49.果実酒
翌朝、朝食が終わったリーゼロッテは白銀の流星となるアロイスを見送った後、徒歩でドミニクの元へ向かった。
「ごめんね、ラフィーネ。
私は道順を覚えてなくてさぁ」
「仕方ないわよ。
今まではミネルヴァが居たんだもの」
街を二人で、てくてくと歩いて行く。
時刻は九時を少し回った程度。
大通りにはまだ、人がぽつぽついるくらいだ。
街が目を覚ますには、わずかにまだ早い時間、といった所だろう。
こうして見て回ると、自力で家屋を補修している人も少しは居るようだ。
掃除をして綺麗にしたり、物がないなりに綺麗にしようという努力の跡がみられる。
「少しずつ街が生き返ってきている感覚があるわね。
感慨深いわ……」
「一部の人は、森から染料を持ち帰って来てもらって服を染めたりしてるそうよ?」
「染料って? 初耳ね」
ラフィーネも詳しくは知らないようだった。
色が強く出る木の実や葉などを、フィリニスの森から持ち帰って来てもらう。
それを潰したり煮出したりして、布を染める為の染料を作るらしい。
その報酬は配給された食料、それも砂糖や食肉といった、希少価値の高い物との交換となる。
「食事を節約してでも、服を染めたいというの?
食べなければ始まらないというのに」
「それだけ配給の食料が潤沢になってきた証拠よ。
飢える事がなくなったら、次は生活品質を上げたくなるもの。
とても良い傾向だと思うわ」
リーゼロッテが知らないところでは既に、物々交換による取引が再開され始めていた。
確かに、とても良い傾向だろう。
反魔族同盟の拠点の扉を叩く。
顔を出したのはドミニクだ。
「今日は随分遅かったな……
おや? ミネルヴァはどうした?」
リーゼロッテは苦笑を浮かべる。
「それがね、今日一日、休養してろってアロイスさんに言われた上に、ミネルヴァを取り上げられてしまったの。
だから今日の狩りはできないのよ」
ドミニクがニヤリと笑った。
「なるほど、了解した――
おい、聞いたな。今日は中止だ」
背後に控えていた狩人の二人が、中に戻っていった。
リーゼロッテに向き直ったドミニクが、リーゼロッテに尋ねる。
「それで、リズは今日、どうするつもりだ?」
「とりあえず、ガートナーさんを捜すわ。
私がリンゴ酢を作るやり方について意見をもらおうと思って。
他の魔導士が真似できる物なのか」
「なるほど――そういうことなら、俺も今日は手隙だ。
リズに付き合おう」
リーゼロッテは目を丸くして驚いた。
「えっ?! そんな、悪いわよ!」
「ミネルヴァが居ないんだろう?
護衛が一人くらいは居た方が良い。
最近の王都は少し、物騒だからな」
リーゼロッテはジロリとドミニクを睨み付けた。
「ちょっと?!
魔王の娘を侮ってるの?!
私が人間相手に後れを取るとでも?!」
ドミニクが肩をすくめて応える。
「俺は昨日のお前の姿を見た一人だぞ?
お前の強さは分かってるが、なるだけお前に人間の相手はさせたくない」
リーゼロッテは、顔を赤く染めながら歯ぎしりをしていた。
だが悩んだ末、申し出を有難く受ける事にした。
「わかったわ……
でも! 殺さなければあんな事にはならないんだからね!」
「嘘つけ、人間を傷付けただけでも辛いだろうに――
いや、本当は魔族だろうと傷付けたくないと思っている。
それがリズだ。
お前は本当に、争いや諍いが嫌いなんだな」
リーゼロッテには、ぐうの音も出せなかった。
やはり昨日の醜態を見られた、というのはとても大きい。
どう言い繕っても無駄だろう。
リーゼロッテはため息をついてから言葉を告げる。
「とにかく、ガートナーさんの所へ行くわ。
この時間なら神殿に居るはずよね」
****
神殿の奥、祭壇前でガートナーが早速あれこれと魔導士や神官たちに指示を飛ばしていた。
リーゼロッテはラフィーネとドミニクを引き連れて、祭壇前に近づいていく。
近づいてくるリーゼロッテの姿を認めたガートナーが驚きながら手を挙げた。
「おお?
