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第三話 懇親


「あはは、そりゃ楓斗(ふうと)も災難だったな」



「笑うなよ、一応ちゃんと気にしてるんだから…」



 カトレアと話した日の夜、俺は街の中にある酒場…とは言っても神様は全員未成年なので酒は飲めないが…に涼也(りょうや)と共に来ていた。

 俺たちが転移させられた都市は、途方もない大きさの街を城壁で囲ったような城塞都市だった。人口は数百万は下らないだろう。そこにクラスメイトの人数分…つまり40個ものギルドが作られたことになる。



「涼也は調合の神なんだな。それでもあんまいい顔はされないだろ」



「まあ、そうだなぁ。眷属のユーリにも当たりでは無いって断言されたからな」



「こっちはハズレ枠って言われたんだがな…」



 涼也の眷属…どうやらギルドに入った冒険者のことは眷属と呼ぶらしい…であるユーリと俺の眷属であるカトレアは隣の席で雑談している。決して良い神様を引けた訳ではないという共通項があるからか、それなりに会話も弾んでいるようだ。2人揃ってため息をしたのには…目をつぶってスルーしておこう。



「でもさぁ、知識の神って案外弱くはないんじゃねーの」



「え、涼也はそう思うのか?」



「だってさぁ、調合の神って調合に関する能力だけど、知識の神って特定の範囲に囚われない能力じゃん」



 涼也に言われ、少し考えてみる。確かに知識というのは一つの事象に縛られず、やり方次第では多種多様な方面に力を発揮出来そうではある。ならば…と思案しかけた時、2人の机に乱入してきた者がいた。



「よぉ、下位能力共」



 洸平だった。後ろには眷属らしき男の子がいる。カトレアやユーリよりも若そうだが、小馬鹿にしたような表情からは年齢差以上を加味しても尚、幼いという印象を受けた。



「…邪魔しないでくれないか」



「お?楓斗も反抗する様になったのか。立場の違いってのが分かってんのか?ああん?」



「…立場の違い?」



「分かってねーのか。なら教えてやる。俺は剣術の神を引いた。説明不要なレベルで最強クラスの能力だぜ。お前らには辿り着けない局地のな」



 剣術の神…。カトレア曰く戦闘能力が重視されるこの世界では、純粋に戦闘能力を強化出来る剣術の神は強い能力であることは容易に想像がつく。



「洸平君、俺たちは俺たちなりにのんびりやっていくんだ。邪魔しないで貰えないかな」



 涼也がやんわりと退去を促すが、洸平は承諾しない。



「いーや、俺はカトレアちゃんを貰うまでは引き下がらねーぞ。折角最強になったのに最強の眷属がいなけりゃ意味がないんだからな」



「…!?」



 洸平に睨まれて、俺は後ずさる。洸平はすかさず俺にかけより耳元で囁く。



「カトレアちゃんがお前のところにいたところで宝の持ち腐れだ。俺が精一杯あの子を可愛がってやる。だから譲れ。3ヶ月経ったら譲ると誓え」



「ノー、いいえ、駄目、bad、拒否。まだなんかいるか?」



「いらねぇよ。そっちがその気ならこっちだって策はある。精々楽しみにしておくんだな」



 そう言うと洸平は眷属と共に立ち去る…ように見せかけて振り向き大声で言い放った。



「明日から眷属を増やす時間だぜ!お前らも精々頑張れよ!まあ調合の神が多くて3人、知識の神なんか1人いたら奇跡だろうけどな!」



 大笑いしながら洸平は去っていった。





「神様、すいません…」



「カトレアが謝ることじゃないだろ」



 酒場からギルドへの帰路で、カトレアは開口一番こう言った。



「…カトレア、無理しなくても行きたいならそう言ってくれて良いんだぞ」



「私はあのような躾のなっていない神様の元へは行きたくありません。それならヘンタイ神様の方がマシです」



「まだ引っ張ってるのか…」



 取り敢えずカトレアはまだ俺の眷属でいてくれるらしい。そこだけは安心した。ならばやることは一つ。



「…取り敢えず明日から頑張って眷属を増やそう。あの様子だと明日にも襲ってくるかもしれない」



「…そうですね、頑張りましょう、神様」






 …だが、躾がなっていなくとも物事を正確に見抜いたらしく、洸平の言ったことは翌日その通りになってしまった。

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