表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/30

14話 大規模演習

「先日帝国行政府はロドミア帝国、ヴェルシアナ=ヘヴラニア二重帝国、ゼフラド帝国間における強固な軍事同盟を結んだと発表しました。これにより度々利害の衝突が発生していた我が国とロドミア帝国は同盟国となり長年の紛争は幕を下ろす事になりました。そして、ブライゼン王国、フォラール共和国、リメルナ王国、エスパネル王国による四国海上利権協定問題を『大陸国の利益を守るために即刻対処すべき問題』として四国間で協議の上、威厳を持って取り組むとの共同声明を発表しました。」



****************************



観光を終えて訓練に復帰したサーシャ達は通常訓練を再開した。暫くは通常訓練を行っていたが、唐突に大隊規模の訓練が始まる事になった。この決定は表向きには通常訓練を修了したサーシャ達を正規軍として扱い、実戦に似た状況での判断力を鍛えるためである。しかし実際は先のラジオ放送からも分かる通りグレムシア帝国が海洋利権を独占する「マレイスト国家」との戦争の前線となる可能性が強まった為であり、魔導兵を試験的に運用する突撃魔導試験大隊の訓練予定を大幅に変更し、即時出撃出来る様にする為である。


なお、サーシャを襲った二人組はその後カフェで捕まえたスパイの供述により特定された。二人は容疑を否認していたが状況証拠やスパイの供述により軍法裁判で有罪とされた。その後の行方はほとんどの人が知らない。魔導研究室に送られるか殺されるかの二択だが、どちらが選ばれようと結果はほぼ同じものだ。



****************************



遂にサーシャ達が正規の軍人となる日がやって来た。


今までの暮らしは地方の人間に最低限の規則と人間関係を身につけ、今後正規軍に編入する際に混乱を防ぐ緩衝期間だった。しかし国際緊張により予定された訓練は最低限に留められ、今日から正規軍として扱われるようになる。今日からサーシャ達は今までよりも厳しい軍の規則に縛られ、教官との関係を含む人間関係は、軍人の上下関係に切り替えられる。


「おはよう諸君。私は『混成突撃魔導大隊』大隊長ゼクレス中佐だ。本日より貴様らはグレムシア帝国の正規軍となる。つまり今までの教官は今日で卒業だ。貴様らを纏めていた教官は今日から教官ではなく上官だ。今までのような軽率な言動は控えよ。」


サーシャ隊は大隊長ゼクレス中佐の下、中隊長シュポア少佐の下、小隊長サーシャ中尉の下で動く直属の部隊だ。大隊長、中隊長、小隊長、分隊長は魔導兵から成り、混成突撃魔導大隊の中核としての力を大いに発揮しろとの事だ。


サーシャがこの位置にいるのはゼクレス中佐の推薦のお陰であり、先の事件の再発防止のためでもある。ゼクレス中佐お気に入りの小隊長にあのような事をする輩は流石に居ないだろう。


そうして始まったサーシャ達の正規軍生活だが、皆、なかなか馴染めない。今までとは桁違いにハードなトレーニング。一分、一秒無駄にできないタイトなスケジュール。そして今までの比にならない程強いゼクレス中佐の指導。数週間経過しただけでどっと疲れが溜まってしまう。



****************************



1913年11月21日

辛い訓練の日々を乗り越えた先で待っていたのはさらなる地獄でした。行軍訓練の内容が開示されるとすぐに狂った訓練である事に気付きました。その内容はぶっちゃけ正気の沙汰ではありません。私のような少女に25kgにも及ぶ装備を運ばせて40kmも行軍し、目標陣地にて信号弾を発射するなど訓練上がりの兵に務まるでしょうか。

―サーシャ中尉の日記より―


開始された行軍訓練は珍しく今までの中隊規模の訓練ではなく、小隊規模での訓練であった。中隊長は元教官なのに対して小隊長は教官推薦の候補生が務めるため指揮能力が圧倒的に低い。そのため中隊長の行動を学習させた小隊長に今回指揮させる事で小隊長の指揮能力向上を目指すそうだ。


サーシャの率いる小隊は目的地まであと半分というところまで到着すると雨に見舞われた。危険な山道だが雨は鉛玉のように強く滑落の危険があるため、小隊は一時行軍を中止した。