どうしたんだこんな時間から。
狩りの時間じゃないのか?」
リーゼロッテは苦笑を浮かべて応える。
「アロイスさんにミネルヴァを取り上げられてしまったの。
今日一日、私は休養日よ。
せっかくだから、いつもと違う事をやろうと思って。
ガートナーさん、少し時間をもらえる?」
「それは構わんが……何をするんだ?」
「私がリンゴ酢を作る術式、他の魔導士が真似できるものか意見が欲しいのよ。
真似ができるなら、リンゴと水さえあれば五分でリンゴ酢を作れるわ」
ガートナーの目が輝いた。
「そんな術式があるのか?
是非見せてくれ。
お前の家に行けばいいのか?」
「いいえ、その必要はないわ。
材料は持ってきたから」
リーゼロッテは手に持っていた鞄を床に置き、中から水とリンゴが詰まった大瓶を取り出して床に置いた。
「こんなにぎっしり中身が詰まっていて、重たくはなかったか?」
「術式で浮かせていたから、重さはほとんど感じなかったわ。
街中を大瓶を浮かせて歩くわけにもいかないと思って」
リーゼロッテは大瓶の前に座り込んで、術式をかけようと手をかざした。
そんなリーゼロッテにガートナーが声をかける。
「ああ、せっかくだ。
他の奴にも見せよう――
おい! 五分程度時間が取れる奴はすぐに集まれ!
面白いものが見れるぞ!」
祭壇前では、大勢の魔導士や神官が輪を作っていた。
リーゼロッテはその中心で一人、大瓶の前に座り込んでいる。
「さぁいいぞ。
リンゴ酢を作って見せてくれ」
リーゼロッテは頷いて、いつもの手順を披露した。
遮光の術式で瓶を覆い、光を遮断する。
保温の術式を施し、内部を水が凍らない程度の温度に保った。
あとはゆっくりと中身を魔力で攪拌しつつ、腐敗を促進する術式を施す。
ここまでを解説をしながら処理を進めていった。
五分経過した辺りで、遮光の術式を解除すると、中身はすっかりリンゴ酢に代わった水とリンゴのカスだけになっていた。
「こんな感じよ。
あとは中身のリンゴのカスを濾過すればいいだけ。
どうかしら? 真似できそう?」
ガートナーが顎に手を当てて考えている。
「そうだな、術式の難易度や持続時間は問題ないだろう。
『腐敗を進める』という術式以外はな。
その術式は、俺の知識にはない――
知ってるやつ、居るか?」
周囲の魔導士たちも、首を横に振っていた。
「となると、人間が忘れてしまった術式なのね。
魔族に伝わる術式にはそういう古い時代の術式も多く存在するわ。
これはその一つ。
使い道を私も今まで思いつかなかったけれど、腐敗も発酵も原理は一緒なの。
だから発酵を短時間で終わらせたいときに使えるみたいよ?」
正確には、『生きたまま人間を腐らせる』という、とんでもない使い方がある事を、リーゼロッテは知っている。
普遍的な魔族の間ではそこそこ使われる責め苦らしく、それで術式が残っていたのだろう。
リーゼロッテはその場で術理を説明した後、改めて聞いてみる。
「どうかしら? 真似できそう?」
「そうだな、そんな単純な術式であれば、少し練習するだけで充分使えるようになるはずだ。
魔法で祈ってもできそうだしな――
真似ができそうだと思った奴は手を挙げて見てくれ」
その場の殆どの魔導士や神官が手を挙げた。
ガートナーが満足そうに頷いた。
「この場に居るのは、飛び抜けて優れた奴らという訳じゃない。
ある程度術式や魔法が使える奴なら、すぐに習得できるだろう」
「よかった!
これでリンゴさえ手に入れば、リンゴ酢の量産ができそうね!
