1日目⑤
その目だけでなく、どこをとっても勇気様は、まさに好青年と呼ぶにふさわしい人物だった。
端正な顔立ちに、きりっとしたまゆ。凛々しいひとみにすらりとした体型。整えられた黒髪は、まさに日本男児と言うにふさわしかった。着流し姿もおしゃれで色気すらある。
そしてその声。落ち着いた声の波長は、胸がすぅっと静まっていくような、そんな安心感を与えてくれた。
今日この瞬間に、わたしは勇気様に対して、恋心を抱いたのだった。
「そうだ、それならドライブでも」
「勇気様、それよりも勇気様の書斎をお見せしてはどうですか? 勇気様のご執筆なされている作品を、お見せしてはどうかと思うのですが…」
ドライブデートをやんわりと断り、使用人が提案した。執筆? ということは、作家さんなの?
「あぁ、それはいい考えだ。さ、こっちにおいで。案内しよう」
さっとわたしの手を握る勇気様。温かく、そして力強いその手に引かれ、わたしは書斎へと案内された。
「こう見えてぼくは作家でね。純愛小説『織姫の涙』を書いているのさ」
「えっ、『織姫の涙』をですか⁉」
裏返った声でわたしは聞き返した。