50.牧畜の街ユストゥス
翌朝、子供たちの愛で元気一杯になったリーゼロッテは狩りの後、アロイスと二人で街道沿いの候補地に移動した。
カリアンに一番近くて、それなりに大きな街の跡らしい。
リーゼロッテは先日のように、残骸を全て片付けて地均しを行ったあとに呟く。
「こうして均してみると、広い場所だね」
アロイスが敷地を見渡しながら頷いた。
「ここなら三千人くらいの街が作れる。
敷地が足りなくなれば、森を開拓すればいいだけだ――
このくらいの広さを、いくつ地均しできる?」
「これなら余裕を見て……
八か所くらいかな?
終わる頃には夕食が近いから、時間も丁度いいかもしれない」
『余裕を見て』というのは、消耗した後に補充をした結果、魔力総量が増える状態という意味だ。
今からでも魔王に対抗する為、魔力は蓄えていかなければならない。
毎日少しずつ魔力総量を増やしていって、少しでも勝ちの目を増やしていく必要がある。
カリアンから魔族を脱出させる時にかなり無理をしたので、今まで備蓄していた魔力は使い切ってしまった。
改めて備蓄のし直し、という事になる。
アロイスが微笑んだ。
「見立てなら最短で六年後なんだろう?
充分備蓄は間に合うさ。
魔力の備蓄より、戦士の育成が課題だね。
数を揃えられても、魔族と戦える戦士じゃないと意味がない」
「魔族本体は私が引き受けるわ。
だから人間の戦士には、低級眷属を倒せる力が育っていれば充分だと思うの。
それでもお父様の作り出す眷属は、伯爵級の戦闘能力があると思っていい。
手強い相手よ?」
「あんたの子供たちを待たず、カリアン人で戦闘要員を揃えた方が早いかもわからないね。
戦闘に特化した人間を最低千人、できれば五千揃えて六年間鍛え上げる」
リーゼロッテは小首を傾げた。
「五千人も必要なの?
ガートナーさんは訓練された豊穣の神の戦士千人で一万の魔王軍と戦えると言ってたわ。
お父様は最大でも一万も連れてこないと思うのだけれど」
「魔王を倒して終わりじゃない。
他の地域も魔族から解放するんだろう?
それなら多ければ多いほど良い。
交代要員が居れば、長期戦になっても対応できるしね。
魔王を倒した後、子供たちに戦闘技術を教える人員も必要になる。
戦士を育成して無駄になることはないさ」
アロイスは、もう魔王を倒した後の事まで考えてるようだ。
リーゼロッテは魔王の事だけで頭が一杯で、そこまで考える余裕はなかった。
素直にアロイスに感心していた。
アロイスが更に言葉を続ける。
「ヴェローナからも、義勇兵を募ってみるべきだろうね。
大陸南西部で一丸になるんだ。
まずは魔王を倒して人間が滅びる可能性を潰す。
目下の目標はこれだ。
だがその後もまだ戦いは続く。
それを忘れちゃいけないね。
魔王を倒したけど魔族の支配が続きます、なんてのは人間が勝った事にならないからね」
「……魔王軍を滅ぼすまで続くのね。
どれだけの魔族が生き延びられるのかしら」
リーゼロッテは、少し陰鬱な気分で尋ねていた。
魔族の滅亡を防ぐという大義名分があるとはいえ、その数は大きく減る事が避けられない。
「リズ、あんたは魔王軍が滅びた後、どの程度生き残ることができると見込むんだい?」
おそらく、貴族階級は全て滅ぼす事になる。
上位貴族級はもちろん、下位貴族級も人間と共存する事は難しいはずだ。
共存できない個体を滅ぼしていった結果、残るのは平民階級の魔族がほとんどになる。
彼らの中で、戦乱から逃れた個体が人間社会に紛れるか、人里の傍でひっそりと生き延びていく事になる。
どれほどの数が生き残っていけるか――正直な所、人間社会の混乱具合に大きく依存する。
負の感情が吹き荒れるほど混乱していれば、多くの魔族が生きていけるだろう。
一方で負の感情に乏しい社会では、ろくに生きてはいけないはずだ。
アロイスが頷いていた。
「なるほどね。
それなら、結構な数が残るんじゃないかな。
人間社会もこれからしばらくの間は混乱期が続くはずだ。
国力が回復すれば、神魔大戦以前のように国家間で争い、いがみ合うようになる。
必ずね。
それは避けられない人間の宿命みたいなもんだ」
「愛と平和で潤う世界なんて、御伽噺なのかしら……
寂しい現実ね」
「人間の歴史を知る者なら、そこは諦めざるを得ないね。
人間の歴史は闘争の歴史でもある。
安定期はあっても、それほど長続きはしないんだ。
きっと魔族たちはそんな人間社会で魔力を蓄え、いつの日か次の魔王が生まれるんだろう――だがそれは、遠い未来の話だ。
数百年の間は、比較的穏やかな時代が続くんじゃないかな」
リーゼロッテは不思議に思ってアロイスに尋ねる。
「アロイスさんは、歴史にも詳しいの?
