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魔導少女作戦開始  作者: 梅×コーヒー
魔導少女作戦準備
10/10

9話 観光

ゼクレス教官はサーシャを襲撃した犯人が軍内部に居ることから、サーシャを守るために自身の最も信頼するカール達にサーシャを預けた。しかし依然としてサーシャの身辺は安全とは言えない。そこで犯人逮捕までの間サーシャ達をベンベルグ市の観光へ行ってもらうことでサーシャを守ろうとした。この案は軍上層部も理解を示し、金も軍が出すことになった。こうしてサーシャ隊のベンベルグ市観光が始まった。


「いっ…いくらなんでも軍服に拳銃を携帯しての観光は…落ち着かないです…。」

「仕方ないですよ〜。襲われないとは思いますけど僕たちで隊長を守んないといけないんですよ〜?」

「みんなもそうだけど、私のは自己防衛の範疇を超えてるでしょ。めっちゃ目立つし。」

「確かに目立つかも知れないが襲撃犯が外部の協力者に顔を伝えている可能性がある以上仕方ないだろ。魔導師ってのは闇市場でも高値で取引されるんだ。前回は平気だったが一応誘拐も注意しないといけないからな。」


ゼクレス教官に軽く愚痴を言うサーシャは各部に装甲を施したコート、魔導服、拳銃、懐中魔導器一型、懐中魔導器三型などと最新の魔導器まで持たされていた。それにサーシャ以外のメンバーは軍服、拳銃を持たされていた。サーシャを守るためにゼクレス教官がかき集めたそうだが過保護にもほどがある。そんな歩くだけでただならぬ雰囲気を作り出すサーシャ隊はゼクレス教官に魔導牽引車で旧市街まで運ばれた。


「もしものことがあれば三型を握るんだぞ?すぐに軍が駆けつけるからな。」


ゼクレス教官の渡した懐中魔導器三型は握るだけで簡易的な魔法を使えるものだ。未だに試験型であり、使い捨ての無線機のような使い方しかできないが、無いよりはマシなので研究棟から一つ拝借したと言う。


「はい。ありがとうございます。」

「万が一に備えながら観光を楽しめよ。今回は旅費としてそれぞれ百ライヒスターラまでは軍が出すことになっている。それ以上使う事があるならお前たちの財布から出すんだ。三日後の夜にここに集まるまで自由に観光してこい。分かったな?」


諸々の説明を行った後ゼクレス教官は魔導牽引車に再び乗り込み去っていった。


「たっ…隊長。い…いつものやりましょ…。」


パプストがそう言うと隊員は皆顔を合わせてから続けた。


「「「サーシャ隊!作戦開始!」」」


「どこ行きます〜?」

「ふっふっふ。隊長に任せなさい。今日のために売店で雑誌を買い漁り、プランを立ててきたのだ。」


そうして鞄から取り出された紙にはサーシャが病室で立てた旅行プランが書かれていた。



―☆サーシャ隊長のベンベルグ旅行プラン☆―

一日目

 午前 「貴族の散歩道」を散策

    「辺境伯門」を見学

 午後 「帝国議会」を見学

    「狩猟公園」にて休憩

 ホテル「エーデルハイム」に宿泊

二日目

 午前 「旧帝国博物館」を見学

    「新帝国博物館」を見学

 午後 「帝国美術館」を見学

    「ベンベルグ宮廷歌劇場」にて音楽鑑賞

 ホテル「エーデルハイム」に宿泊

三日目

 午前 ベンベルグ市内のカフェ巡り

 午後 引き続きカフェ巡り

 ホテル「ノードモルゲン」に宿泊

四日目

 午前 郊外の「騎士団飛行場」にて航空ショーを見学

 午後 「皇帝記念教会」を見学

    「王妃の避暑地」を見学




「さっすが隊長!」

「ホテルだって軍を通して事前準備完璧さ。」

「じゃっ…じゃあ最初は『貴族の散歩道』ですね…。いっ…行きましょ!」


地図を持ったサーシャを先頭に歩く高身長の武装した軍服集団はさながら特殊部隊であり、ベンベルグ市民や観光客に相当なプレッシャーを与えた。しかしそんな事は、始めての帝都を満喫するサーシャ隊の知るところではなかった。


「…それにしても帝都ってのは人が多すぎないか?街路樹より人のほうが多いぞ。」


カールが皮肉を言う『貴族の散歩道』には多くの店が立ち並び、古い石畳の道はそれらに訪れる多くの客の影により新しい模様を刻まれていく。そんな通りに立ち並ぶ店にバルツが目を輝かせていた。


「隊長!パンですよパン!それもサルドーヌのパンです!」

「サルドーヌって共和国首都の?」

「そうですよ!サルドーヌの外は硬く中はふわふわのサルドーヌパンにハムや新鮮な野菜やチーズを挟んだサルドサンドは二国間の緊張が高まっている今でも人気なんです!どうです!皆で食べましょうよ!朝ごはんも食べてないし!」


バルツが興奮しながら説明すると空腹も相まって皆の食欲を刺激した。


「た…隊長…僕も食べたいです…。」

「いいぞ〜。今回の分の食費は自分が出してあげよう!軍がくれた旅費は取っときたまえ。」


可愛くおねだりするパプストにサーシャは調子に乗って見栄を切った。しかしそんな調子も長くは続かなかった。


「サルドサンド5つで合計十ライヒスターラになります。」


帝都の物価にサーシャは恐怖した。今の一瞬でサーシャの月の給料の一割が消し飛んだ。いくら軍の給料が衣食住を差し引いた額とはいえ労働者の昼食の十倍以上の額がサンドイッチ五切れに支払われるのは予想していなかった。


「よっ…よく味わって食べてね…。」


想定外の出費に少し落ち込むサーシャであったがすぐに機嫌は治った。なぜならサルドサンドを食べたから。硬いサンドを噛みちぎるとふわふわの生地がチーズとハムを包み込み、新鮮な葉野菜が美味しさを増幅させている。噂を上回る美味しさに隊の皆は驚愕し、素早く平らげてしまった。


「めっちゃ美味しかったね〜。」

「とろっとしたチーズとか最高だよな!」

「これ食堂のおじちゃんにメニューに入れてもらおうよ!」


好きなものはゆっくり食べる派のパプストが食べ終わると一行は次の目的地である「辺境伯門」へ向かうのだった。

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