1日目②
早朝、まだ日も昇らないうちに、わたしは使用人に起こされた。花嫁姿ではなく、なぜかエプロンを着用するように言われる。そして、使用人からこう告げられた。
「どうか、普段通りの日常を、普通のお嫁さんとしてお過ごしください」
何を言っているのかわからず、わたしは聞き返した。
「普段通りの日常も、普通のお嫁さんも、よくわからないんですけど…」
相手はバツ9かもしれないが、こちらは初めての結婚だ。しかも、式はおろか、会ったことすらないというのに、どう『普通』を過ごせばいいのだろうか?
「今はおわかりにならないかもしれません。ですが、どうかあなた様の考える、『普通』の日常を演じてください」
「演じる? それって、いったいどういう」
わたしの言葉は、すさまじい悲鳴にかき消された。使用人が顔をしかめる。
「どうやら起きてらっしゃったみたいですね。お願いでございます。どうか、普通にお過ごしください」
悲鳴が聞こえて、しかも近づいてきているのに、普通の日常など送れないだろう。そうつっこもうとしたその時だった。
「ぼくは、明日死ぬ!」
…これがわたしと旦那様の、最初の出会いだった。