29話 VS "サイレント" ①
長いですがよかったら最後まで読んでください。
評価、ブックマークも良かったらお願いします。
29話 VS "サイレント" ①
「やっぱり、だめか」
俺は自分が撃った銃弾が相手に当たらなかったのを見てそう呟いた。
さすがにこの距離は遠すぎるか、仕方がないが威力が落ちてる。
「さすがですね、サイレント少佐」
「おい、その名前で呼ばないでくれ、恥ずかしい」
「いいじゃないですか、尊敬しますよ。あだ名が付くなんて」
「いや、まあいいや」
”サイレント”それが、俺の異名だ。
音が聞こえない距離から狙撃ができる事からそんな風に呼ばれるようになった。
あだ名が付くなんて大層な事は正直恥ずかしいが、俺の部下達は尊敬を込めて呼んでくれるが何とかならないかと考えているが、無理そうだ。
だが、そんな自分の事は今はいい。
俺はリングを取り出して、
「全員、目標は先程の地点から物陰に移動、D6に移動、今からその場所を送る」
そう言って、近くにいる一人の部下に目をやった。
部かは自分の目に反応して、直ぐにリングの操作を行い、
「完了しました」
言い、相手の場所を全部隊に送ってもらった。
「では当初の作戦通り、相手4人をそのまま囲んで捕える。自分はサポートにまわる」
『『『『了解』』』』
それぞれの部隊の隊長から返事が返ってきた。
「でも、良いんですか?あの場面少佐一人で決められたかもしれないじゃないですか」
そう、部下が言った。
事実、残り三人はわからないが、足を狙わず頭を狙っていたら一人は確実にやれた。
だが、一人やったからって何だというんだ。
残りをあの場で仕留められる可能性は全くない。
それに、
「確かドラグノフ新兵だったよね?」
「はい」
「あの4人は今後のために生け捕りだ。しかも、一人はエルフだったしなおさらな。訓練所で優秀な成績を収めたんだろ君?なら理由は分かるよね?」
「はい」
「最初に足を狙った理由は?」
「それは相手が仲間に対して躊躇するのを狙うためです」
「そうだな。実際、少年を撃った後に仲間の一人の男がその少年を助けるように蹴っていた」
そのせいで避けられもしたが、単純に倒すよりは色々と狙える。
「君は訓練所の成績で1位、特に狙撃の面を買われて僕の所に来たのかもしれない。そういう競争に勝ってきたからこそ個人の成績に拘っているのだろうね」
ドラグノフ新兵とはまだ短い付き合いだが、そう言った勝気な性格がある。
上昇気流が高いともいえ、良い新兵が入ってきたが、そう言う性格は”ときとば”だな。
少なくともこの場合にはその性格はいらないとも思う。
「ドラグノフ新兵も分かる時が来るかもしれないが、僕たちは主役じゃなくて部隊を動かす一つの駒にすぎないよ。たとえ、僕のように異名を付けられて恐れられてもね」
ドラグノフ新兵の方を向いてそう言い、
「個人の成績をどれだけ積んだとしても主役である部隊が負ければそんな成績は何の意味もない物になる」
「そうですね」
「君のさっきの”一人で決める”という考えはこの場でいらないよ」
「すっ、すみません」
新兵に対して僕は強く言い、少し萎縮させてしまった。
「だから、君が目指すのは両方だ。主役である部隊を勝たせて自身の成績を積む。僕はそうやったから恥ずかしい異名が付いたんだ。君もそれができると上が判断したから今そんな事が出来た僕の側にいるんだよ」
そう言うと、
「はっ、はい。頑張ります」
と、新兵は顔を上げて大きく答えた。
「じゃあ、そんな君に質問だ。優れた狙撃手はどんな狙撃手だ?」
そんな質問を新兵に尋ねると、彼は少し深く考えて、
