27話 勇者
就活が一旦落ち着いて来たのでぼちぼち上げていくと思います。
長いですがよかったら最後まで読んでください。
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27話 勇者
「”勇者の救出”!?」
コウジがそう言った事に対して、俺は驚いた声を出した。
なんでそんな事をそもそも俺が軍にいた時には勇者を倒したという報告こそあっても、捕えたという報告は全く聞いた覚えがない。
「捕えられているのか、勇者が?」
「まあ、そういう反応を取るよな。軍にいたならなおさら」
コウジが言った事に対して、俺はただ頷いた。
「まあ、詳しい話は奴が来てからするにして、勇者の一人が現在捕まっているのは紛れもない事実だ」
まさか、そんな事が起きてたなんて、やっぱり末端の新兵には知らされない事は多い。
「ともかく”勇者の救出”、これが”魔王の死体”回収をする上で大切だと俺は思う」
そうなのか?
そもそも、”勇者の救出”自体の難易度が高い気もする。
遠回りになるんじゃないか?
「とりあえず、詳しい事は話を聞いてからでいいだろう」
そうだな。
話を聞いてから決めればいいか。
とりあえず、コウジに言った事に対して俺は軽く頷いた。
「それはそうと勇者を倒すだけでなく、捕まえたなんて事までしてたなんて」
俺が本音を少し漏らすと、
「勇者を倒した?へー、軍もそこまでやるようになったのか」
そう、コウジさんは驚いていた。
「知らなかったのか?」
「さすがにな。昔は軍の研究所に配属されてたから、当時の機密事項は知ってたが、抜けてたからの事は流石に知らん」
そうだよな。
俺も軍に抜けた今の事は知らないしな。
「どうせヨウが来るまで暇なんだから、少し教えてくれよ。ウリも気になるだろ勇者が倒された話」
「う、まあほんの少しだけ、ちょっと」
尋ねられたウリはそう答えた。
「教えてくれと言われても、俺は詳しい事は知らないぞ」
「そうなのか?」
「ああ、軍の”プレデター”って言われる新部隊が倒したって情報が流れてきただけだからな」
俺は自分が知っている簡単な情報を言った。
「”プレデター”?」
コウジさんは繰り返して部隊名を言うと、少し考え込むと、
「結果まで出すなんて、研究所もさすがだな」
そう言った。
結果?
「知ってるのか、”プレデター”を?」
俺の問いに対して、コウジは頷いた。
「気になるか?」
俺は頷いた。
コウジはウリと呼ばれる少年の方にも目を向けると、頷きが返ってきた。
そして、目の前に出された飲み物を一回飲み、一息置いてから話を始めた。
「この戦争が始まったのは何年前か分かるよな?」
「15年前」
俺はコウジの問題に対して簡単に答えた。
「その通り。だが、その前から異世界との間位にはヒビが生じて、政府は戦争が始まる事を危惧していた」
当時、生まれたばかりの俺にはその状況はわからないが、多分荒れていたんだろう。
「そして、軍の兵器は相手に有効なのか、魔法の対策はできるのかなどの不安材料があった。その中に一つ人員があった」
「人員?」
「ああ、実際にそれぞれに軍があったが、世界が一つになろうとしていたこともあって、それ以前に小さないざこざこそあっても戦争という名目の兵器を使った戦いもなかった」
確かに歴史の授業でも最後に起きた戦いは随分前だった気がする。
「異世界人は常に魔獣と戦いを続けていた。その経験の差は大きいのではないかと考える者も少なくなかった」
言われればそうかもしれない。
向こうが来てからも、異世界人の冒険者の仕事は続き、魔獣の討伐を行っていたとは聞いた。
こと魔獣に関しては軍は一歩遅れていた印象があったらしい、ともかく経験の差はあったのかもしれない。
「兵隊の育成には時間が掛かる。軍にいたのならわかるだろ?」
「ああ」
俺は軍の訓練所に2年いたが、その前に教養を学ぶ過程があった、小中と昔に言われていた時にも学んでいた。
つまり、育成には11年も掛かっている事になる。
「長年掛けて育成したとしても、全員が優秀な兵士とは限らない」
全員が同じレベルにはなっていなかったのは訓練所でわかる。
それぞれのレベルは違ったが、それが個性という奴だ。
「そこで政府は考えた。優秀な兵士を生もうと」
生む?
「簡単に言うとクローン技術って奴だよ。優秀な兵士の遺伝子を合わせて子供を作り、そいつを0から育てる計画を立ててたんだ」
子供を作って、教育?