剣士なのに?」
アロイスが少し照れながら応える。
「これでも私は貴族なんだ。
伯爵家の生まれだ。
騎士の嗜みとして剣術を覚えた口だね。
私の故郷じゃ、女騎士は珍しくない存在だったんだよ」
――それはさすがにびっくりだ。
どう見ても貴族には見えなかった。
少なくとも、人間の上流階級の所作をしていない。
言葉遣いも庶民のそれだ。
これで気付けと言う方が無理だろう。
「貴族として教育を受けて、それで博識なのね。
騎士だから神魔大戦に参加したの?」
「まぁそれもあるが、故郷が魔王城に近かったんだ。
魔王軍に襲われ、故郷が占領された。
私はなんとか逃げ出せたが、家族はおそらく無理だったろう。
私は国を取り返す為に旅をして、その中でヴィクターたちに出会い、共に旅をするようになったんだ」
「神魔大戦の後、その故郷の様子を見に行ったりはしなかったの?」
「ガートナーが魔王城から逃げ帰った先が、大陸南部だったんだ。
街道は魔王軍に封鎖され、そこを避けるなら険しいエッセングル山脈を超えないと北側には行けない。
カリアン王国から北側に行こうとしたら、あの国で反魔族の人間に手を貸してほしいと言われてね。
気が付いたら指導者にまで祭り上げられて、今に至るって訳さ」
リーゼロッテが懐中時計を確認した。
今日はまだ時間に余裕がある。
「ねぇ、今日の分の地均しが終わったら、ミネルヴァで空から故郷の様子を見に行ってみない?
隠遁魔法なら使ってあげられるわよ?」
アロイスは少し考えた後、首を横に振った。
「いや、今は止めておこう。
魔王を倒す前に見ちまったら、故郷を先に救いたくなっちまうかもしれない。
それは失敗に繋がる気がする。
今は知らない方がいいさ」
「いつ頃なら見に行けると思うの?」
「大陸南部を平定した後、だろうね。
北部に手を伸ばせるようになって、初めて見に行く資格が生まれる。
そのくらいの段階でなければ、故郷を救い出す事もすぐにできやしない。
今は我慢の時だ」
――我慢の時か……。
リーゼロッテには苦手な行為だ。
これは二十年経っても変わらない。
生まれた時から、リーゼロッテは我慢が苦手だった。
アロイスが微笑んで言葉を告げる。
「あんたも、歳を食えば自然とできるようになるさ」
リーゼロッテは苦笑で応える。
「魔族は生まれた時から外見が変化しないの。
そして心の在り方は、外見に大きく影響されると言われているわ。
だから私は、見た目通りの小娘の心のまま、死ぬまで生き続けるのよ」
「そうかい……
じゃああんたは、その十五歳前後の少女の心を持ち続けるのか。
それはそれで、難儀だねぇ――
さぁ、時間がもったいない、次に行くよ」
アロイスに促され、リーゼロッテたちは次の候補地へ向かった。
****
それから数日をかけて、リーゼロッテは街の候補地を地均ししていった。
カリアン王国とラスタベルト王国を繋ぐ街道、そしてヴェローナ王国とラスタベルト王国を繋ぐ街道だ。
あとはカリアン後発隊が、順次街道に街を作りながら、ラスタベルト王国の王都までやってくる予定だ。
さらに王都からヴェローナまでの街道も整備していく予定らしい。
