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愛の魔物~魔王の娘ですが突然大陸の一部を統治しろと言われました。他の魔族を殲滅してもいいって、本当に?~  作者: みつまめ つぼみ
第1章:愛の魔物

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28.天然物

 夕食を終えて血色がよくなってきたイェルク王女と共に、リーゼロッテはその家の子供たちから愛を捧げてもらっていた。

 彼女はその様子を見学したいと申し出てきて、リーゼロッテが子供たちの同意を得て許可した。


 子供たちの愛と歓喜で至福に染まる顔を、王女はとても興味深く観察しているようだった。

 一人一分前後で合計およそ二百分。彼女は三時間超の間、その全てを観察し続けていた。

 六時から始まり九時過ぎに終わる、いつもの流れだ。


 二百人分の愛と歓喜を搾り取ったリーゼロッテはイェルク王女に振り返り、感想を尋ねた。


「あなたの好奇心は満たされたかしら?」


「ええ、とても。本当に全員、至福に満ちた顔をするのね……」


「回数を重ねるたびに得られる歓喜が大きくなってるから、彼らが感じている生命を謳歌する喜びも大きくなっているはずよ。

 自分が生きているという事を、魂の髄から実感する感覚だそうよ」


 魔王城の召使いたちが言うには、『これほどの歓喜は普通の人生で得る事などできない』という話だった。

 ラフィーネも似たような事を言っていたので、そこは共通なのだろう。


「そんな感覚を覚えて、悪影響とかはないんですか?」


 リーゼロッテは苦笑を浮かべる。


「これを覚えた人間は、これがなくては生きていけなくなるみたい。

 一年お預けを食らうと、泣いて懇願するようになるそうよ。

 私はその様子を直接見たことはないんだけどね。

 魔王城では、元気がなくなった召使いたちが私の部屋の当番に割り当てられるの。

 そうして愛を捧げ、明日を生きる活力を取り戻す――

 そんな日々だったわ。

 どう? 卑しく悍ましい存在という意味が理解できたかしら?」



「でも、これはリズ殿下にとって生きる為に必要な食事なのでしょう?

 人間を殺してしまう訳でもない。

 愛する人に生きる悦びを見い出すなんて、人間ならよく聞く話です。

 それは人間の本能ではないのですか?

 愛する者を求める心、それを抑えられないのは仕方がありません。

 卑しくも悍ましくもないように感じるわ」



「あなたは本当に珍しい感性をした個体ね。

 今の人間社会を立て直す時期には、彼らの愛が必須よ。

 今はまだ得られる魔力が消耗を上回っている。

 けれど、いつか消耗が上回る。

 そうなれば、もっと多くの人間から愛を捧げてもらうわ。

 おそらく、フィリニスから移住してきた十歳以上二十代までの未婚の人間にも義務が言い渡される。

 そうして、新しい子供がやってくるでしょうね」



 イェルク王女が不思議そうに小首を傾げて尋ねてきた。


「子供と決まっているんですか?

 二十代までを含むのでしょう?」


「義務を嫌がる人間は、なんとかして婚姻を結んでしまうんですって。

 だから法律で婚姻できない未成年だけが私の所へやってくるはずよ」


「なぜ二十代までという縛りがあるんですか?」


「私が三十代以上の感情を食べられないからよ。

 あなたが猪の肝臓を食べた時の感想と同じ、と言えば分かるかしら?

 栄養は感じるけれど食べたくない――そんな心境になるの」


 イェルク王女が納得した様に頷いた。


「実感を伴ってよく理解しました。

 飢えていても、味付けされていない猪の肝臓を食べたいとは思いませんもの」


「そういう事よ――さぁ、家に戻りましょう。

 ラフィーネも愛を捧げたくて首を長くして待っているわ」





 自宅に戻りラフィーネが愛を捧げる姿も観察し終えたイェルク王女が、リーゼロッテに告げた。


「リズ殿下、その愛を捧げるのは、愛しか受け付けないのですか?

 殿下は正の感情ならなんでも食べられるのでしょう?

