53.ヴェゲン辺境伯
唖然とする衛兵たちに、リーゼロッテは微笑み続けた。
しばらくしてようやく、一人の衛兵がリーゼロッテに声をかけてくる。
「魔王の娘、魔族だと言うのか?!」
「そうだけど、それがどうしたの?
執政官として、指示書を置いてきたはずよ?
少なくとも、辺境伯は魔王の娘である私が、この地方の執政官となった事を知っているはずだけど?」
衛兵が顔を蒼白に変えながらも、リーゼロッテに槍を突き付けた。
――上位の統治者に対して、その態度はどうなの? 自分の部下ならお仕置きコースだぞ?
「魔族が辺境伯に何用だ!」
「さっき『挨拶に来た』と告げたわ。
それ以上を衛兵であるあなたたちが知る必要、あるかしら?」
覚悟を決めたような眼差しで、衛兵がリーゼロッテに告げる。
「その挨拶が辺境伯に危害を加える類だったなら、我々はそれを防がねばならん。それが職務だ」
リーゼロッテはにっこりと笑って槍の穂先を掴んで見せる。
「殊勝な心掛けね――
でも、人間が魔王の娘に勝てると少しでも思ってしまったの?」
衛兵が慄いて槍を引こうと力を入れる――だが、槍はぴくりとも動かない。
押せども引けども全く動かない槍を持ち、兵士は呆然としながら抗っていた。
その様子を眺めていたアロイスが驚いたように声を上げた。
「リズ、あんたそんなに力持ちだったのかい?」
リーゼロッテは笑って応える。
「あはは! まさか! そんな訳がないじゃない――
これは魔族がよく使うはったりよ。
手に掴んだ相手の武器を、空間に固定する術式を使ってるの。
衛兵さん、試しに手を離してごらんなさいな」
衛兵が恐る恐る槍から手を離すと同時に、リーゼロッテも槍の穂先から手を離す。
槍は、誰も持っていないのに空中で浮いていた。
リーゼロッテが術式を解除するとともに、槍は地面に落下していった。
「どう? まるで魔族が怪力を持っているように感じるでしょう?
相応に魔力を使えば、実際に腕力を強くする事もできるけど、ピクリともさせないのは結構疲れるの。
この術式は大して消耗もしないから、魔族が好んで使うのよ」
ようするに費用対効果の高い、相手を恐れさせるはったりだ。
特に下位貴族級の魔族が多用する。
彼らは実際の魔力がそんなに強くないので、ピクリともさせないほどの腕力を発揮するのが不可能なこともある。
そんな個体でも、このはったりを見せる事で怪力があるように見せられる。
虚像を見せて心理的優位に立つ。
基本中の基本だ。
慌てて槍を拾おうとした衛兵に先んじて、アロイスが槍の穂先を足で踏み付けた。
「あんたら、この地方の執政官相手にいつまで槍を突き付けてるんだい。
リズが優しい子じゃなけりゃ、今頃命が無くなってるんだよ?
いいから矛を収めな」
アロイスの部下たちも、周囲の衛兵を睨み付けている。
言葉や視線で気圧された衛兵たちが、次第に槍を立てていった。
それにあわせてアロイスも踏んでいた足をどけて、槍を解放する――すぐさま槍を拾い上げた衛兵が、同じように槍を立てていた。
「あなたがリズ殿下、という事ですか」
その声にリーゼロッテが目を向けると、身なりの良い壮年の男性が、騎士を従えて立っていた。
――困窮した領地の割に、身なりが整っているのが気になるな。
リーゼロッテの目付きが、やや鋭くなっていった。
「そういうあなたは?」
男性が恭しく頭を下げながら名乗る。
「私がこの領地を預かるヴェゲン辺境伯、ダーヴィト・ヴェゲンです。
先日はこのアルノルトの魔族を殲滅して頂いたようで、その節はお世話になりました」
「大したことないわ。
私にとっては慣れた事だもの。
その後の街はどう?
