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明日死んでしまうあなたへ  作者: 小畠愛子
第二章 初めての、最初のキス。そして、初めての、最期のキス
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2日目⑦

 考えてみれば、車の助手席に乗ることなんて初めてだった。生家では当然車などに乗せてもらったことはおろか、旅行に行ったことすらない。勇気様の屋敷に来たのも、一人列車を乗り継いでだ。ただ、乗る列車と降りる駅だけが書かれたメモが、生家からもらった唯一の贈り物だ。

 …と、こんな暗い話で楽しい時間を台無しにはしたくない。


「勇気様、一体どこへ向かうのですか?」

「そうだねぇ。博多の街は人が賑わっていて素敵だが、せっかく二人っきりになれたんだし、もう少し静かな場所がいいかな」


 静かな場所、と言っても、わたしにはまるで思いつかない。だが、勇気様は当てがあるようで、ふふっとほほえまれた。


「それなら、うってつけの場所がある」



 車はずいぶんとさびれた街並みへ入っていった。そもそも地理に疎い私だが、福岡の街並みに詳しい人間でも、こんなところは知らないだろう。道路も舗装されておらず、揺れが激しくなる。


「すまないね、でも、とってもいいところなんだ」


 その言葉にわたしはハッとした。まさか、勇気様、明日死ぬからと、わたしを道連れにしようなんてお考えでは…。


「安心してくれ。運転には自信があるんだ」


 その言葉では安心できない。知らないうちに車席のベルトを握る。車とともに、わたしの心も揺れ動いた。そして、ついた先は…。

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