――注意点が一つあるわ。
術理で説明した通り、発酵させるには目に見えない生き物の力を借りる必要があるの。
リンゴに浄化術式や保全術式をかけてしまうと、その目に見えない生き物を殺してしまう。
それをやらないようにしないといけないわ」
保全術式は腐敗を止める術式だ。
アレンジで他の効果を加える事もあるが、中核にある術理は『腐敗防止』なので、保全術式全てにこの効果が含まれる。
ガートナーが頷いた。
「リンゴとして流通するものは保全術式をかける事になるだろうから、収穫した時点で分けておく必要がありそうだな。
収穫地に近い場所で作って、リンゴ酢として輸送する事になるだろう」
「やっぱりそうなるかしら?
とりあえずやり方は伝授したわ。
このリンゴ酢はここに置いておくわね。
飲んでおくと、疲労回復になるらしいわよ?
好きに使って頂戴。差し入れよ」
リーゼロッテは大瓶に保温術式を刻み込んで常設しておいた。
これで一か月くらいは傷ませずに飲めるはずだ。
ガートナーが苦笑する。
「有難く受け取っておこう。
果実酒であればなお良かったんだがな」
「果実酒?
簡単に作れるものなの?」
ドミニクが頷いた。
「例えば、リンゴ酢に代わる途中で酒になるんだよ。
リンゴ酒をさらに発酵させると酢になる。
一か月から三か月程度で良かったはずだ」
「じゃあ、発酵を途中で止めればお酒になるのね」
ガートナーが言葉を告げる。
「だが、ヴィクターが未だ酒を解禁していないからな。
王都の中では、まだ酒は厳禁だ。
無法者たちが闇酒を仕込んでいるという噂は聞くから、そんなものが出回る前に解禁されるとは思う」
飲酒による治安悪化は懸念事項だが、無法者の活動と聞いては放ってはおけない。
「ヴィクター!
今すぐ祭壇前に来なさい!」
リーゼロッテが声を上げてから三分後、ヴィクターが姿を現した。
「お呼びでしょうか」
「闇酒とは何かしら?
無法者の活動が活発になる事をどう思っているの?」
「禁止されている酒を、高値で売りさばく商売ですね。
おそらく、富裕層相手に売りつける事になるでしょう。
ですが、その前に酒は解禁する予定です」
「解禁してからお酒を造って出回るまでに、闇酒が出回ってしまうのではないの?」
「ようやく原料が市内に出回り始めたばかり。
無法者たちも仕込んで間が無いでしょう。
実際に闇酒が出回るのは、一か月後くらいになると思います」
リーゼロッテが思っていたよりも展開が早い。
闇酒が出回るのは避けられないだろう。
リーゼロッテが腕を組んで悩んでいると、ヴィクターが言葉を告げてくる。
「治安維持との兼ね合いもありますし、無法者は害ばかりがある訳でもありません。
カリアン人後発隊が来れば、果実酒や麦酒を製造する準備が整います。
それまでは我慢して頂くしかありません」
「いえ、原料があるなら各家庭でも作れるはずよ。
この段階でお酒を禁止していても、意味はないわ。
もう解禁してしまいなさい。
それだけでも市民の不満はかなり解消できるんじゃない?」
ヴィクターが考え込んだ。
「……わかりました。
治安維持に関しては、それを考慮して力を入れていく必要がありますが、市民の不満を抑えられるのは確かです」
リーゼロッテは声を大きく張り上げた。
「では今この場で!
王都のお酒を解禁とするわ!」
その声を聴いた周囲の魔導士たちから、わっと快哉を叫ぶ者が続出した。
――そこまで嬉しいの?!
「ヴィクター、作業に戻っていいわ。
私もちょっと準備をしてくる」
「何をなさるおつもりですか?」
リーゼロッテが、ふふんと笑って見せた。
「解禁しても現物がなければ有難味が無いでしょう?