 好意の類なら食べられるのではないですか?」


「そうね、最初の一回はそういう感情から食べていくわよ?

 素顔を見せて好意を引き出し、それを食べるとそれが次第に愛と歓喜に代わっていくの。

 それも含めて、月の神の寵愛の副次効果らしいんだけどね」


「その魔性は、神の寵愛の副次効果だと言うんですか?」


「月の神は『神の祝福』だと言ったけれど、魔性の方がより相応しい気がするわ。

 正の感情を食べる魔族の私の特性と合わさって、凶悪な効果を持ってしまったらしいの。

 神が三日三晩笑い倒したというのも、頷ける話よね。

 祝福だから解呪は神でもできないそうよ。

 あなたも私の素顔を見ないように、くれぐれも気を付けなさい」


 イェルク王女が何かを考えるように顎に手を当てている。


「……リズ殿下、私の好意を食べてみては貰えませんか?

 素顔を知らない私なら、魔性に堕ちることはないと思うんです。

 その時、どんな感覚を覚えるのか興味があります」


 侍女が慌てるように「殿下、何を仰るのですか!」とリーゼロッテたちの間に割って入った。

 リーゼロッテも白い目でイェルク王女を睨み付けた。


「あなたまでヴィルケ王子と同じことを言うのね。

 国王と『貴族は魔性に落とさない』という約束を交わしているわ。

 あなたが私の魔性に堕ちたら、私は約束を破ったことになる。

 取り返しがつかない事を試す気にはなれないわね。

 ――あら? こんな時間に誰かしら」


 扉を激しく叩く音が聞こえて、リーゼロッテが玄関に向かう。


 扉を開けるとそこには、ヴィルケ王子と近衛騎士たちの姿があった。


「どうしたの? また何か用事?」


 ヴィルケ王子は慌てたようにリーゼロッテに応える。


「こちらにイェルクが来ていると伺ったのですが、本当ですか?!」


「そうよ?

 配給が減らされる期間はここで栄養を補充してもらうわ。

 四千人の受け入れ態勢が安定するまで、早くても一週間。

 彼らの生活が安定するまで考えれば一か月は必要でしょう。

 新体制が落ち着くまでは、ここで体調を整えてもらうわ」


「そこまでご迷惑をおかけする訳にはまいりません!」


 リーゼロッテはじろりとヴィルケ王子を睨み付ける。


「彼女の侍女は伝えなかったのかしら?

 これは執政官としての命令。

 人間が逆らう事を許さないわ。

 文句があろうと聞く気はないの」


 どこか悔しそうにしつつ、ヴィルケ王子が俯いた。


「……それで、イェルクは今どこに?」


 リーゼロッテの背後からイェルク王女が顔を出し、ヴィルケ王子に声をかけた。


「お兄様、私ならここよ?

 どうしたの? 一体。

 こんな時間に、これは何の騒ぎかしら?」


「イェルク! なんでこんな事になったんだ?

 お前は今朝、かなり体調が良かったはずだ!

 そんなお前が何故殿下の家で御厄介になっている?!」


 リーゼロッテがため息と共に言葉を告げる。


「朝、狩りに出かけようとしたら家の前に居たのよ。

 話をしたいと言われたけれど、私にもドミニクさんたちと狩りに行く予定があったから断ったの。

 そうしたら同行させてくれと譲らなくてね。

 狩りに連れて行って戻ってきたら、顔色が悪くなっていたから調査した結果が栄養不足よ?

 目の前で栄養不足で倒れかけてる人間を放っておける訳が無いでしょう?」


 ヴィルケ王子が呆れた顔でイェルク王女を見据えていた。


「イェルク、お前なぁ……

 リズ殿下にどれだけご迷惑をおかけすれば気が済むんだ?!」


「私の気が済むまで、でしょうか?

 それがどのくらいかは私にもわかりませんわ」


 平然と言い放つイェルク王女は、ヴィルケ王子より数段手強いだろう。

 脱力して項垂れるヴィルケ王子を見ているリーゼロッテも、苦笑を禁じ得ない。


 リーゼロッテは脱力しているヴィルケ王子の肩を叩きつつ、声をかける。


「これで理解したかしら?