「やっぱり、少佐のようにより遠くから命中率の高い人が優れた狙撃手なのでは」
といった答えが返ってきた。
「それが正しい答えかもね。でも、僕が思う優れた狙撃手ってのは、んっ!!」
新兵に僕が思う事を話そうとした時、目標が動いた。
「この話はまた後でだ」
俺は急いで目に付けている”コンタクト”を操作を始めた。
この”コンタクト”はスコープの様な役割でああるが、生産や操作の面で大量に作る事ができず、存在自体そこまで知られていない。
俺はその”コンタクト”を使って動いた人物に合わせた。
エルフでも獣人でも子供でもない、4人の中で一番特徴がなかった男がこちらの方へと走ってきているのが確認できた。
「こっちに何で?」
新兵は驚き、声を出した。
「まあ3発も撃っちゃたし、分かる奴なら大まかな場所はバレちゃうな」
「そうですけど、何でわざわざこっちに」
不思議なのはそっちの方だろう。
狙撃手に勝つために近づくのは有効な手ではある。
結局は遠距離の武器、近距離の準備はしていても練度は確実に落ちる。
だが、あくまで相手、狙撃手にバレていない時に限る。
ましてやバレてから隠密で来るのではなく、こんな馬鹿正直に突っ込んで来うるのは完全に悪手である。
逆にこっちの方角とは逆の方へと行くと読んで相手を囲んで捕獲、そう作戦を立ててたが、まさかこっちに一人全力で来るか。
悪手ではあるが、
「何が狙い何ですか?」
何を考えてるかも全くわからない。
だが、そんな事を言ってもられない。
再びリングを取り出し、
「現在目標の一人がパーティーが離れこちらに走ってきている。そのため、一旦全部隊そのばで待機し、残りの三人を補足し続けるように」
と指示を出した。
「良いんですか、それで?三人の方をそのまま囲めばいいのでは?おそらく一人の方は囮でしょうし」
作戦をそのまま実行すればいいのではないかと新兵は考え、言ってきた。
「うん、その考えは最もだと思うよ。でも、それは相手が魔力のある人間だと通じなくなるよ」
そう返した。
「僕たちは常に最悪の状況という奴を考えなきゃいけないんだよ」
「じゃあ、一人の方ではなく三人の方が囮だと?それは考えすぎでは?」
「そうだね。考えすぎだと思う。まあ、答えの出せない2択でも周りの状況と合わせて出さなきゃいけない場合もあるけど、今回は違う。今回の最悪の状況って奴はどちらも囮だった場合さ」
「どちらも囮って、それこそ考えすぎゃじゃないですか?というより、ありえないですよ」
新兵は僕に対してそう言い、
「それが困った事にありえない事じゃないんだよ」
困ったように答えた。
「そんな今までならありえなかった事をできるようにしてしまうのが、魔法なんだ」
「両方を囮にすることが出来ると?」
「うん、今回の場合は”転送魔法”で可能だね」
新兵は少し考え、
「つまり、どっちかに部隊を集めたらもう一方の方に逃げると?」
「それができてしまう」
それでも、まだいくつか拭えない問題があるのも事実。
例えば、なぜもう一方は動かずに留まるのかとか、一人がこっちに全力で走ってくるのかとか。
考えすぎても分からない事が多いいのも事実。
「じゃあ、部隊を分けて、どっちも囲むのが正しいのでは」
「その考えが正しいと思う。でも、少し遅かったんだ」
新兵の判断にそう答えた。
「相手が後手に回るのを嫌ったのかどうかわからないけど、相手の行動が思ったより早かった。走ってきている彼を見てみるんだ」
そう言って、新兵に双眼鏡を渡し、それを覗き込んだ。
「んっ、速くないですか?」