「雨が降ってきた。小隊はここで一時休憩を取り、雨が弱まった後再出発する。暖を取り、食事を済ませておくように。」


小隊が山肌にもたれ掛かって休憩しているとサーシャの元にパプストがやって来た。


「たっ…隊長…。河に落ちたローゼ小隊の一人が低体温症かも知れません…。」

「…。分かった。ちょっと行ってくる。」


報告を受けたサーシャは例の隊員のもとに駆けつけた。サーシャが隊員の体に触れると隊員はある程度の反応を示した。サーシャはポケットの中のエネルギー補給用キャンディを隊員へ渡して手首に指を当てる。


「まだ脈はあるけど弱い…。」


近くの隊員に防水コートで屋根を作ってもらい、雨から保護すると、始めに濡れた衣類を脱がす。隊員の吐く白い息がサーシャの耳にかかる。そしてカールの荷物から取ってきた予備保温コートを隊員に掛けると携帯魔導器を手に取った。自身の服を半分脱ぎ、肩の辺りまで露出させると携帯魔導器を突き刺した。


「ウグッ…。」


サーシャの肩に刺された魔導器はサーシャが強く握りしめるとほのかに光った。隊員の多くはサーシャが魔法を使う一瞬に周囲の空気がわずかに重くなったように感じた。


全身をゆっくりと温めつつ、血の流れを中心へ戻す。


サーシャが五回呼吸をした頃だろうか。指に伝わる鼓動がゆっくりと、確かに戻ってきた。


「……よし。…歩けるか?担ごうか?」

「ありがとうございます…。お陰で楽になりました。まだまだ行けます。」

「分かった。無理はするなよ。」


携帯魔導器に残った血で自身の治癒と服の乾燥を行うとサーシャは軍服をしっかりと閉じて魔導器を胸元に戻した。


「そろそろ行くぞ。準備しろ。」


安全のため、雨が弱まるまで行軍を待ったが依然として降りしきる雨は再度災難を引き起こした。再出発から15キロメートル進んだ頃だろうか。


「うわっ!」


今度はコルベ小隊の一人が坂から転落してしまった。


「まっ…待ってて…。今…今行くよ…。」


数ヶ月前と比べて非常に頼れるパプストは、荷物を置いて彼を素早く救出しに向かった。滑落した隊員を背負ったパプストは自慢の身体能力を駆使してゆっくりと坂を登り、登り切った所で私が広げたコートの上に滑落した隊員をそっと寝かした。


滑落した隊員は左足から出血し、右腕を骨折してしまっている。カールが骨折の対応をし、足の傷口には私を含む四人の魔導兵で傷口の消毒と圧迫止血を行うも効果はなく、脈を打つ度にガーゼから血がトプトプと溢れてしまう。これ以上の出血は危険と判断したサーシャは危険性や失血死のリスクを考えて、少しの迷いを抱きつつ、緊急対策として熱魔法による焼灼止血を行う事にした。


二度目の高度魔導術の使用により少しふらつくが、意識をしっかりと保ち、丁寧に焼灼を行う。


「あがっ…!」


彼は苦悶の声を上げたが、ヴォルフが足を押さえていたので成功した。ガーゼから溢れる血の量は脈打つ度に減っていった。そして止血魔法が編み込まれたサーシャの魔導兵用の軍服をナイフで切り裂き、患部に巻いた。その後は治癒魔法で体力消費を抑えたバルツとカールが彼を担ぐ事で対応する事でなんとか脱落者を出さずに済んだ。


そのようなこともあり、ペースを落としたサーシャ達の小隊は予定より四時間程遅れ、開始から約二十時間後に目標陣地に到着した。信号弾を発射し、近くの演習キャンプまで撤退し、ゼクレス中佐に報告を終えるとサーシャの小隊の行軍訓練は終了した。


滑落者と低体温症患者は到着後に、救護テントへパプストと共に連れていき、小隊長としての役目も一段落した。


後は残りの隊の到着を待つだけだ。

海洋国家が締結した利権協定に対して大陸国家は対抗するための同盟を結んだ。

観光が終わるとサーシャは分隊長から小隊長になり、サーシャの所属する部隊(突撃魔導大隊)は大規模演習を行うことになる。演習では様々な困難が襲いかかるが何とか対処して演習を終わらせる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