 王女はしばらく私が預かるわ。

 あなたは大人しく王宮に戻って、明日も仕事に励んでいなさい。

 妹に会いに来たくなったら好きな時間に来てもいいけど、こんな夜遅くに来ても今後は寝ているんじゃないかしら?

 イェルク王女、もうかなり眠そうだし」


 リーゼロッテの背後から頭越しに、イェルク王女がヴィルケ王子に言葉を告げる。


 ――あんたたち、私より背が高いからって、私の頭の上で会話するの止めてくれないかな?!


「お兄様、お父様に伝えておいてくださらない?

 私だけはリズ殿下との約束から外してほしいと。

 私が例えリズ殿下に心囚われたとしても、約束を破ったと見做さないで欲しいの。

 王女の私なら、王家の後継者でなくなっても問題はないでしょう?」


 ――は?! 何を言い出してるのこの子は?!


「ちょっと?!

 頭の上で突然とんでもない話を交わし始めるのは止めてもらえないかしら?!

 駄目に決まっているでしょう?!」


 リーゼロッテは振り向いてイェルク王女の目を見据えた。

 その目は至って真剣で、これまた譲る気配が微塵も見られない。


「お父様の返答がそれを容認するものであったなら、是非リズ殿下に私の好意を食べてみて頂きたいの。

 それで魔性に心囚われても、これは私の選択。

 何の後悔もしない事をお約束致しますわよ?

 殿下は若い女性の感情が好みだと噂に聞きました。

 天然物の私の好意、食べてみたいとは思いませんか?」


 途端、リーゼロッテの胸に温かいものが流れ込んでくると同時に、鈍ったはずの嗅覚でも優しく甘い香りが感じられる。

 実に食欲を誘う香りが鼻をくすぐった。

 二百一人分の愛と歓喜を食べた直後だというのに、食べてみたいという誘惑を感じていた。


 一体どこでこんなに好意を持たれるような事があったのか――リーゼロッテは理解に苦しんだ。

 けれど、紛れもない魔性の影響なく発生した、強い好意の感情だ。

 それは今まで、リーゼロッテが食べた事のない味。抗いがたい誘惑だった。


「……確かに、食べてみたいと思ってしまったわね。

 でも今はその好意の感情を抑えておいて頂戴。

 このままでは、思わず食べてしまいそうよ。

 あくまでも国王の許可があったら試す。

 そこは譲れないわ。

 守れないなら、私の傍に近寄ることを禁じる呪いをかけるからね?」


「わかりましたわ――お兄様、お聞きになりました?

 リズ殿下も私の感情を食べてみたいと仰るの。

 素顔を見なければ、心囚われる事もないはず。

 その仮説を試して安全が確認されれば、お兄様の好意も受け取ってもらえるんじゃないかしら?

 お互いにメリットのある話よ?

 是非、お父様を説得して頂きたいわ」


 ――だから! 私の頭の上で会話をするな!


 すぐに甘い香りが引いていく。

 自制心の高さは兄妹で似ているようだ――自制心があるんだろうか、この王女に。

 いささか疑問に感じるところだ。


 ヴィルケ王子は不承不承頷いていた。


「……確かに、俺にもメリットがある話だ。

 わかった、父上を説得してみよう。

 ご迷惑をおかけしているリズ殿下の望みをかなえる為、全力を尽くす」


 そう言った後、ヴィルケ王子はリーゼロッテに頭を下げ、騎士たちを引き連れて王宮へ戻っていった。




 扉を閉めた後、リーゼロッテは改めてため息をついてからイェルク王女に尋ねる。


「あなた、どこでそんな好意を私に抱いたというの?

