1日目⑨
「塩加減が強すぎるね。それに、焼きも甘い」
予想していた通り、わたしの料理は酷評されっぱなしだった。ご飯の炊き方から完全にダメ出しを食らい、もはやこれまでといったところで、最後のキャベツとジャガイモの味噌汁へ箸が行った。
「…ん?」
勇気様の目つきが変わった。一口味噌汁をすする。口をゆがませたが、ジャガイモに口をつけ、そしてキャベツを食べたところで箸は止まった。
「これも、塩加減がなっていないね。……ただ、ジャガイモとキャベツ、これはどうやったんだ?」
勇気様に質問されたのがうれしかったのか、わたしは一気にまくしたてた。
「あ、あの、ジャガイモにはしっかり味が染みこむように、やわらかくなるまで煮込みました。キャベツはすぐに火が通りますが、やはり味を染みこませるために、しっかりと煮込みました」
「なるほどね…。ジャガイモ、おいしかったよ」
それはおざなりの言葉ではなく、噓偽りないほめ言葉だった。今まで生家でもほめられたことのなかったわたしは、いつの間にか目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちていた。
「どうしたね? なにも、泣くこともないだろう? いや、確かにさっきは言いすぎたが、それは君が」
「違うんです、その…わたし、ほめられたこと、なかったので。使用人みたいに育てられてきましたから」
勇気様の目が大きく見開かれた。