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5.公爵子息4


「お前ときたら……やってくれたな」


「なんのことですか?」


「昨日の茶会の事だ!各方面から苦情の嵐だったぞ。『公爵家の跡取り教育は独特ですね』と嫌味付きでな。お前から新しい婚約者を紹介されたが礼儀が全く出来ていない上に当たり前のように()()声を掛けられた。しかも名前だけしか名乗らなかったので何者なのか判断がつかなかった。貴族なのかそうでないのか、とな。後から詳しく調べてみたら格下の子爵令嬢だという。公爵家は階級制度の撤廃でも始めるおつもりか、とも言われたぞ?」


「ちょ、ちょっと待ってください!」


「公爵家は今まで()()()キャロライン嬢がいたからこそ嫡男の奇行を未然に防げていたのだとまで言われた。嫡男はキャロライン嬢に頼り過ぎて感覚が狂い、おかしな女に入れ込んでしまったのではないかとな。高位貴族の常識が嫡男にも新しい婚約者にも備わっていない。ここまで酷いと次世代からの付き合いは考えなければならないと嫌味を言われたぞ。いや、これが嫌味ならまだ救いがあるな。皆、真剣に探りを入れてきた。ここまでで、お前が学園でどういう態度を取っていたのか分かるというものだ」


「一体何の話ですか!?」


「ブライアン。学園で何を学んできた?まさか下位貴族の女と戯れていただけではないだろう」


「なんですかそれは!」


「学園は『社交界』も同然だ。お前の交友に口出しをしてこなかったのは親しい男友達が()()()()()()()ばかりだったからだ!いや、この時点でおかしいと感じなかった私の落ち度かもしれん。お前が()()()()()としか親しくしていなかったとはな……」


「ち……父上?」


「まさか学園で交流の幅を広げられなかったとは……な。考えもしなかった」


「あの……?」


「茶会で他国の女性が出席していたのを覚えているか? 民族衣装で参加していた女性だ」


「え? ええ」


「お前達が何も知らずに勝手に小国出身と思い込んでいた女性は王太子殿下の婚約者だ。この国よりも遥かに大国の王女殿下だ。それを……」


「なっ!? 待ってください!そんな大物が出席するなんて聞いていませんよ!!何かの間違いでは!?」


「王女殿下はキャロライン嬢の婚約解消の件を知って確認するため、あえて名前を伏せて参加していた。このことは王家も了承されている」


「確認?な、何故……王女殿下が……」


「仲の良い()()がいきなり婚約解消をしたと聞いたら何があったのか知りたいと思っても不思議はないだろう」


「は!?従妹?」


「ブライアン……まさかお前知らなかったのか?キャロライン嬢の母君はロリア王国の公爵家令嬢だ。王女殿下の母君である王妃殿下とは姉妹だ」


「そ、そんな!」


「大方、お前のバカさ加減を確認しにきたのだろう」

 

 父上は溜息をついた。

 溜息をつきたいのは私の方だ。

 そんな大物が出席するのなら事前に知らせるべきだろうに。非常識なのはロリア王国の方じゃないか!


「お前のお陰で王太子の婚約が取り止めになりそうだ。王女殿下曰く『長年の婚約者に対して謝罪も説明もなく婚約という契約を軽々しく反故にする者がいる国に嫁ぐのは不安に感じる』と仰ってな」


「と、取り成しをすればいいではないですか!」


「誰に取り成してもらうつもりだ? まさか、キャロライン嬢とは言うなよ」


 睨みつけられた。

 父上の目は失望と共に侮蔑が含まれている事に気付き、口を閉じるしかなかった。


 この国では見掛けない民族衣装を着ていた女性は茶会でも目立っていた。

 だが、それだけで何処の誰なのか判断しろという方が難しいだろう。小国出身の貴族が下位貴族に嫁いできたと勘違いしても無理ない。

 だから……。

 まさか、まさか王太子殿下の婚約者だったなんて!

 知らなかったんだ!


 王太子殿下の婚約者は異国の王女。この国よりも大国の王女殿下である事は知っていたが姿を見た事は無い。絵姿だって見た事がないんだ。仕方ないだろう!






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― 新着の感想 ―
[一言] この子息その場しのぎの反論と取り繕いは出来てたっぽいから、キャロライン嬢のフォローが多々はいってたんだろうな……と思わされる。 父上様の目をもってしても見抜けないレベルのフォローで誤魔化され…
[一言] とりあえず、王太子の婚約者が大国の人間と知っているなら、その大国の民族衣装くらい頭に入れときなよとしか…… あと、そもそも小国の出身者と思ったとしても、上流階級の茶会に出席出来る=国に重要…
[一言] まあ父親が息子の成長ぶりをちゃんと見てなかったのはそうなんだろうけど、友人がみんな良いとこの出で、成績も普通なのなら信用しちゃうかもね。 ブライアン君、仮に小国の格下としても大事な交易がある…
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