王都に残るのは一万人程度、残り一万五千人が、アンミッシュの森周辺十五か所の街に散る。
アロイスに依頼され、リーゼロッテは王都からアンミッシュの森までの街道も整備した。
途中に潜んでる魔族を滅ぼした後、自警団たちが眷属を連れて野盗を付近から追い払った。
これでアンミッシュの森と王都で物を輸送する準備も整った。
次にリーゼロッテはヴィクターの依頼を受けて、アロイスたちやカリアン人を連れて王都東の草原地帯を見て行く事になった。
王都と牧草地に近い街で、馬の飼育に適した街の選定をする事になっている。
ついでに馬を確保して欲しいという依頼だった。
カリアンから来た六人は、馬の確保もできると言っていた。
街の選定は、アロイスが引き受けた。
「六人で六頭じゃ、数が足りないんじゃないかしら?」
「縄で繋いで連れ帰るから、もっと多くの馬を確保できるさ。
問題ないよ」
大量の麻縄を担いだカリアン人を乗せて、リーゼロッテはまずユストゥスへ向かう。
ここは眷属が置いてある――人が生き残ってる集落だ。
ミネルヴァを空で停止させ、当たりの様子を眺めていく。
町は静かで、絶望の悪臭が変わらず漂う。
畑の恵みはあるが、困窮は続いてそうだ。
アロイスが口を開く。
「街の中に馬の姿がないね。
やはり全部食っちまったか」
「人間は馬も食べるの?」
「そりゃそうさ。
飢えれば食う。
肉に変わりはないからね」
「ここは飼育に向いてると思う?」
ここまで、地上の様子がわかる速度でミネルヴァで飛んで来ていた。
少なくとも、地上に魔族の気配はない。
野盗は多そうだったから、輸送するときに注意が必要だろう。
「街道にほど近いし、草原も充分な広さがある。
どうやら野生の馬は生き残っているみたいだ。
ということは、餌になる草も無事だ。
住民の数も充分残ってるみたいだね」
「じゃあここに決めてしまいましょうか」
まずはミネルヴァを使い、馬の近くを飛びながらリーゼロッテの術式で馬を六頭確保した。
カリアン人の男性たちが馬を宥めながら乗り込んでいった。
これから彼らは、縄を使って馬を確保していく。
リーゼロッテはアロイスと二人で街の中を見て行く。
街の人たちは見慣れないリーゼロッテたちを怪訝な表情で見るだけだ。
飢餓と絶望で、無気力に見える。
日々生きていくのがやっと――そんな感じだ。
リーゼロッテは一番強い魔族が居た気がする建物を目指した。
街でも、大きさだけは立派な建物だ。
入り口には衛兵らしき人間が一人、元気なく立っている。
リーゼロッテはそんな衛兵に言葉をかける。
「ねぇあなた、この街で一番偉い人って、中に居るかしら?」
衛兵は力が出ないようで、気怠そうに槍を向けた。
「何用だ?
執政官なら中におられるが――
こんな時代に旅人?」
リーゼロッテは微笑んで応える。
「私はリズよ。
この街に白銀の低級眷属を置いた本人、と言えば理解できるかしら?」
低級眷属と聞いて、衛兵の顔が蒼褪めた。
「――魔族?!
貴様、あんなものを放置して何のつもりだ!」
「あら? 指示書は置いてあったはずなんだけど……
この街を魔族から解放して、警備兵がわりに低級眷属を残していったのよ。
聞いてないの?
