10話 初日終了
一行は「辺境伯門」に到着した。昔から今までその場に直立し続ける石造りの門は帝国の長い激動の歴史を象徴するものとして多くの人に知られている。頂上にて多くの人の視線を集めている馬車像は過去に侵略者が奪い去ったが帝国成立の際の戦争にて勝利した帝国兵が持ち帰り、再度「辺境伯門」の頂上に設置された。
「でっかいね〜パプスト二十人分はあるんじゃない〜?」
巨大な石造りの門を前に抱く感情は大抵の場合その大きさ故の恐怖だ。現在修繕中とはいえ門の放つ圧倒的存在感は衰えなかった。
「時間も押してるから写真撮ってもらおうぜ。」
そう言って行商カメラマンに交渉しに行ったカールは行商カメラマンを引き連れてサーシャ達の元に駆け寄ってきた。
「それじゃぁ撮りますよ。」
そうしてサーシャ達は旅を記録した。
「大体三時間くらいしたら引き渡せます。あそこに見える写真館に代金の十五ライヒスターラを持って来てくださいね。」
「分かりました。それまでここらへんを観光しておきます。」
写真の現像を待つ間サーシャ達は限定公開されている「帝国議会」へ向かった。帝国の全てを決めるその議会はその佇まいだけでその威厳を周囲に知らしめていた。そんな帝国議会は今日は会議の予定はない。会議の予定がない日ならば見学旅行一人一ライヒスターラを支払うことで誰でも見学が可能だ。
「カール。変な事しないでよ?」
「わっ、分かってるわそんぐらい!」
「ちょっと…。カール君声大きい…。」
「すっ、すまんな…。」
会議用の大きな部屋の天井には大きなガラスの屋根が設置されている。そんな部屋にカールの大きな声が響くが幸い他の観光客は居なかった。
「にしてもあんなガラス屋根よく設置できたよね。」
「確かにな。俺だったら持っただけで割る自信があるぜ。」
そんなこんなで見学を終えて議会を出たサーシャ達はその次に「狩猟公園」へ向かった。狩猟と言えど過去の貴族が狩猟を楽しむための場所だっただけであり、今では海外の珍獣が展示されている。
「おぉ〜!変なのがいっぱいいるな!」
「あの黄色い首の長い奴は知ってましたよ〜。水を飲んでても敵から素早く逃げられるんだそうですよ。」
「ぼっ…僕はあの白黒の熊知ってますよ…。雪と石の白と黒に合わせて擬態するんです…。」
「おっ…俺は…。何も知らねぇや。」
「じゃぁ黙っててよ…。」
ヴォルフとパプストの解説を挟みつつ一行は展示を見て回った。近くの売店でサーシャは自信用のお土産に帝国議会詳細解説パンフレットとバッハハイムの子どもたち用に狩猟公園珍獣図鑑を購入。カールは珍獣菓子を購入。パプストは珍獣写真集を購入。そんな感じでそれぞれがそれぞれの為にお土産を購入して売店を出るとバルツがサーシャに問いかけた。
「そろそろ写真の現像も終わったんじゃ?」
「確かにそろそろだね。確かあの写真館だよね?」
議会と公園を観光して忘れかけていたが門の所で頼んだ現像した写真を受け取りに行かなければならない。赤い看板を出している写真館へ一行は向かった。
しっかりと人数分焼き増しされた写真を受け取り、代金を支払った。まだ一日目なのに相当な金額を使ってしまったがホテルは事前に代金を支払っているのでホテルでも大量出費という事は無い。
「良いね〜。皆いい顔してる。」
「えへへへ…。隊長…照れちゃいます。」
「まぁ一番写りが良いのは俺だけどな!」
写真の出来を皆で見て、話しながら少し離れたホテルへ向かうとそこには想像以上に豪華なホテルがあった。
「ようこそホテル・エーデルハイムへ。サーシャ様ですね?部屋をご用意させていただいています。お荷物お持ちいたしますね。」
ホテルに入った軍服五人衆を前にしたホテルの従業員はテキパキとチェックインを済ませて、一行を部屋まで丁寧に案内した。
「なんかパンフレットより豪華だし、従業員も丁寧に案内してくれたね。」
「確かちょっと前に改造工事してなかった〜?」
「そっ…それに軍服五人衆が来たらとっても緊張して、丁寧な扱いになるよね…。僕だったら怖くて案内できないかも…。」
「確かに軍服五人衆とか怖いもんね。通りで写真館が割引してくれたわけだ。」
一行はようやく自分たちの放つ異様なオーラに気付いたらしく、食堂には出来るだけ武器を見えないようにしようと話し合うのだった。
「それじゃぁ食堂行こうぜ!」
「よ〜し!いっぱい食べよう!」
食堂では食べ放題形式で部屋番号で入場時刻が決まっている。サーシャ達は19:00入場だ。
「いっ…いっぱいありますね!僕…海老いっぱい食べます!海老大好きなんです!」
「いいよ〜食べ放題だからいっぱい食べてね。」
「よっしゃ〜!食べるぞ〜!」
「カールは取りすぎないようにヴォルフと一緒に回ってね。」
「うぇ…。」
「だってこういう食べ放題でいっぱい取って食べきれないタイプでしょ?」
「了解です隊長…。」
皆が皆の好きな料理を好きなだけ食べてお腹がいっぱいになって部屋に戻るとシャワーの時間だ。流石に浴場に武器を持ち込んでサーシャを護衛という訳には行かないのでサーシャは女子風呂に。サーシャ以外は男風呂に。そうなった。女子風呂は丁度サーシャ貸し切り状態であり、男子風呂はサーシャ隊以外の客が数人いたが半個室なので誰も気にしなかった。むしろサーシャの方が気になっていた。流石に浴場で襲撃は無いだろうが二人が出入り口に立ち、二人がシャワーから出たら交代するといったシステムでサーシャの護衛を続けた。
暫くして皆がシャワーを終えると一行は部屋に戻り、眠りに就いた。一日目の予定はそこまでハードではなかったが疲れは溜まった。皆深い眠りに就いた。
重要な内容はありません。日常回です。