食料庫に蓄えてあるリンゴ、全部使って果実酒を試作してみるわ。
巧く行ったらみんなに振舞うわよ!」
****
リーゼロッテはガートナーに「後でまた来るわ」と告げて一旦自宅に戻った。
食料庫を確認する――リンゴはおよそ五百個と少し。
試行錯誤するには十分な数だろう。
リーゼロッテは早速リンゴ酢の発酵期間を一分程度で止めた物をドミニクに確認してもらう。
「……うん、ちゃんと酒になってる。
自家製酒としてはこんなもんだろう」
「やっぱり専門の製造者が作った方お酒の方が美味しい?」
「そりゃあそうさ。
そいつらはそれで商売して生活していたんだ。
美味い酒を造る事に誇りも持ってる。
それぞれのノウハウがあるはずだが……
作れなくなって二十年だ。
技術を持った人間が居るうちに、伝えておいて欲しいノウハウだ」
他にも発酵時間二分や三分の酒も造ったが、どれも酒としてちゃんと飲めるものだったらしい。
これを過ぎるとリンゴ酢になるのだろう。
「ドミニクさん!
大きさは問わないから、お酒を入れられそうな瓶を片っ端から持ってきて頂戴!」
****
リーゼロッテが自宅の外でひたすら果実酒を作っていると、空から白銀の流星が降り立ってきた――アロイスだ。
自宅前に並んだ大量の瓶を見て、アロイスが驚きながらリーゼロッテに近寄ってくる。
「ただいま戻ったよ……
しかし、こりゃ何の騒ぎだい?」
「丁度よかったわ!
そちらの作り終わった果実酒を、神殿に運びたかったのよ!
ミネルヴァが居れば運べるわ!」
「ああ、リンゴ酢が作れるんだから、当然リンゴ酒は作れるだろうが……
しかし大量に作ったね」
「まだまだ作るわよ!
とりあえず作り終わった果実酒を神殿に運んでくるわね!」
リーゼロッテはミネルヴァに乗せられるだけの瓶を浮かせて乗り込み、神殿に向かった。
作り終えた酒瓶を祭壇前に並べ終わると、自宅前に戻って酒造を繰り返す。
そんな事をリンゴが尽きるまで繰り返した。
リンゴが尽きるとアンミッシュの森へ飛び、リンゴを補充しては酒を造って運んだ。
集められた空き瓶が尽きるまでそれが繰り返された。
最後の瓶を祭壇前に並べ終わる頃には、もうじき夕方、市民の農作業が終わりを迎え始める時間だ。
「ヴィクター!
農作業中の市民たちに、仕事が終わったらコップを持って祭壇前に来るよう伝えなさい!
一人一杯果実酒を振舞うわ!」
既に祭壇の周りは酒瓶だらけだ。
リンゴのカスを取り除く為、綿生地が口に張ってある。
既に神殿の中に居る魔導士や神官たちには、最初の一杯として振舞い終わっていた。
彼らは嬉しそうに、ちびちびと果実酒を飲んでいる。
ガートナーも貴重品のようにちびちびと果実酒を味わっていた。
「酒なんて、二十年振り近いな。
神魔大戦が終わった直後くらいはまだ残って居たんだが、それでも既に遠い記憶だ。
疲れが吹き飛ぶぜ」
アロイスも少しずつ味わいながら果実酒を口に含んでいた。
「全くだね。
後発隊が来ればもっとたらふく飲めるようになると思うと、その日が待ち遠しいよ」
そんなアロイスの目がジロリとリーゼロッテを睨み付けた。
「……今日は休養日って話じゃなかったかね?
なんでリズはまた、身を粉にして酒造に勤しんだんだい?」
「だって!
解禁されただけで快哉が上がるほど喜ぶのよ?!
なのに現物がないなんて生殺しじゃない!