自治を任せているのだから、きちんと運営してるんでしょうね?」
「はい、魔族が居なくなり、その暴力に怯える事もなくなりました。
ですが野盗が多く、そちらの対応に明け暮れる日々です。
領内の他の街の様子も把握する事が難しい状況です」
リーゼロッテの嗅覚は、さきほどから悪臭を感じ取っていた。
――侮蔑の臭気。
慇懃無礼に侮蔑を漂わせるその姿に、前王の姿が重なった。
リーゼロッテの嫌いな、無能の気配だ。
「そう――今日は草原地帯の大規模な野盗の集団を掃除してきたの。
その報告をしてあげようと思って」
この街にも他の街同様、低級眷属が街の衛兵として配備されている。
野盗は街中に入り込めないはず。
なぜ野盗の対応に追われるのか、リーゼロッテには理解できなかった。
その事を尋ねると、ヴェゲン辺境伯が表情を変えずに応える。
「街の外、農地を荒らしに来る野盗は多いのですよ――
ですが、大規模な集団を退治して頂いた、というのは本当ですか?
であれば、我々の負担も随分と軽くなります」
「もう残って居るのは二十人未満の小さい集団くらいよ」
集団の数が多くて、そちらは対応していない。
そこは自治で対応してもらうつもりだ。
リーゼロッテが目に険を込めてヴェゲン辺境伯を睨み付ける。
「――ところで、屋根の上で弓を構えている人間と、物陰で術式を準備している人間を引っ込めなさい。
私は逆らう人間にかける情けは持っていないの。
これ以上敵意を向けるつもりなら、造反の意志ありと見做すわよ」
ヴェゲン辺境伯が一瞬顔をしかめた。
真顔に戻ったヴェゲン辺境伯が手を挙げると、リーゼロッテに敵意を向けていた人間たちが屋内に帰っていった。
「……さすがは魔王の娘、といったところですかな?」
「いいえ?
貴族階級の魔族なら、こんなに臭う敵意に気付かない訳が無いでしょう?
さっきから臭くてたまらなかったわ。
あなたたち、人間で良かったわね。
魔族だったら術式を準備した時点で滅ぼしていたところよ」
人間だから見逃しただけ。
リーゼロッテには殺せないし、警戒する気持ちぐらいは理解してあげているつもりだった。
アロイスたちはリーゼロッテに言われてようやく辺りを見回していた。
彼女たちですら、気づいていなかったのだろう。
人間相手になら気配を隠せる程度の腕の人たちだ。
国境沿いの領地というだけあって、腕の立つ人間が多いのだろう。
ヴェゲン辺境伯が真顔のまま、リーゼロッテに尋ねる。
「王都の様子を伺っても宜しいですかな」
「王都は復興の真っ最中よ。
ようやく配給が潤沢になって、市民が飢える事もなくなったわ。
近々貨幣経済が復活するくらいまで、人間社会は再建してきている。
カリアン王国の人たちの力を借りて、ようやくって感じだけどね」
ヴェゲン辺境伯の片眉が跳ねあがった。
「カリアン王国の? どういう意味か、理解しかねますが」
「ヴェローナ王国もカリアン王国も、魔族の追放を終えたわ」
大陸南西部で魔族が残って居るのは、このラスタベルト王国だけだ。
リーゼロッテ以外の魔族は、集落以外に住み着いているはぐれ魔族が残るのみ。
今は両国と協力しながらラスタベルト王国の再建を目指している段階だ。
ヴェゲン辺境伯は真顔でリーゼロッテの言葉を聞いていた。
「何故、魔族である殿下が魔族の追放を?」
「そうしないと人間が増えないからよ。
最終的に、私以外の魔族は全て追放するわ。
あなたも、はぐれ魔族を見つけたら報告しなさい。
滅ぼして来てあげるから」
少し考えた後、ヴェゲン辺境伯が応える。
「報告を上げようにも、馬が既に一頭も残っていません」
「王都近くのユストゥスは、王都からの配給を与えて馬の飼育を再開してもらってる。
そこで数頭分けてもらうといいわよ。
領主なんだから、その程度は許すわ。
でも王都への出荷分に手を出すのは駄目よ?
