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愛の魔物~魔王の娘ですが突然大陸の一部を統治しろと言われました。他の魔族を殲滅してもいいって、本当に?~  作者: みつまめ つぼみ
第1章:愛の魔物

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45.アンミッシュへご案内

 朝食が終わり、人間たちが学校や仕事に散っていく。


 リーゼロッテは元気よく立ち上がり、アロイスたちに笑顔で向き直った。


「これからアンミッシュの森へ狩りに行く時間よ。

 せっかくだから、一緒に下見に行かない?」


 意気消沈していたアロイスたちが立ち上がった。


「……そうだね、落ち込んでいても何も始まらない。

 私らは明日のために、今出来る事を精一杯やろう。

 全員で下見に行くよ!」


 カリアン人が気勢を上げて応じた。


 その様子に、リーゼロッテは小首を傾げていた。


 ――何があったんだろう?



 ミネルヴァに乗り、まずはドミニクたちと合流した。


 リーゼロッテが、アロイスたちをドミニクに紹介する。


「今朝、カリアン王国からやってきたアロイスさんと、その仲間よ――

 こちらはドミニクさん、ガートナーさんの仲間よ」


 ドミニクが笑顔で自己紹介をする。


「俺たちはラスタベルト王国の反魔族同盟、その中の狩人三人組だ。

 毎日リズとアンミッシュの森で狩りをしている。

 わからない事があれば聞いてくれ。

 わかる範囲で応えよう」


 アロイスが笑顔で応じる。


「私らはカリアン王国の反魔族勢力。

 私はアロイス、その指導者って事に一応なってる。

 二十年前はヴィクターやガートナーと共に旅をした仲間さ。

 実力は大したことないから、期待しないでおくれ」


 カリアン人の男性が不満げに声を上げる。


「姐御!

 なんでいつもそんな謙虚なんですか!

 姐御より強い剣士はカリアンにはいませんぜ?!」


「煩いね!

 ヴィクターやガートナー並を期待されても困るって話だよ!

 あいつらは一流の戦士なんだ。

 私はパーティーの足手まとい、お荷物だった剣士。

 格が違うんだよ」


「あいつ、そんな凄腕だったんですか……」


 ドミニクがニヤリと笑う。


「ただ一人魔王に深手を負わせた、神魔大戦で最も優れた戦士がヴィクターだ。

 凄腕じゃない訳が無いだろう?

 ガートナーさんも、その相棒を務めた優秀な魔導士だ。

 今の人間勢力じゃ、この二人が二強じゃないか?」


 リーゼロッテはため息をついて先にミネルヴァの背に駆けあがった。


「いいから行くわよ?

 下見を兼ねるから、今日は時間をかけてアンミッシュの森を見て行くわ。

 無駄話はその時にでもしていなさいな」


 アロイスが苦笑した。


「へいへい、わかったよ」


 ドミニクたちが身軽にミネルヴァに飛び乗り、アロイスたちが最後に乗り込んだ。

 その直後に白銀の流星が空を駆け、アンミッシュの森を目指した。





****


 白銀の流星が地上に流れ落ちた。


 辺りを見回しながらアロイスたちがミネルヴァの背から降り、続いてドミニク、最後にリーゼロッテが降りた。



「ここがアンミッシュの森よ。

 広さは地図で見た通り。

 具体的にどこかは、ミネルヴァに聞かないとわからないわね」


 ドミニクがアロイスに尋ねる。


「俺たちはいつも、リズだけ別行動で狩りをしてる。

 あんたらはどっちについてくる?」


 アロイスが少し考えた後に応える。


「リズの狩りって奴に興味があるね。

 あんたらの狩りは、また今度見せとくれ」


「ああわかった――

 じゃあまた後でな、リズ」


 そう言って手を挙げたドミニクたちは、いつものように森の奥に消えた。



 残ったアロイスたちがリーゼロッテを見た。


「リズ、あんたいつもはどうやって狩りをしてるんだい?

 いつもの通り見せとくれ」


「いいわよ?