そして私はすぐに現物を用意する能力があった。
ならば答えは簡単よ」
アロイスが微笑んでリーゼロッテを見つめた。
「リズ、それがあんたの慈しみだ。
あんたは人が喜ぶ姿を見るのが好きなんだ。
食欲とは無関係に、誰かを喜ばせたくて堪らない人種なのさ。
彼らの喜びで食欲が刺激されるから、自分が騙されちまってるんだ。
本当のお前は、ただ喜んで欲しいと願っただけだ」
――そうなのかな……まだよくわかんないや。
だがリーゼロッテは、祭壇前で嬉しそうに果実酒を飲んでる市民たちを見ていると、心地良い感覚を覚えていた。
周りから暖かい気持ちが空気に滲みだしている。
そんな気さえする。
リーゼロッテが、ドミニクやラフィーネに向き直る。
「今日は一日付き合わせてしまってごめんね。
私にはお酒がきちんと作れたか判断ができないから」
リーゼロッテの作り方は、全ての瓶がちゃんと果実酒になった訳じゃない。
何個も作っていると、いくつかは飲めないものが混じったりしていた。
途中からは術式で解析することで判断できるようになったが、ドミニクは「今日は最後まで付き合おう」と言ってくれて、今もここに居る。
ドミニクはニヤリと笑って応えた。
「なに、味見役として他の奴より多く酒が飲めた。
俺は役得ってところだ。気にするな」
ラフィーネは少し怒ったような顔をしている。
「私はリズの見張りよ。
やり過ぎないように監視しているの――
アロイスさんの言う通りよ。
休養日に何をしているんだか」
態度や表情は怒って居るが、温かい気持ちは感じるし、怒りの悪臭も感じない。
リーゼロッテは『本当に怒っているのではなく、怒って見せているだけなんだ』と理解していた。
だが、その意味までは理解していないようだ。
――なぜ怒ってないのに、怒ってる振りをするのだろう?
困惑するリーゼロッテを見たラフィーネが優しい笑顔に変わった。
「リズを心配しているのよ。
あまり私たちに心配させないで?
また倒れたりしたら、今度は本当に怒るからね?」
「はーい」
ラフィーネの温かい気持ちが心にこそばゆい。
なんとなくリーゼロッテも笑みがこぼれて、二人で笑い合っていた。
****
そろそろ日が落ち始めるような時間になると、ぽつぽつと大人が祭壇前に姿を現した。
コップを手にした大人たちを祭壇前に招き寄せ、彼らのコップに果実酒を注いでいく。
果実酒の匂いを嗅いだ彼らは、身体を震わせるほど悦びながら、祭壇広場の隅へ移動し、魔導士たちのようにちびちびと味わい始めた。
時間と共に人が増えて行き、次第に祭壇広場は人で埋め尽くされて行った。
どうやら神殿の外で飲む人も出始めたようだ。
二時間経っても人の波が途切れず、リーゼロッテが『いつ終わるんだろうか』と思い始めた頃――
ガートナーが笑いながらリーゼロッテに言葉を告げる。
「ここから後は俺たちが引き継いでやる。
子供たちが待っている時間だろう?
お前は家に帰ってやれ」
「え! でもそれじゃあガートナーさんたちが困るんじゃ――」
「昔から神殿で酒を振舞うってのは、よく行われていたんだ。
その時振舞われるのは、神の祝福を与えた酒だけどな。
だから、こういうのはむしろ本来の神官たちの仕事だ。
慣れたもんさ――
それに、この分なら酒が余る。
余った酒を神官たちに振舞う事を許してくれれば、奴らも喜ぶってもんだ」
「それで構わないのであれば、私も助かるけど……
でも、本当にいいの?
結構重たいわよ?」
ガートナーは微笑みながら、リーゼロッテを手で追い払った。
アロイスも微笑みながらリーゼロッテの背を神殿の外へ押していく。
「ガートナーがああ言ってるんだ。
素直に甘えときな。
後はあいつらに任せとけばいい。
あんたには子供たちの方が大切だろう?」
リーゼロッテは頷いた後、素直に神殿の外に出た。
神殿の外も、コップを片手に楽しそうに会話している大人が、まだ大勢残っている。大盛況だ。
ドミニクはその場で「俺は自分の足で帰る」と言ってさっさと帰路についてしまった。
リーゼロッテはアロイスとラフィーネと共にミネルヴァに乗り込み、自宅に戻っていった。