「計算を頼んだところ、8km離れてるここまで20分も掛からないみたいだ」
「これも魔法ですか?」
頷いて返した。
どんなに優秀な新兵でも、実際に魔法に触れて初めてその恐ろしさを知る事になる。
見る事は、信じる事だ。
「包囲する前に、あの速さで抜け出してしまった。もう、彼を囲むのは間に合わなくなってしまった」
「じゃあ、やばくないですか?逃げられちゃいますよ」
「包囲こそできなくても、大きな範囲ではまだできているから、逃げられる事はないよ」
そう言いながら、再び銃を構え直した。
「それに、こっちに来てるのなら好都合だ。どんな作戦だろうと撃てば潰せるからね」
そう、力強く答えた。
「なら、早く撃ってくださいよ。少佐の射程範囲内じゃないですか」
と、新兵は焦るように言って来た。
「いいや、まだダメだよ。もっと引きつけなきゃ」
「何故ですか?」
「弾の速度は秒速1.2km、大体マッハ4ってとこだね。彼にたどり着くまで7秒の時差がある。今の相手のように木何かを使って不規則に速く動き回っている相手を当てるのは難しい、さすがにね」
「じゃあどうするんですか?」
「簡単さ、時差がほぼない即着する1.2kmまで近づけるだけさ」
スナイパーとして一番怖いのは位置がバレる事だ。
無暗に撃って外して、場所が知られるのはダメだ。
だからこそ、一発で決めたい。
「そんなに近づけれて大丈夫なんですか?」
そんな不安そうな新兵の言葉に、今持っている銃を軽くさすって
「即着の距離、音が聞こえた時にはもう当たってる。相手の防御も間に合わない。そんな距離、相手がいくら動き回ろうが外す気がしない。問題ないよ」
僕は答え、銃を構え準備をした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
距離、残り2km。
方向は完全にこっちというわけではなく、少しずれているが、確実に相手は近づいてきている。
部下から残りの三人が動いたとの報告は来てない。
狙いが何かわからない怖さがあるにはある。
だが、焦る必要も恐れる必要も何もない。
奴を撃ち抜けば全てが終わる。
俺は静かに息を吸い込んで、深く吐いた。
1.5。
いつも通りだ、周りも良く見え、音も聞こえる。
肌の感覚も冴えてる。
目で見えてない新兵の位置もハッキリと分かる。
あー、いつも通りだ。
1.3km。
そう、いつも通りだ。
これから撃つ弾が当たって、相手はその場に倒れる。
今回も変わらない。
1.2km
ドッンッ!!
砲撃音に近い音が響いた。
そして、レンズを通して見ていた相手の左足に当たり相手は吹っ飛んだ。
即着、射程範囲に敵が入ったと同時に引き金を引いた。
「さっ、さすがです。狙い通り足にヒットさせましたよ。相手もすごい距離飛びましたよ」
新兵は興奮気味に言った。
んっ?
吹っ飛んだ?
何かがおかしい。
銃で撃たれて吹っ飛ぶ何て状況は今までなかった。
ハンマーで殴ったってわけでもないのに。
急いで相手を探し始め、見つける事ができた。
物陰に隠れて全身を見る事は出来なかったが、左足を確認する事ができた。
だが、そこには流れているはずの血が流れていなかった。
なぜだ?
確かに左足に銃は当たっていたはずなのに。
いや、違う。
単純に相手に当たっただけで、貫通できなかったって事だ。
それに、さっき持っていなかた物を確認できだ。
「あれは、銃?」
パン!
小さくはあるが乾いた音が聞こえていた。
ただ、相手が撃った方向は僕たちがいる方向がずれていてしかも、その先は上空でズレていた。
何が狙いか全くわからなかった。
バーン!