王都でも馬が足りていない状況なの。
新しく野生の馬を捕まえて来てもらいなさい」
再び考えるように黙った後、ヴェゲン辺境伯が応える。
「その王都の配給を、我が街に頂くことはできないのですか?」
「どこの街を優先するか、それを決めるのは私じゃないわ」
副官のヴィクターが今後を踏まえて計画を立てている。
リーゼロッテはそれを承認するだけだ。
まだ全ての街に配給するだけの力はない。
時間をかけて、優先順位の高い所から配給を開始することになる。
そうやって都市機能を回復してもらう事になるだろう。
リーゼロッテは淡々と説明をした。
ヴェゲン辺境伯は、表情を崩さず応える。
「私には娘がおります。
娘はヴィルケ王子の伴侶候補足り得るよう育てております。
我が町を優先して頂くことは、国防の観点からも損がない選択だと思いますが」
――粘るわね。
新王即位の布告は、王都にしかできてない。
『ヴィルケ王子』と呼ぶのは、仕方ないだろう。
「前王グレゴールに代わって、ヴィルケ王子が新王となったわ。
数か月前にね。
その娘さんとやらは、王妃足り得る子なのかしら?」
さすがにこの情報にはヴェゲン辺境伯も怯んで、混乱しているみたいだった。
「国王が退位されたと言うのですか!
ヴィルケ王子はまだ二十一歳、王として即位するには早すぎる!」
「仕方ないじゃない。
前王は、私の副官のお仕置きで壊れてしまったんだもの」
元々無能な男だった。
王として機能しなくなった人間を王位に据えておく訳にもいかない。
だからヴィルケ王子に王位を譲らせた。
これもリーゼロッテは淡々と伝えた。
ヴェゲン辺境伯は情報を噛み締めるかのように歯ぎしりした後、鋭くリーゼロッテを睨み付けた。
「我が王を、無能と罵ったな、魔族め。
地金を出したか。
王子を唆し、傀儡国家を作り上げたと言うのか」
リーゼロッテも、さすがに呆れてしまった。
――あの卑しく無能な男を、それ以外のなんと評価すればよいのか。
「王としての器なら、ヴィルケ王子の方がよっぽどあったわよ?」
困窮している王都で収穫物の半分を王宮がせしめていた。
何を考えているか理解できなかった。
それで王都市民がどれだけ困窮したと思っているのか。
餓死者まで出ていたのを、あの無能は無視し続けた。
あれを無能と呼ばずに誰を無能と呼べばいいのか。
品性も卑しい下劣な人間だった。
リーゼロッテは真顔で淡々と述べていった。
「……魔族である貴様が、品性を問うのか。
魔族以上に卑しい存在などが居るとでも言うのか」
リーゼロッテはにっこり微笑んだ。
「いいえ? 魔族が卑しいことは認めるし、私は魔族の中でも最も卑しく悍ましい存在。
そんな私がもう一度告げてあげるわね?
前王グレゴールは魔族と同等に卑しい人間だったわ。
人間にしておくのがもったいないくらいにね?」
ヴェゲン辺境伯の顔が真っ赤に染まってる。
人を見る目はなさそうだ。
だが、忠義に篤い人なのかもしれない。
「貴様はやはり許しておけん。
貴様を倒し、虐げられている王都の民を救い出さねばならん」
「虐げられている? 誰が?
王都市民は私が来てから笑顔が戻ったわ。
みんな豊かな二十年前の暮らしを思い出し始めたところよ?
