第十話 反抗
カトレアとジャスターがもう一度激突する。今度もまた最初は互角の争いを続ける。ジャスターのニタニタが止まらない。勝利を確信しているのだろう。洸平の周囲を守る眷属にも余裕の表情が生まれている。
「愛する眷属仲間が痛い目に合うのを見たいのかぁ?」
「…見たくないのでこうして戦っているのです」
だが、今回は時間が経ってもジャスターが優位になっていかない。いや寧ろカトレアが少しずつ押し始めた。ジャスターが次第に防戦一方になり始めている。
「なっ、お前何をやりやがったぁ」
「…貴方のスキルぐらい、うちの神様にかかれば一度の戦闘で分かるものです」
そしてジャスターも気づいたらしい。カトレアがとんでもない方法でそのスキルを回避していることに。
「お、お前、目を瞑りながら戦ってんのかぁ!?」
カトレアは瞳を閉じながら、ジャスターを圧倒していく。何故ここまで出来るのか、知識の神である俺にすら読めない。これが天賦の才能というべきものなのだろうか…。
「見つめ合う瞬間が無ければスキルは発動しないでしょう?」
ジャスターのスキルは一度目の戦闘を見ていれば察しがついた。そもそも戦闘に関する神の元に発生するスキルはちょっと調べれば幾らでも分かってはいたが…。
「貴方のスキルは魔眼。見つめあった相手から精神力を奪う能力。剣術の神の元には15%ほどの確率で発生します。対処法としてはクラークの実を食べることや複数人で対応することなどがあげられますが…てっとり早いのは目を瞑って対応することですよね?ジャスターさん?」
「メノアもザグタスも試したけど全く成功しなかったんだぞぉ!今日初めて戦ったお前がなんで出来るんだよぉ!」
ジャスターがそう思うのも無理はない…が、そこはカトレアの才能と言うべきだろう。ずっと稽古の様子を見ていたが、カトレアはその才能に経験が追いついていない状態だった。それがアレスやラミアとの特訓、そして俺の講義を通してどんどんと成長していくのが分かった。
カトレアはまるで蝶のように鮮やかに舞い、ジャスターを圧倒していく。アレスとラミアは姉のような存在が活躍する様を見てキャッキャしている。なんというか、戦闘スキルが上がっても幼さを失わない2人は何処までも微笑ましい。
「ぐあぁ!?」
遂にジャスターにカトレアの一撃が刺さる。ジャスターは吹き飛び、洸平の目の前に倒れ込んだ。
すると洸平はイライラを隠しもしないまま、ジャスターの腹を思いっきり蹴り始めた。洸平の周りにいた眷属は畏怖し距離を取り始める。ジャスターの悶絶する声が洞窟内に響く。
「ざっけんなよお前!俺がお前にどれだけの投資をしてここまで強くさせたと思ってるんだ!」
色々救いようのない奴だな…と俺は思ったが、そう思っていた頃には洸平をアレスが吹き飛ばしていた。洸平は奥に倒れ込む。
「ジャスター兄ちゃんを虐めるな!」
そう言ってジャスターと洸平の間に入り込んで通せんぼを始めた。すると洸平の眷属もアレスの周りに集い始める。
「そ、そうだ神様!団長は悪くありません!」
「な、殴るなら私達を殴って下さい!」
洸平が血の引いたような表情になる。恐らくあいつはこれまで反抗されたことは無かったのだろう。
俺はアレス達の元につき、洸平に向かって言い放った。
「これがお前がいう、最強のギルドか?」
…我ながら厨二臭い、と感じるセリフだな。