あの子たち、ちゃんとこの街を守っているでしょう?」
思い当る節があるのか、衛兵の警戒心がわずかに緩んだ。
「……本日は何の用だ?」
「それは中で執政官と話をしてくるわ。
あなたは道を空けて頂戴な」
衛兵は再び気怠そうに槍を立て、リーゼロッテに道を譲った。
「ありがとう。お仕事頑張ってね」
****
中を進んでいくが、人気は特にない。
必要最小限の人間でなんとか運営しているように見える。
掃除されておらず、汚れ放題だ。
探査術式で建物の中を探る。
どうやら、執政官一人しか居ないようだ。
その部屋の前に行き、扉を叩いてから中に入る。
部屋の中では、執務机に一人の老人が気怠そうに座っていた。
リーゼロッテたちを見て、怪訝な視線を寄越しながら口を開く。
「誰だね? 君たちは。
衛兵は何をしていたんだ」
「あら、衛兵さんはきちんと仕事をしていたわよ?
――私はリズ。
私が残した指示書は読んだでしょう?
私は大陸南西部を治める執政官よ。
今日はとある用件でここに来たの」
指示書、と聞いて困惑と警戒の感情が強くにおった。
「魔族から解放されたというのが真実なら、何故魔族の眷属がこの街に居るんだ?!」
「だって、今この街に残っている人間たちでは野盗に対抗できないもの。
警備兵代わりよ。
あの子たちには街の人間への危害を禁止しているわ。
誰も襲われていないでしょう?」
この街の執政官は警戒心を持ったまま、リーゼロッテの目を見て尋ねる。
「……何故、屋内でフードを目深に被って顔を隠している?」
「これは私の特殊な事情のせいよ。
私の素顔を見ると呪われてしまうと考えていいわ。
だから隠しているの」
「……隣の魔族は何者だ?」
「隣? ――ああ、アロイスさんは人間よ。
カリアン王国の人。
この間、ヴェローナ王国とカリアン王国からも魔族を追い払ったわ。
ラスタベルト王国の集落からも魔族を追い払い終わったし、この大陸南西部に居る魔族は私と、集落の外に生息するはぐれ魔族ぐらいよ」
街の執政官が固唾を飲んだ。
「……大陸南西部は、魔族から解放された、という事か?」
「んー、魔族である私が統治しているから、純粋に『そうだ』とは言い切れないけれど、そう言っても過言ではない状態よ?」
「王都ヘルムートはどうなってる?」
「順調に生活基盤を回復させているわ。
市民への配給も潤沢になってきて、つい先日、お酒も解禁されたところよ?」
「我が街は!
我が街への配給は望めないのか!
市民たちの困窮は酷いものだ!
何とかしてやりたい!」
リーゼロッテが微笑んで応える。
「今日はその話をしに来たの。
王都は物資の輸送に使える馬を大量に欲しているの。
その飼育をする役目を、この街にお願いしようかなって――
あなたはそれが可能だと思う?」
街の執政官はしばらく悩んでから応えた。
「……先に配給が来なければ無理だろう。
市民たちに活力が戻らなければ、飼育もままならない」
アロイスが話に割り込んだ。
「それなら安心しな。
今日、野生の馬をそれなりに確保して連れ帰る。
その馬を使って物資をこの街に運び込もう。
それを受け取ったら、あんたらは馬を飼育する義務を負う。
その役目を果たせなければ物資は途絶える――
どうだい? できると思うかい?」
街の執政官の葛藤が伝わってくる。
「……まず、その確保した馬を少し分けてもらう必要がある。
街には既に馬がない。
足がなければ、野生の馬を捕獲する事もままならん」
「なぁに、焦らなくても、物資が届くときに馬を確保してやるさ。
この街の人口はどの程度残っている?」
「千五百人足らずだ。
馬の飼育ができる人間なら百人程度は残っているはずだ」
「王都からここまで、物資の輸送にどれくらいかかるんだい?」
「天候次第だが、三日から四日といったところだろう。
途中に野盗は出ないのか?」
リーゼロッテが言葉を挟む。
「それなりの数が潜んでいるみたいよ?
あなたたちは街道に出ない方が良いわ。
王都で対応できる人間のみを輸送に割り当てるから、そこは心配しないで」
アロイスが顎に手を当てて考え込んだ。
「往復一週間程度か。
一週間分の千五百人の物資となると、結構な量だね――
どうだリズ、自警団で対応できると思うかい?」
「問題ないと思うわよ?