だが、それも上空に上がったものが爆発して分かった。
突然、レンズを通しての映像がスノーノイズが起こり、通信機にもノイズが混じっていった。
”EA(電子攻撃)”を僕たちは受けたんだ。
それによって、今使っていた電子機器を妨害されてしまった。
「やられた」
相手の狙いは僕、狙撃手ではなく、EAによる攻撃だったんだ。
ここは異世界の森、元々通信状態が良い場所ではなく、作戦のために急遽通信設備を整備していった。
そのせいか、そういった攻撃には滅法弱い。
彼らはおそらく魔法によって、その設備がある場所を特定して、攻撃範囲まで近づくためにこちらに向かってきていた。
そして、狙い通り通信機器の妨害を行った。
何で、異世界人が銃を持っている。
EAができる道具がある。
そんな腑に落ちない部分もあるが、とにかく僕たちは一杯食わされてしまったんだ奴に。
「新兵さっきの質問は覚えてる?」
「えっ?いきなりなんですか?」
「優れた狙撃者ってどんな奴かってのだよ」
さっきの質問を僕はぶり返した。
「それがどうしたんですか?」
「君は確か射程距離や命中率の事を挙げてたね」
「あっ、はい」
「僕の持論だけど、その二つではないと思うんだ」
新兵に僕は言い、
「優れた狙撃手ってのはココ一番で決める事だよ」
そう続けた。
「命中率が99%凄腕スナイパーでもココ一番で外すような奴よりも、例え命中率が1%だとしてもココ一番、決めなきゃいけない所でその1%を引く者が優れた狙撃手だと僕は思うよ」
自分自身の持論を新兵に説明をした。
少し暴論かもしれないけど、本番での一発、戦況を変える事ができる一発を撃てなきゃ優れたスナイパーとは言えないと僕は思っているし、そう言い続けている。
だから、
「今この場では僕はダメって事だ」
「いや、そんな事はないかと。だって、当てたわけですし」
新兵は少し控えめに言ってきたが、
「でも、相手を倒す事はできなかった」
それを否定した。
どんなに言い訳を並べても、相手に防がれてEA攻撃を許してしまった事実、失態は変わらない。
「でもでも、何で防げたんですかね?魔法を唱える暇はないはずですし」
新兵はどこか納得いかないようで、焦るように言った。
彼目線は撃った弾が当たって初めて銃声が聞こえる時差がある。
それなのに銃弾を防げた。
この20分間ずっと”結界魔法”を張った?
それこそ、ありえない。
可能性があるなら、
「事前に”結界魔法”の準備をしておき、僕が撃ったと同時に”無口頭呪文”で展開したって所だろうね」
と、予測した。
新兵は不思議そうな顔をしていた。
まるで、そんな事できるのか?みたいな顔だ。
だが、結論から言うと、
「それができてしまうだよ。少し勉強不足だったね」
できてしまう。
事前に魔法を唱えて置き、何かのキッカケで魔法を展開させる方法がある。
まあ、基本的にはこっちの世界で言う地雷のような”トラップ系の魔法”で行われているが、理論上は別の魔法にも応用ができる。
実際に”結界魔法”でされたのは初めてだが、そんな報告自体は上がっている。
だが、この”トラップ系の魔法”の理論を他の魔法で応用するのは非常に高度だ。
多分、あのエルフの仕業だろう。
これだけ高度な魔法を使えるなら、あのエルフは相当な魔術師だ。
「でも、そんなのしょうがないじゃないですか?少佐はやれる事はやりましたよ」
銃弾を防がれた説明を聞いて、新兵は余計に納得できないようだ。
だが、それが現実だった。
「”しょうがない”って言葉はダメだよ。自分が仲間が死んでからも同じ事が言えるのかい?」
再び強く新兵に言った。
「言い訳の前にまずはしっかりと認めないとね。僕の失敗を、そして今この段階では僕よりも彼の方が優れたスナイパーという事を認めないとね」
悔しい。
自分の異名こそ恥ずかしい物だが、自分の腕に自信があるのは事実だ。
それで負けたんだ。
悔しいに決まっている。
「でも、少し何か勘違いしてるかもしれないけど、負ける気はないよ。相手の方が強くても、上回っているかもしれないけど、僕たちは負けないからね」
そう強く言い、
「まあ。今回の新兵の仕事はその瞬間をしっかりと見て学ぶ事だから、その目に焼き付けてね。僕たちの勝ちを」
再び銃を強く握りしめた。
次回は未定です。
Twitterや活動報告で適当に次回については更新してます。
Twitter:@tScRxzYLtrcGXnG
良かったらフォローお願いします。