――まぁ、王都の貴族たちは未だに私を嫌って敬遠しているみたいだけど、平民たちからは感謝の言葉しか聞かないわね」
特権階級である貴族の特権全てをリーゼロッテが許さず、平民と等しく扱っている。
どうも貴族たちはそれが気に食わないらしい。
元々、王都に住んでいたのは領地を持たない宮廷貴族。
彼らの特権を認める意味など見い出せない。
説明を受けても納得できないらしいヴェゲン辺境伯は、まだリーゼロッテを睨み付けている。
アロイスがため息をついた。
「言葉じゃいくら言っても納得しなさそうだね。
直接王都を見せた方が話が早そうだ」
「そうねぇ。
今日連れてきてるのは七人、私を入れて八人だから、ヴェゲン辺境伯ともう一人くらいは乗れるわ――
ヴェゲン辺境伯。
随行一名を認めるから、今すぐミネルヴァに乗りなさい。
一瞬で王都まで連れて行ってあげる。
帰りも送ってあげるから心配は不要よ。
どうする?」
ヴェゲン辺境伯は歯ぎしりをしながら考えた後、一人の騎士を呼びつけて随行を命じていた。
「いいだろう。その誘い、乗ってやろう。
ヴィルケ王子が即位したのであれば、新王にご挨拶もしておきたい」
リーゼロッテはひょいひょいと身軽にミネルヴァに乗り込み、声を上げる。
「それじゃあミネルヴァに早く乗って頂戴、すぐ出発するわよ!」
****
白銀の流星が王都上空で停止した。
目視でも人々の顔がわかる、その程度の高さだ。
「どうかしら? あなたの目に、この王都はどう映るのかしら?」
眼下には、賑やかな商店。
物々交換を行う人々が笑顔で行き交っている。
活気のある街から、温かな感情の香りが強く立ち込めていた。
――さすがにこれだけ距離があると、気持ちが心に届くことはないみたいだ。
空に浮かぶ白銀の飛竜、ミネルヴァの姿を見つけた市民たちが、笑顔で手を振っている。
リーゼロッテも笑顔で手を振って応えた。
その様子に、ヴェゲン辺境伯から戸惑いの感情がにおってくる。
「馬鹿な……
魔族に統治された街が、これほど豊かだと言うのか?!」
街のあちこちに警備のためのリーゼロッテの眷属が闊歩しているが、街の人は誰一人眷属を怖がらない。
眷属には、街の人には危害を加えないように指示を出してる。
怖がる必要がない事を知っているのだ。
普段は揉め事があった時、身体を張って間に割り込むのが彼ら眷属の役割だ。
「少し、下に降りてみる?」
リーゼロッテは、人々が行き交う大通り沿いにある広場にミネルヴァを降ろした。
辺りを呆然と見渡しながら、ヴェゲン辺境伯が広場に降りていく。
辺りからは「リズー!」とリーゼロッテを呼ぶ声が聞こえる。
リーゼロッテは手を振って応える。
この距離になると、街の人からの温かい気持ちがリーゼロッテの心に届いてむず痒い。
ヴェゲン辺境伯に続いてアロイスたち、そしてリーゼロッテも広場に降り立つと、わっと辺りを市民たちが囲んだ。
「リズ! 珍しいな、こんなところに来るなんて!」
「今日は何のお仕事? このおじさんの案内?」
リーゼロッテは微笑みながらその声に応える。
「そうよー、東のヴェゲン領の辺境伯だっていうおじさん。
王都が豊かだって信じてくれないから、連れてきちゃった」
「あまり働きすぎるなよ!」
「また倒れても知らないわよ!」
――え、なんで倒れかけた事まで市民が知ってるんだろう……。
リーゼロッテは苦笑を浮かべて応える。
「もう倒れるまで働かないわよ!
イェルクやラフィーネの監視が厳しいもの――
さぁみんな、少し離れて!
ミネルヴァが飛び立てないわ!」
市民が笑いながらミネルヴァから距離を取った。
リーゼロッテはひょいひょいと再びミネルヴァの背に乗る。
アロイスは部下たちに「あんたらは先に帰宅しておきな!」と声を上げてから、ミネルヴァの背に飛び乗った。
まだ呆然と辺りを見渡しているヴェゲン辺境伯と随行騎士に、リーゼロッテは声をかける。
「ヴィルケ王に会うんでしょう?
