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第六話 錯綜



「神様、僕に講義をしてくれませんか」



 アレスの提案はこうだった。

 カトレアに稽古をつけてもらうと同時に、知識の神である俺にダンジョンや戦闘の知識を教えてほしいと言うのだ。



「…知識の神だが教え方は保証しないぞ」



「ってことはしてくれるんですね!?」



「ああ、まあ良いけど…」



 するとラミアも手を挙げて



「私もお願いします」



 と言い、それからカトレアも



「じゃあ、私もお願い出来ますか。知識の神がどのような能力なのかも気になりますし」



「カトレアもかよ、まあ良いさ。3人ともやってやる」



 そして30分後に施設の中にある大部屋で勉強会をすることになった。





「神様はとんでもない化け物ですね」



 勉強会終了後、カトレアに放たれた第一声がそれであった。



「神様、もしかして知識の神は」



「多分カトレアの思ってることは分かるが、言うな」



「…はい」



 何というか、知識の神になってから頭の中に書庫が出来たような感覚に襲われていたが、ここまでとは思っていなかった。そして、知識の神が眷属に与える力についても。



「取り敢えず、午後になったらアレスとラミアの衣服を買いに行くぞ。カトレアもついてこい」



「…了解です」







「わぁ…」



 施設から歩いて15分ほど。俺はカトレア、アレス、ラミアと共に城塞都市中央のデパートのようなところに来ていた。やはりと言うか、アレスとラミアはこう言ったところに来たことが無いらしく目をキラキラさせている。



「ラミア、この服とか似合うんじゃない!?」



「これ可愛い!アレスはファッションの才能があるね!」



「ありがと!それからこれもどう?」



「これも悪くないなぁ。迷っちゃう!」



 何より驚いたのはラミアの興奮っぷりである。これまでアレスの後ろで静かに眺めるだけだったのに、今はアレスと並んでキャッキャ騒いでいる。アレスも含め、スラム街で育った彼らが初めて年相応の反応を見せていると言えるかもしれない。



「神様、おトイレ行って来ていい?」



 ラミアが聞いてくると、隣のカトレアに一瞬目配せした。そして小声でカトレアに囁く。



「カトレア、ラミアを1人にするなよ」



「分かってます、さっきから見られていますからね」



 アレスとラミアから常に離れないでいるのは、さっきから誰かにつけられていることに気づいたからである。どうやらカトレアも分かっていたらしい。



「じゃあカトレアと一緒に行っておいで」



「わーい!カトレアお姉ちゃん行こ行こ!」



「ちょっと引っ張らないで…イタタタ…」



 カトレアはラミアに引っ張られて行った。





 その帰り道。未だ興奮おさまらぬアレスとラミア、そしてため息をつくカトレアと共に拠点へ戻っていた。だが、まだストーカーがついてきていることに気づいた俺は、とうとう我慢出来ず振り返って言い放った。



「いい加減に出てきたらどうなんだ」



 アレスとラミアがキョトンとして後方を向く。カトレアは流し目である。

 すると、狭い曲がり角から黒いフードを被った何者かが姿を表す。



「これまでどんな冒険者にも神にもバレなかったんだけどナー、流石に知識の神は隠密の技も知ってたってコト?」



 鼻につく女の声だった。カトレアが無言で身構える。連日洸平(こうへい)による奇襲の危険性を訴えている為、とうとうその時が来たのかと思ったのだろう。

 だが、その声の正体が分かった俺は思いっきり言ってやることにした。





「何の目的だ、早苗(さなえ)





 すると早苗はパーカーを取った。緑に染められたショートヘアーもその姿を曝け出す。



「もしかして伝わってないカナー?今アタシのギルドは新聞社をやってるんダナー。だからキミたちがイイネタにならないか探ってたんだよネ」



 サラッととんでもないことを言われた。現実世界の芸能人はこんな感覚だったのだろうか、と今更ながら振り返る。



「にしても颯斗(ふうと)も悪い子ダネ。どんな眷属取ったのかと思ったら胸の大きい女の子と幼くてちゃっちいお子様を取るなんてサ。ロリコンで変態なんだネ」



「ロリコンとはなんだロリコンとは。そもそもカトレアに関しては最初の眷属だから俺の意志じゃねーよ」



「ア、胸が大きいのは否定しないんダネ。カトレアちゃん、なんかあったノ?」



「まあ…何かはありましたね、確かに」



「カトレアお前わざと言ってるだろ」



 一度隣の席になった時からなのだが、早苗と話すとどうにもペースが乱れて仕方ない。これ以上下手に探られたくない俺はカトレア、アレス、ラミアを押しながら強引に離れる。



「悪いが欠陥新聞社の圧迫取材を受ける気は無い。顔を5回ぐらい洗って出直してこい」



 そして拠点に向かって歩き出すと、後ろから早苗が大声で



「ア、キミたち夜道には気をつけなヨー!」



 と言ってきたので一瞬振り返り



「知らないとでも思ったか」



 と返してまた歩き出す。早苗が大爆笑する声がこだました。

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