品な補充兵も居る。


彼らはシュポア少佐が予備装備保管庫にて発見し、コッテリ絞られてからサーシャの元に戻ることになった。しかし問題発言は減ったもののサーシャ直属分隊のメンバーに対しては度々口答えするなどを繰り返していて小隊の不安要素の一つである。


「…つまり、我々の中隊は左翼の機関銃陣地の無力化とA中隊と協力して残存兵力を破壊する事が目的だ。

そして私の小隊は鉄条網の突破と、機関銃陣地制圧後の残存兵力の破壊が役目だ。機関銃陣地を保持し、増援の警戒を行う他の小隊の為にも、しくじる訳にはいかない。」

「はっ!」



****************************



切断後の小隊の動きの最終確認を済ませたシュポア少佐の率いるC中隊は中隊長の魔導視野を利用して暗い夜の戦場を進んだ。


A中隊がゆっくりと前進を始め、機関銃がそちらに注意を向けたのを確認すると鉄条網の溶断を始めた。全小隊長による広範囲の精神阻害魔法は効果的であり、鉄条網の除去は成功した。


しかし作戦は思い通りに行かないことも多々ある。生意気なあの二人が手榴弾を機関銃陣地に投擲した。轟音とともに機関銃陣地の手前で爆発したその二つの手榴弾はA中隊に向いていた機関銃陣地の注意を引いてしまった。精神阻害により、狙いは乱れ、弾は一発たりとも当たらなかった。しかし第一小隊とサーシャの率いる第二小隊は砲撃跡の凹みから動けなくなってしまった。


そんな予想外の事態を察したA中隊は予定より早く塹壕の突破を試みた。装甲魔法と身体強化魔法を使用したガチャガチャと大きな音を立てて鉄条網をものともせず塹壕に侵入して来る重装甲兵二百名は、一瞬だが機関銃陣地のフォラールの兵の意識を引き付けた。


制圧射撃が一瞬止まり、機関銃陣地の意識がA中隊に移ったことを察すると機関銃陣地に対して各員が発煙弾を投擲した。視界を奪われた機関銃陣地は制圧射撃を完全に止め、その間に大きく左へ迂回した第四小隊が死角となる側面と背面から機関銃陣地を制圧した。


「弾丸の再分配と、確保した機関銃を用いて逆襲の警戒をしろ。それと通信兵を寄越せ。」


皆急いで再準備を行う。その間にシュポアは報告を行った。


「C中隊シュポアより大隊長。C中隊損害有れど左翼機関銃陣地を確保。全員継戦可能。」

「了解。A中隊の突破に先駆けて掃討を進めろ。」

「了解。」



****************************



―ズォン…ズォン…


―ズガガッ


「おい。あれ多分C中隊じゃねぇか?多分バレたぞ?中隊長、どうする?」

「勿論行くさ。」


A中隊にも二度の爆発の音は聞こえていた。作戦が露呈したと判断したA中隊の中隊長は、C中隊の援護の為に予定を早めて敵塹壕の突破を試みた。


「お前ら行くぞぉ!小官に続けぇ!」

「「「おぉぉ!!!」」」


今まではゆっくりと一つの塊として進んでいた鉄塊は雄たけびと共に六つの塊に分けられ、猛スピードで塹壕に突撃した。


「死になぁ!」


難なく突破した塹壕にてA中隊は狭い塹壕内でも取り回しの利く拳銃とサーベルによる白兵戦へ移行した。装甲でガッチリと固めた彼らは敵の弾丸や刃を弾き飛ばし、制圧していく。


「通信兵ぇ!来い!」


「A中隊から大隊長!敵連絡壕確保ぉ!一名死亡し、四名負傷!他の隊員は装備に損傷有れど被害無し!」

「大隊長了解。右翼と左翼方面にそれぞれ一小隊送ってくれ。」

「了解!」

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