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6話 職人の誓い(6部終了後のお話)

 オレンジ色に染まる石畳の上をとぼとぼと歩く。王城で錆びた鎧を修理し終えたものの、気持ちは沈んでいた。


 あの鎧を着ていた兵士と、あの鎧を作った職人のことが頭を離れない。今は平和だからと自分に言い聞かせてみても、いつ何が起こるかわからない世の中だ。どうしても周りにいるデュラハンたちの姿が浮かんでしまう。


 ラドクリフにハンス。トリスタンやルイ。そして、リリアナ。みんな国を守る兵士たちだ。戦争が起きれば否応なく動員されるだろう。ちょっとやそっとでは傷つかない鎧兜を作ったという自負はある。けれど――。


(もし、俺の力が及ばなかったら?)


 血に染まるコバルトブルーの鎧兜がまた脳裏をよぎって、アルティは首を振った。


(考えないって決めたじゃないか)


 頭の中から嫌な考えを振り払い、まっすぐに前に進む。アルティができることは、お客様たちのために金槌を振るうことだけ。それ以外は考えてはいけない。


「あれ? あれは……」


 初夏の生ぬるい風に髪を遊ばせながら店に戻ると、玄関の前に知り合いたちが勢揃いしていた。リリアナ、ハンス、レイ、ラドクリフ、パドマ……めいめい楽しそうに、隣り合った相手と話をしている。


 思わずその場に立ち止まる。アルティに気づいたリリアナが大きく手を振った。


「アルティ! お疲れさま!」

「リリアナさん。それにみんなも。一体どうしたんですか?」

「鎧の修理が終わったんだろ? 慰労会をしようかと思って」

「俺の?」


 目を丸くするアルティに、みんなが揃って頷く。


(ひょっとして……。心配してくれてたのかな)


 スランプから脱出したといえ、まだ日は浅い。よく考えれば、ここにいるのはスランプ中のアルティに手を差し伸べてくれた人たちだった。


(俺は幸せものだ)


 胸の中に温かいものが広がっていく。この日常を守るためなら、どんな困難にだって立ち向かうだろう。たとえ壊れてしまっても、取り戻すまでは絶対に諦めない。それがアルティの才能なのだから。


「ありがとうございます。今日は俺がご馳走しますよ。修理の報酬、結構もらっちゃったんで。パーっといきましょう!」


 今まで散々心配をかけたお詫びとお礼だ。拳を突き上げるアルティに、わあっとその場が湧く。


「店の前でうるさいわい! さっさと行け!」


 金槌を振り上げて怒鳴るクリフの声に押されて、アルティは仲間たちと共に、商店街に向かって歩き出した。


 さっきとは違い、軽やかな足取りだった。

大人たちの慰労会なので、残念ながらエスメラルダはお留守番です。デュラハンの食べっぷりに押され、アルティの財布は空っぽになりました。

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