 防御結界術式は張ってあげるから、怖がる必要はないわ」


「……そんなに危ない森なのかい?」


「いいから、付いてきて」



 リーゼロッテはいつも通り、探査術式で群れを探し出し、そちらに向かって真っすぐ歩いて行く。


「なぁリズ、あんた、どこに向かってるんだい?」


「二百五十メートル先に居る、猪の群れに向かってるわ。

 その後方、三百メートルくらいに鹿の群れも居るから手間が省けるかなって」


「……探査術式で、そんな広範囲を調べられるのかい?」


「アンミッシュの森全体も調べられるわよ?

 でもそれは魔力の無駄遣いだから、普段は五百メートルぐらいの範囲で探査してるわね」


 カリアン人の男性が困惑しながら所感を呟く。


「姐さん、何の参考にもならない感じですね……」


 ――そうなの? 範囲こそ狭くても、人間だって同じ狩りの仕方はできると思うけど。



 リーゼロッテはいつものように、五十メートルぐらい手前から魔力の弓矢で猪の頭を仕留めていく。


 視界の中に猪の姿はない。

 傍目には、樹木の向こうにある茂みに向かって、矢を放ったようにしか見えなかったろう。


 アロイスが戸惑いながらリーゼロッテに尋ねる。


「……なぁリズ、森に向かってむやみに矢を撃って、意味があるのかい?」


「むやみ?

 全弾命中してるわよ?

 私が無駄玉を撃つ訳が無いじゃない」


「……獲物までの距離は?」


「五十メートルね」


 カリアン人の男性が困ったように所感を呟く。


「姐さん、やっぱり何の参考にもならないですね」


 リーゼロッテが胸を張った。


「これは二十年間の粛清の日々で鍛え上げた、私の得意技ですもの。

 簡単に真似されたら、私が泣くわよ!」


 胸を張ったリーゼロッテを、アロイスたちは眉をひそめて悲しげに見つめていた。


 ――何故?! 私自慢の、熟練の技よ?! 褒め称えてもよくない?!


 アロイスは不満気なリーゼロッテを、困ったように宥めていた。

 朝の光景を知る彼らには、リーゼロッテにかける言葉などみつけられなかったのだろう。



 仕留めた獲物の元へ辿り着き、浮遊術式で浮かせ、血を全て抜きとって皮を剥ぎ取り、内臓も全て切り落とす。

 食肉に保全魔術をかけて、猪七頭分の食肉と肝臓が完成した。


 アロイスが不思議そうにリーゼロッテに尋ねる。


「なぁリズ、他の部位は捨てちまうのかい?

 もったいなくないかい?」


「内臓はドミニクさんが『狩人以外が食べるには向いてない』って言うし、他の部位も加工工場が動いてないから持ち帰っても腐らせるだけなのよ。

 だから森に捨てているの。

 それはそれで、他の動植物の餌になるわ」


「なるほどねぇ……

 加工工場すら、か。

 確かに深刻なダメージだね。

 生活基盤がろくに動いてない。

 だが、皮は処理すれば保存が利くだろう?」


「私は後の工程を踏まえた皮の切り裂き方を知らないの。

 多分知っていても、そこまで綺麗には切り裂けない気がするわ。

 だから皮も森に残していくのよ。

 森の生態系の餌になれば、それは無駄にはならないもの」


「あくまでも、子供たちに肉を食わせる為の狩りって事か。

 それ以外を覚えられないんだね?」


 ――ばれてる!


 リーゼロッテは笑ってごまかしながら、次々と獲物を仕留めていった。


 そうして五十頭分の鹿と猪の食肉が宙を浮いている、いつもの光景になる。


 カリアン人の男性が蒼い顔で周囲に漂う食肉を見渡す。


「姉御、なんか恐ろしい光景になってるんですが……

 森の中を、大量の肉が浮いてますぜ?」


 リーゼロッテが微笑みながら応える。


「あら、しょうがないじゃない。

 私一人では手に持てないもの――

 次はリンゴと蜂蜜よ」





 続いてリンゴの位置を探査しつつ、ミツバチの巣を探し出しては魔力で割っていく。

 いつものように蜂蜜を一瓶を満たした。


 リーゼロッテが振り返ると、顔面蒼白になっているアロイスたちが居た。


「どうしたの?