 たった一日、一緒に過ごしただけよ?」


 イェルク王女は眠たげな眼差しでにっこりと微笑んだ。


「一日言葉を交わし、その姿を見れば充分です。

 特に今日はリズ殿下が、私の為に走り回ってくださった一日。

 胸を打たれて当然だとは思いませんか?」


「あんたの為に走り回った覚えなんてないわよ?!」


「では何故、猪の肝臓が夕食に並んだのでしょう?

 何故リズ殿下は、私に一か月の逗留を命じられたのでしょう?

 私にいくら尽くしても、私の感情を食べられない事は先程殿下が自ら仰ったこと。

 ご説明頂いても宜しいですか?」


 ――何故?! ……なんでだろう?


 リーゼロッテは言葉が見つからず、歯ぎしりをしながらイェルク王女を睨み付けていた。


「今まで食卓に並んだ事のない猪の肝臓。

 そもそも今まで、内臓を持ち帰る事もなかったそうですね?

 その調理の為に、リンゴ酢の作り方まで教わって作り上げたそうじゃないですか。

 そんな手間暇をかけても、殿下が得られる物は何もありませんよ?

 何故そこまでリズ殿下はなさったのでしょう?」


 絶句したまま、リーゼロッテはただイェルク王女を睨み続ける。




 なんでだろう……理由なんてわからない。

 そこに理由なんてないのかもしれない。

 そうすべきだと思ったからそうしただけ。

 でも、魔族の私が一人の人間に対してそこまですべきだと、何故感じたのだろう?




 困惑しているリーゼロッテを楽しそうに眺めて、イェルク王女がリーゼロッテに告げる。


「……お困りの様ですね?

 ではヒントです。

 先程リズ殿下は、『目の前で栄養不足で倒れかけてる人間を放っておける訳が無い』とお兄様に告げました。

 これでおわかりになりますか?」


「それは……私は人間が目の前で死ぬのが嫌だからよ。

 私は負の感情が嫌いなの。

 悪臭で鼻が曲がるからね。

 だからよきっと!」


「そんな今すぐ命に係わる訳がないでしょう?

 ちょっと外を歩き回った程度、倒れたとしてもそれだけです。

 本当にご自覚がおありにならないのね――殿下は心優しい人なのよ」


 ――あーもう! どうして兄妹揃って同じことを言うのかな?!


「そんなもの幻想よ!

 私にそんな心はないわ!

 こんな魔性を持った存在が心優しいだなんて、世の中が間違ってるとしか思えないわよ!

 私は人間を食い物にする魔族なの!

 それは覆しようのない事実よ!」


「魔族である事と、心優しい事は両立できますよ?

 現に、リズ殿下が両立して見せています。

 何の不思議もありません」


 眠気でふらふらとしながら、実に楽しそうにイェルク王女は微笑んでいる。


「ああもう!

 眠気でフラフラじゃないの!

 いいからあなたはもう寝なさい!

 部屋は私の部屋――ここよ!

 ほら早く寝てしまいなさい!

 半分寝てるから寝言なんて言うのよ!」


 リーゼロッテは侍女に指を突き出して告げる。


「きちんと王女を寝かしつけておいて!

 もう起きて寝言なんて言わないように、きっちりとね!」





****


 リーゼロッテはリビングに戻り、ソファに腰を下ろして一息ついた。


 ――つかれたぁ……なんなんだろうあの兄妹。


 特にイェルク王女は始末に負えない。

 変に勘が鋭いし観察力もある。

 頭もよく回るようだし、知識も豊富といえる。

 それでいて、リーゼロッテを弄り倒して楽しむ悪癖もありそうだ。


 実に厄介だ、と痛感していた。



 誰かが玄関の扉を開け、家の中に入ってくる気配――

 リビングのリーゼロッテの前に、ヴィクターが姿を見せた。


「殿下、お疲れですね」


「聞いてたんでしょう?

 私の手に余るわ、あの子は。

 早い所、配給を安定させて王宮に追い返したいところね」


 ヴィクターがリーゼロッテの向かいに腰を下ろした。


「その件で、殿下にご相談があります」


「なにかしら?