人間の数が足りなければ、低級眷属を増やせばいいだけだもの。
その程度の余裕はまだまだあるわ」
アロイスがリーゼロッテに頷いた後、街の執政官の方を見た。
「聞いての通りだ。
毎週物資を持ち込むことが可能だろう。
後はこの街が馬を飼育して王都に補給する力が残っているかにかかってる」
街の執政官が頷いた。
「食糧が保証されるなら、街が一丸となって馬を供給すると保証しよう。
だがまずは証拠だ。
最初の配給が届くまで、こちらもそちらを信用することはできない」
リーゼロッテは笑いながらそれに応える。
「あはは! 心配性ね!
私は人間に嘘を告げた事がないの。
きっちり届けてみせるわ。
あなたはこの事を、街の人にきちんと布告しておいて頂戴。
食事をして元気になったら、すぐに馬の飼育にとりかかってもらわないといけないの。
よろしくね」
街の執政官がおずおずとリーゼロッテに尋ねる。
「あの白銀の低級眷属は、いつまで居座るんだ?」
「この街の警備能力が回復するまでは居座らせるわよ?
今は本当に野盗が多いの。
野盗からこの街を守る為に、あの子たちは必要よ――
心配しなくても、街の人間に危害は加えないわ」
「あんな存在が居ると、馬が怯える可能性がある。
そこはどう考えている?」
「そうなの?
じゃあ馬には近付かないように指示を加えておくわね。
それでいいかしら?」
街の執政官はようやく納得した様に頷いた。
「ああ、それでいい――
最初の配給はいつになる?」
リーゼロッテはアロイスを見た。
アロイスが言葉を告げる。
「今、部下が馬を確保している最中だ。
それを王都に連れ帰るのに四日はかかるだろう。
その間にリズが王都で物資の準備を整えるから、それから三日から四日――
早くて一週間後ってところだろうね」
街の執政官が頷いた。
「了解した。
その言葉、本当に信じていいんだな?」
アロイスも笑いながら応える。
「ははは!
魔族に支配されてるうちに、信じる事を忘れちまったかい?
――なに、一週間後に物資が届けば納得できるさ。
街の人間を失望させたくないと思うなら、布告はしなくてもいい。
物資を配給するときに伝えりゃ済む話だ」
リーゼロッテも微笑みながら街の執政官に言葉を告げる。
「今日の用件は以上よ。
一週間後を楽しみにしておいてね!」
****
執政官のいた建物を出てから、リーゼロッテはアロイスに尋ねる。
「布告をしなくても構わないの?
一日でも早く馬が欲しい状況でしょう?」
「不信を抱いたままじゃ、良い結果は出てこない。
まずは信じさせてから、きっちり働いてもらえばいい。
それに今日確保する馬だけでも、なんとかこの街への配給は間に合うだろう。
あんたは焦り過ぎだ。
もっと腰を据えて、先を見据えて動きな」
――また『焦り過ぎ』と言われてしまった。
アロイスが笑いながらリーゼロッテの頭を撫でた。
「部下たちがなるだけ安全に戻ってこれるよう、帰り道の大きな野盗は潰していこう。
あんたは眷属を適当に出してくれりゃいい。
あとは私が切り倒していく。
あんたは少し離れて見ておきな」
「それなら、私が野盗全体に睡眠術式をかけるわ。
私は殺せはしないけど、止めを刺してもらえるなら一網打尽に出来るわよ?」
「なるほど……
それなら、より確実だね。
よし、それで行こう。
部下たちには自分の判断で行動するように指示してある。
適度に馬を確保したら、勝手に王都に帰ってくるさ」
リーゼロッテたちはミネルヴァに乗り込み、王都へ向かっていく。
白銀の流星は街道沿いに空を駆けて行き、野盗を見つけると上空に停止した。
リーゼロッテは探査術式で一人残らず野盗を捕捉し、全員に睡眠術式を施していく。
野盗が倒れるとミネルヴァが地上に降り立ち、アロイスが手早く止めを刺して回った。
全てが終わるとアロイスが再びミネルヴァに乗り込み、白銀の流星が街道沿いに空を駆けていく。
こうして七つの大規模な野盗の集団を壊滅させながら、リーゼロッテたちは王都に戻っていった。