 防御結界があるから危険はないわよ?」


「……いいから、この大量の蜂を何とかしておくれ」


 睡眠の術式で眠らせた蜂を、魔力の箒で隅に寄せる。


「踏み潰さないように気を付けてね」


 アロイスが呆然と呟いた。


「リズあんた、いつもこうやって蜂蜜を取ってるのかい?」


「そうよ?

 手早くて楽でしょう?」





 リンゴの生殖地帯にいくと、樹木から二百余りのリンゴを魔力で切り落として宙に浮かせる。


「リズ、このリンゴも子供たちに食わせるのかい?

 それにしては数が少ないね」


「余ってくると子供たちに分けるけど、リンゴ酢の材料にするのよ。

 まだ調味料はとても希少品なんだけど、猪の肝臓を病弱なイェルクに食べてもらうのに必要なの」


「なるほど、実の需要より、調味料としての需要の方が高いか」


「どうかしらね?

 リンゴを食べてる子供たちは幸せそうだし、実の需要も高いと思うわよ?

 どちらも捨てがたいところね――

 私の一日の狩りはこんな感じかしら。

 ドミニクさんと合流するわよ」





 探査術式でドミニクの位置を探り出し、真っ直ぐ向かっていく。


 アロイスが先頭を平然と歩いていくリーゼロッテの後ろから、恐る恐るついて行く。


「なぁリズ、そんなに不用意に狩人の狩場に近づくのは危ないよ?」


「私の防御結界よ?

 これを破れるのはお父様だけ――

 アロイスさんたちのは数段落ちるけど、公爵級の攻撃までなら無傷で居られるわよ?」


 カリアン人の男性が呟いた。


「俺たちの結界、そんな頑強にする必要あるのか?

 この森には魔物でも出るってのか?」


「視界の悪い場所では何があるかわからないわ。

 如何なる時でも、考えられる攻撃には備えておくものよ?

 さすがに四魔公やお父様がここまで来ることはないはず――

 私は人間に嘘を告げた事がないの。

 『怖がる必要はない』と私が告げた以上、相応の結界を張っただけよ」


 アロイスが納得した様に頷いていた。


「伊達に二十年間、粛清の日々を生き抜いてないって訳だね――

 それに、『人間に対して嘘をついたことがない』というリズの理屈も理解したよ」


 ――理屈を理解? 変な言い方だなぁ?


 リーゼロッテは発言した以上、その言葉に責任をもって果たそうと全力を尽くす。

 彼女にとっては『嘘は告げない』というシンプルなロジックだが、体現するのは簡単ではない。





 ドミニクたちといつものように合流――する途中、いつものように流れ矢が何回か防御結界に弾かれ、カリアン人の男性たちが怯んでいた。


 その様子に『だから怖がる必要はないんだってば……』とリーゼロッテは呆れていた。


 ドミニクは、アロイスたちを見て笑って迎えた。


「ははは!

 初めて見るリズの狩りはどうだった?

 肝を潰すだろう?」


「全くだよ。

 どんだけ常識外れなんだいこの子は!」


 リーゼロッテは不満気に頬を膨らませる。


「魔王の娘が常識通りでどうするのよ?!

 もしかして魔王の娘、侮られてる?!」


 ドミニクに笑いながら促されて、リーゼロッテたちは森の外に出た。





 リーゼロッテは食肉と肝臓、リンゴと大瓶を宙に浮かべながら、みんなに提案する。


「せっかく来たんだし、廃墟になった街も見て行きましょう」


 アロイスも頷いた。


「望むところだ。

 恐らく、カリアン人が住み着くことになる場所だ。

 状態を知っておきたいね」


「じゃあミネルヴァに詰めて乗って!

 食肉がかさばるわ!」


 いつもより肩を寄せ合ってミネルヴァに乗り込み、白銀の流星が空に白銀の橋を描いた。





****


 辿り着いた場所は、すっかり荒れ果てた街の残骸。


 アロイスが驚愕しながら辺りを見回す。


「なんなんだい! この有様は!