 応じられる事なら応じるけど」


「フィリニス市民が合流した事で、配給に含める燃料の薪不足が深刻なのです。

 早急に対策する必要があります。

 フィリニスの森で伐採をし、丸太を大量に運んでくる必要があるかと。

 ですがあの森は瘴気に汚染されたまま、木こりたちの安全を確保するのが難しい状況です。

 月の神の奇跡で、森を浄化できないでしょうか」



 森の傍の街、フィリニスの住民ならば木こりが多いだろう。

 だが、神の奇跡と言われても、リーゼロッテには判断が付かなかった。


「ちょっと彼女に聞いてみるわね」




(ねぇ月の神、話は聞いていた?)


『聞いていたわよ?

 私は森の神の側面も持つ。

 私の領域でもある森を浄化するくらいは簡単よ』


(そう、ありがとう)




「できるらしいわ。それをやってくればいいのかしら」


 ヴィクターが頷いた。


「それと同時に、森の生態系の蘇生も祈ってみてください。

 『森の神』でもある月の神なら、そちらはより簡単にできるはずです」


「わかったわ――他にはある?」


「殿下、今の殿下はどの程度の低級眷属を無理なく維持できますか?」


「子供たち二百人分の感情で賄うなら、あと一万は余裕で常設できるわよ?」


「では、五千程度をお借りできますか」


「いいけど……何に使うの?」


「街道を固め、塩や木材の輸送路の安全を確保します。

 塩田も保護しなければいけませんし、森周辺も同じく守らねばなりません。

 狩人や木こりたちの作業中も、彼らの安全を守る必要があります」


 『やることが多いなぁ』と、リーゼロッテが辟易した顔で応える。


「でもその程度だったら、五千は必要ないわよね?

 他には何をするつもり?」


「自警団に周辺を警邏させ、野盗たちを潰して回らせます。

 王都周辺に来ると殺されるとわかれば、彼らも近づいてくることはなくなるでしょう」


「わかったわ。今すぐ用意するから、王都の外まで付いてきて頂戴」





****


 ミネルヴァで王都郊外まで移動し、リーゼロッテはその場に五千体の低級眷属を作り出した。

 一度に地面から湧いて出る五千体の軍勢は中々に壮観だ。


「彼らには王都市民の安全を守るよう指示を与えてある。

 後はあなたが指名した人間の指示に従うようにしておいたわ。

 随時必要な人間に指揮権を渡しなさい」


 要するに、誰か一人の人間の指示に従う指令だ。

 指示が『この人間の指示に従え』だった場合、その人間に指揮権が移動する。


 最優先はリーゼロッテの身の安全、その次に王都市民の身の安全、最後に指揮する人間の指示となっている。

 野盗が王都市民だった場合、この低級眷属は彼らに手出しができない事になる。

 その場合出来ることは、無力化が限界だ。

 それ以上の対処は同行する人間が行う必要がある。


 リーゼロッテは、そこまでをヴィクターに説明しておいた。


「把握しました。有効に活用させて頂きます。

 これで北の森に狩りに出ることが出来ますし、王都に森の恵みがもたらされるようになるでしょう。

 家畜の原種も手に入りますし、逃げ出して野生化した家畜種が見つかるかもしれません」


「塩の増産もできるわね!

 農作業の従事者はどれくらい増やせそう?」


「一千人程度でしょうね。

 残り一千人程度が自警団、五百人程度が北の森に関わる木こりや狩人になるようです」


 リーゼロッテが思う程は人手不足の解消には繋がらないようだ。

 彼女は口を尖らせて不満気にしていた。


「いたずらに人を増やしても、王都に受け入れるだけの余裕がありません。

 四千人すら許容量を超えています」


 まずはこの四千人を安定して生活させてから、次の受け入れを考えなければいけない。

 それに、これでようやく王都市民が食肉を得る機会が得られる。

 フィリニス市民の受け入れは、恩恵の方がずっと大きい。


 そんな説得を、リーゼロッテはヴィクターから受けた。


 ヴィクターの言葉で、ようやくリーゼロッテは満足げな笑みを浮かべた。


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