早く行かないと、そろそろ王宮が閉まっちゃうわよ?」
ようやく、のろのろとヴェゲン辺境伯と随行騎士がミネルヴァの背に乗りこんだ。
直後、白銀の流星が王宮までの橋を空に描いた。
****
王宮の中庭に降り立ったミネルヴァの背から、追い出すようにヴェゲン辺境伯たちを降ろし、あとに続くようにリーゼロッテたちが庭に下り立った。
ミネルヴァがフクロウとなってリーゼロッテの肩にとまる。
「さぁ、ヴィルケ王に会うわよ!
――ねぇ、ヴィルケ王にヴェゲン辺境伯を連れて来たって伝えてくれる?」
声をかけられた衛兵は笑顔で敬礼をした後、王宮の中に駆けていった。
その様子も、呆然とヴェゲン辺境伯は眺めていた。
「どうしたの? さっきから呆けてるけど。
さすがにここからは、自分の足で歩いてくれないと謁見の間へは辿り着かないわ」
リーゼロッテは少し先を行ったところで振り返ってヴェゲン辺境伯を待つ。
彼は呆然としたまま、まだ動こうとしない。
「馬鹿な……
魔族に統治された王都が、何故こうも活気がある」
「私は魔族の異端。
普遍的な魔族とは真逆の性質をしているの。
愛と平和で潤った世界が、私の好みの世界よ。
だから一般的な魔族の統治する街とは、雰囲気が違って当たり前ね」
「信じられん……」
リーゼロッテは呆れ果てた。
自分の目で直接見ても、まだ信じないと言われた。
――どうしろっていうの?
リーゼロッテがアロイスと顔を見合わせていると、中庭にヴィルケ王が駆け込んできた。
「リズ殿下! 王宮に来てくださったのですか!」
リーゼロッテは振り向いて微笑みで応える。
「そうよ? ヴェゲン辺境伯に王都の様子を伝えても信じなかったから、直接見てもらおうと思って――
だけど、直接見てもまだ信じてくれなくて、途方に暮れていたところよ」
リーゼロッテは肩をすくめてみせた。
ヴェゲン辺境伯が、呆然と王の装束を纏ったヴィルケ王を見る。
ヴィルケ王も、苦笑を浮かべながらヴェゲン辺境伯を見た。
「直接会うのは初めてになるか?
貴公の領地と連絡が取れなくなって久しい。
まだ国内の連絡網も回復していないのでな。
各地へ布告する事も出来ていないが、私が父上に代わり王位を継いだ」
二人の会話が止まっていた。
リーゼロッテが横から疑問を投げかける。
「連絡用の馬は確保してるんじゃないの?
各地に布告を出すぐらいはできるんじゃない?」
「野盗がまだ各地に大勢います。
単騎で伝令を出す事は、まだ難しい状況。
それなりの戦力を出さねばならないのですが、兵力は物資の輸送にかかりきりで、伝令に回す余裕はありません」
「それなら、草原地帯の大規模な野盗は今日、潰してきたわ。
吸収合併でもしないかぎり、残って居るのは二十人未満の小さい集団ぐらいよ」
ヴィルケ王の顔がぱっと華やいだ。
「本当ですか! いつもありがとうございます!」
「気にする必要はないわ。
ユストゥス周辺で野盗の襲撃が増えていたし、馬を守る為に必要だと思ったから勝手に動いただけよ」
ヴィルケ王はリーゼロッテに笑顔を返した後、少し厳しい目でヴェゲン辺境伯を見据えた。
「ヴェゲン辺境伯、何を呆けている。
臣下ならば臣下らしい態度を取れ」
その言葉を受けても、ヴェゲン辺境伯は棒立ちのまま呆けてヴィルケ王を眺めていた。
ヴェゲン辺境伯がようやく言葉を振り絞って、口に乗せる。
「……グレゴール王にお会いする事は叶いませんか。
それまで納得する事ができかねます」
ヴィルケ王はため息をついて身を翻した。
「ついて来い。父上の所へ案内する」