 何があったって言うのさ!」


 リーゼロッテは周囲を見渡した。


 破壊され尽くした家屋が、雨風で苔むして朽ち落ち、植物が覆い茂っている。

 そんな家屋ばかりが立ち並び、所々に動物の影もある。

 普段と変わらぬ、この廃墟の光景だ。


 リーゼロッテがアロイスを改めて見つめて応える。


「前任者が放置した結果、魔族が暴れて人間を殺し尽くしたそうよ。

 その名残ね。

 ラスタベルトでは珍しくない光景よ?」


 ドミニクが補足する。


「時期は今から十数年前だ。

 その頃からこの街と連絡が取れなくなったらしい。

 様子を何とか見に来たらこうなっていたんだとさ。

 生き残りは一人も見つかっていない」


 アロイスたちが呆然と街の残骸を見て回っている。


「……カリアン王国は、もしかしてとんでもなく幸運だったって事かい?」


「それは間違いないわよ?

 二十年経過してもあれだけ国の形を維持していたのは、カリアンとヴェローナくらいじゃないかしら。

 他の地方もここと大差ない光景は珍しくないし」


 リーゼロッテが粛清の日々でよく見たのは、ラスタベルトとヴェローナの中間ぐらいの荒廃具合だった。

 その中にこうした廃墟がぽつぽつとある――それが他の地方だ。

 こんな廃墟が至る所にあるのは、ラスタベルトぐらいだろう。

 逆に、カリアンやヴェローナほど人間社会が形を残している土地は、見た覚えがなかった



 ドミニクが苦笑を浮かべた。


「ラスタベルトは、大陸一不運な国だったって事だな。

 隣国が大陸一幸運な国だってのは、皮肉が利いてるが」


 リーゼロッテがため息をつきながら告げる。


「どちらにしろ、ラスタベルト王国の大穀倉地帯は大陸の食糧庫。

 そこが機能していない時点で、どこの国も相当苦しくなるのよ。

 そんな事になれば人間が減る。

 当たり前の理屈に対処できなかった前任者の無能振りには、頭が下がる思いよ」


 リーゼロッテが、思わず冥界に居るダグムロイト公爵に皮肉を言い放った。

 そんな極めて無能な魔族がどうやって四魔公になれたのか、それが魔王の正体を超える、魔王軍最大の謎だろう。



 辺りを調べ終わったアロイスが、リーゼロッテの元に戻ってきて両手を上げた。

 どうやらお手上げ、という事のようだ。


「無理だね。

 こりゃあ再利用できるものがない。

 土地もならしなおしだ。

 ここに街を作る利点は、街道の名残があるってだけだね。

 街の残骸を撤去しなきゃならん分、手間の方が多い」


 リーゼロッテは小首を傾げて尋ねる。


「街の残骸が無くなって、土地が平らになればここに街を作るメリットがあるのね?」


「ああつまりそういうことなんだけど……

 リズ?

 何を考えてるんだい?」


「ここに街があったというのはラスタベルトの歴史、文化の一つよ。

 滅びて途切れてしまったけれど、地名もあるし残したい文化だわ。

 どこに作っても同じなら、ここに街を作るべきだと思うの」


 ドミニクが言いづらそうに言葉を告げる。


「そりゃあ、街が復活してくれれば嬉しいが……」


 ドミニクは、そのまま言い淀んだ。

 ここは『アンミッシュ』という名を持つ街だった。

 復活して欲しいという思いは強い。


 ドミニクがアロイスの目を見ると、彼女が眉をひそめて首を振った。

 損得で考えれば、手間の方が多くかかるこの場に街を蘇生させる旨味がない――そういう判断だ。



 リーゼロッテが拳で胸を叩いた。


「まぁつまり、こういう時こそ執政官である私の出番、という訳よ!」


「だからリズ!

 何をする気なんだい!」


「何って……

 『街の残骸を消して』、『土地を平らにする』のよ?

 それでメリットが生まれるのでしょう?

 こういうの、人間の文化で誘致って言うのよね!

