第二十五話 成果
楓斗が意識を戻したのはベッドの中だった。まだ視界がぼんやりとしている。洞窟から出た辺りから記憶がないから、気を失っていたのだろうか。
覚醒しきれない中、左右に手を動かすと右手が何かプニプニしたものを握った。ちょっと、太くて、ポカポカしていて、柔らか…!?
「あっ」
何か悪寒がした楓斗はすぐに手を離して飛び上がった。手が触れた方を見ると、ラミアがすやすやと寝ているところだった。さっきまで触れていたのはラミアの太ももだった。無礼なことをした自分を恥じて赤くなっていると、ラミアが
「んにゃ……?」
猫のような声でゆっくり目を開ける。俺の姿を見ると、安心したように微笑んだ。
「神様…いたいとこない?」
「……大丈夫だよ」
「……よかった……」
爽やかでニコッとした表情のラミアを見て、俺はベッドに触って頭をゆっくり撫で始めた。ラミアが嬉しそうにスリスリと寄ってくるので、そのまま時間を忘れたように撫で続けていた。
「いつの間にそんなに仲良くなったんですか?」
俺とラミアが手を繋いで広間に出てきたのを見て、カトレアは不思議そうな不服そうな表情でそう言った。続けてカトレアは手元の資料を開き俺に報告を始めた。
カトレア曰く、俺が寝ている間にカトレアと涼也で早苗のところへ行って報酬の分け合いを済ませてきたらしい。早苗が6割、俺と涼也が2割ずつで決着した。早苗は当初そんなにいらないと断ったそうだが、カトレアと涼也が命の恩人だからとゴリ押したそう。
カトレアの報告が終わり窓の外へ目を向けると、アレスとガロンは敷地内のグラウンドでボール遊びをしているようだ。ガロンが高齢の割に結構動けるのはずっと疑問である。ラミアも俺の元を離れてボール遊びに加わりに行った。
「死人が出なくて良かったですね」
カトレアが俺の隣に立ってそう言ってきた。
「……今回は早苗がいたからなんとかなっただけだ。俺たちだけで解決できるようにしないと」
「……再び特訓の日々ですか」
カトレアはそう言うと、施設の運動場へ向かって歩いて行った。カトレアの後ろ姿は以前にも増して頼もしく見えた。更なる成長が楽しみである。
⭐︎
「貴方を疑う訳じゃないけど……この報告書、本当に本当のこと言ってるの?」
評議会の会議室で、胡桃は相手に疑問を呈する。
「疑うのも無理はないけどネ、少なくともこの目で見聞きした限りその通りダヨ」
「仮に本当なら、大急ぎで各ギルドを結集させて早急に対応を取る必要があるわよ」
「そこら辺の判断をするのは君だからネ」
「分かってるわよ、そのくらい。取り敢えず今日はもう帰ってもらって結構だから」
相手が苦笑いしながら退室した後、胡桃は空を仰ぎながらため息をついた。
「イレギュラーを意図的に起こした奴がいる……か……」
胡桃はまだまだ休めそうにないことを嘆いた。
⭐︎
評議会を後にした早苗は、物思いに耽った顔で街中を歩いていた。
「イレギュラーが起きたってことは……多分彼らが動いた筈だよネ」
誰に聞かせるでもない、小声でぼやいていた。
「胡桃にいつ伝えようカナ…あの子が味方になってくれるなら言っても良いんだけどナ」
早苗がぶつぶつと呟くことには、街の誰も気づかない。
「最悪都市全てが敵に回る案件、胡桃ですらそう簡単に伝えられないからネ……」
都市に雪景色が整い始めようとしている。