 ――みんな、街の跡地から離れてー!」




 全員が離れたことを確認すると、リーゼロッテも敷地から離れたところに立つ。


 まずは百体の低級眷属を呼び出し、廃墟の中を縦横無尽に走り回らせていった。

 動物たちが逃げ出し、街の残骸が砕かれて地面に叩き落とされていった。

 逃げ出せなかった動物たちは浮遊術式で運んでいたようだ。


 次に敷地を覆うように防火結界が張られた。

 中の眷属が均等に敷地に並び、眷属たちを着火点にして、爆発術式を盛大に百連発した。

 防火結界の中で、街一つが吹き飛ぶ威力の爆発が百連発である。

 当然中身は粉々だ。


 消化術式が施され、防火結界が消えた。

 粉砕し攪拌された街の跡地から、土以外の不純物が運び出されて行った。

 不純物は立方体に圧縮して固められ、敷地の隣に積み上げられていく。


 改めて敷地全体の土を耕したあと地表を平らに固め、埋まってしまった地下水脈の再構築を行った。

 地表付近、井戸の候補地には付近の樹木を一本使い、木製の看板を突き立てていった。




 リーゼロッテはくるりとアロイスに振り向いた。


「ねぇ、井戸は掘ってしまっておいた方が良いかしら?

 要らないなら、看板があるところに地表近くの地下水脈が通ってるわ――

 ああ、心配しなくても、水質はきちんと浄化済みよ。

 飲んでも病気にはならないわ」


 アロイスたちとドミニクたちは、愕然と様子を見守っていた。

 言葉もなく、ただ敷地を凝視して立ち尽くしている。


 リーゼロッテは大きく手を打ち鳴らし、自分に注意を引き付けた。


「ねぇ、井戸は欲しい?

 どうする?

 やるならちゃっちゃとやりたいんだけど?」


 アロイスがリーゼロッテを手で制止し、言葉を絞り出す。


「……ちょっと待ってくれないかい。

 理解が追い付かないんだ。

 ほんの十分足らずの間に、あの街の残骸だったものが、こうなったってのかい?」


 アロイスが指さす先――すっかり綺麗に土が均され、障害物のなくなった街の跡地だ。


 リーゼロッテが呆れたように腰に両手を当てた。


「見ていたでしょう?

 何が理解できないのかしら?

 幻覚ではないわよ?

 信じられなければ、歩いて確かめてみれば?」


 アロイスたちだけじゃなく、ドミニクたちまでが足元の感触を確かめながら跡地を歩き回っていた。


 しばらく歩きまわって満足したのか、全員がリーゼロッテの元に戻ってきた。

 アロイスがリーゼロッテに尋ねる。


「確かに、立派な街の礎だ。

 だが、何をしたらあれがこうなるんだい?」


「見ていた通りよ?

 残骸を粉砕して、燃やして、不純物を外に避けて、土を耕したうえで固めたの。

 井戸として使える地下水脈を再構築して、浄化して利用できるようにして井戸の目印も立てておいたわ」


 ドミニクが不安気な顔でリーゼロッテを見た。


「リズ、お前は昨日、丸一日カリアンに行っていて、感情を食べていないはずだ。

 なのにこんな無茶をして、倒れたらどうする気だ」


 その問いかけに、リーゼロッテのお腹が大きな音で見事に応えた。

 リーゼロッテは顔を真っ赤に染めたあと、フードを閉じて顔を隠した。


「……大丈夫だってば!

 このぐらいなら!

 まだ持つわよ!」


 アロイスが少し厳しい声で問いかける。


「まだ持つってのは、どのくらいだい?」


「えっと……

 王都に戻れば、イェルクとラフィーネが待っていてくれるわ。

 二人の愛を食べれば、夜までは持つわよ?」


「それはつまり、『すぐに二人の愛を食べないと、夜まで持たない』って意味だね?」


 リーゼロッテは言葉が見つからずに、黙って俯いた。


 アロイスが大きくため息をついた。


「昨日一日中、あんたはどんだけ無茶をしたんだい?」


「……結構?」


「今、ここを均すのに、あんたはどんだけ無理を通したんだい?」


「……それなりに?」


 アロイスが大きく深いため息をついた。


「無理を通した自覚があるなら結構だ――

 今すぐ家に戻るよ。

 ミネルヴァ!」


 アロイスの声に従うように、ミネルヴァが飛竜に代わった。


 ――え?! ミネルヴァが私以外の指示を聞いた?!


 驚いていたリーゼロッテを、ドミニクが手早く横抱きに抱えてミネルヴァに乗りこんだ。


「――ああ!

 待ってミネルヴァ!

 食材を引き寄せるわ!」


 慌てて浮いていた食材をミネルヴァの上に引き寄せ、「いいわよ?」とリーゼロッテが呟いた瞬間、普段よりも遥かに速い流星が空を駆けていった


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