つまり、この戦争のためだけに子供を作るって事だろ、その計画。
「狂ってると思うか?」
俺はそれに対して何も言う事は出来なかった。
「俺はの研究を知ってるだろ?要は遺伝子に関係する研究だ。俺は優秀だから上からこの計画の要請が掛かってたんだ」
そして、この話の始まりからその計画によって作られる予定の子供、いや作られたのが
「”プレデター”ってわけか」
「ああ、そうして作った子供に教育を施し、部隊を作る。その計画名が”プレデター”だった。まあ、部隊名が同じだし十中八九その計画の産物だろうな」
クローン人間、人造兵器、それが勇者殺しを成し遂げた部隊の正体か。
そいつはめでたいな。
「そんな事私達も初めて聞きましたよ」
”プレデター”につての話が一旦終わると、確か名前がアキと呼ばれていた女性がコウジに対して言った。
「まあ、聞かれなかったし、第一俺の興味はあくまで自分の研究だからな」
「コウジさんはそう言う人でした」
何か納得を様子をし、
「それにしても、政府はよくそんな事をやろうとしましたね」
と、続けて言った。
「そうだな。実際俺がいた時は反対派もいたし、ひと昔前なら大問題になっているだろうな」
コウジはそう答え、
「何が問題になるんですか?」
と、ウリは疑問を挙げた。
フレアの方を軽く確認すると、同様に良くわかっていないみたいだ。
「問題になるのは倫理観って奴だな」
コウジはウリの疑問に対してそう答えた。
「クローン技術自体そこまで難しい物って訳でもないんだ。実際20世紀、要は100年以上前に”ドリー”と名付けられたクローン羊が誕生していた。だが、良く問題として挙げられていたのは倫理観、生命への冒涜って奴だ。科学の力で命を創り出すのは如何なものかって事だな」
俺もそこら辺の詳しい事は良くわかっていなかったが、子供を造るという話を聞いてあまり良く思わなかった。
多分、そういう事なんだろう。
「この倫理観って奴は戦争に起因して、ルールなんかも作られたりしているんだ。例えば、民間人の攻撃は禁止されてたり、拷問、生物兵器の禁止とかな」
禁止?
「元軍人でも知らないみたいだなこういったルールを」
「ああ、それにここにくるまでに日本にウイルス兵器を撒くって話も聞いてし、実際に撒かれた話も聞いてる。とてもやないが守られているとは思えない」
そう、俺はここに来る前に生物兵器について聞いていた。
俺が知る限り二つのルールが破られている事になる。
「その通り、ルールはあるが守られていないそれが今の現状だ。その理由は簡単だ、上は異世界人を人としてみてないからだ」
そう言って、ウリと呼ばれる少年とフレアを指さしながら、
「つまり、ウリもそこの獣人のお嬢ちゃんを人として見てない。異世界人をこの世界を征服しにきた侵略者、いや下手したら同じ命にも見てないのかもな、だから倫理観を守る必要なくこんな行動ができるようになったんだ」
コウジさんは俺達にそう説明した。
「上はこの戦争を聖戦と見てるんだよ。俺から言わせれば、これが第三次って奴だけどよ」
そう言ったコウジさんはどこか寂し気な顔をしている感じがした。
「皮肉なもんだよ。今までは良くも悪くも倫理観によって今まで進んでいなかった技術はたくさんあったが、この戦争を引き金に人類の技術は一気に加速し始めたよ」
俺は戦争前の事は良く知らないから何とも言えないが、コウジさんの中ではそう思っているみたいだ。
だから、多分そうなのかも知れない。
ガチャ、
そんな話をしていると、俺らが来た場所とは別のドアが開く音が聞こえた。
「おっ、いいタイミングできたな」
その音を聞いて、コウジさんは何かを確信し、少年の方に目をやり、少年は音の鳴った方へと向かった。
「ヨウって人が来たのか?大丈夫なのか?」
「ああ、いつも俺達は隠してある扉で出入りしてるからな。それにウリの索敵魔法もあるから間違いないだろう」
俺達が敵認識されたのはそのせいだろう。
一応警戒はしたが、話を聞く限りは大丈夫そうだ。
しばらく出された飲み物を飲んで待っていると、
コン、コン
とドアがノックされ、開くと同時に少年が部屋に戻ってきた。
そして後ろには綺麗な女性が入ってきた。
青い目と長い金髪も特徴的だが、一番はその伸長だろう。
俺は大体175cmと大きいとは思うが、そんな俺よりも高い伸長を持っている。
この人がヨウ、”勇者の救出”という物に関わっている人。
コウジさんの方に座り、一息つくと、
「初めまして、”ヨウ・シトロン”です。話はウリから大まかに聞いてます」
そう、自己紹介をされた。
「ただ、コウジさん今回の話はあまりにも急というより無謀なのでは?」
と、早々にそう言った。
内容を知らない俺には何とも言えな事かもしれないが、そう思うのが当然かもしれない。
「だが、助けたいんだろ、勇者を?」
そう言われて頷いていた。
「しかも、その勇者の命は残りわずか。人手は君とウリの二人だけ、どうせその絶望的な状況でもやるつもりだったんだろう?」
「んっ、ウリはともかく私一人でもやるつもりでは」
と、図星をつかれたような声と共にそう答えた。
「そこに二人いや、俺も追加だ。後、アキはどうするんだ?」
そう、後ろに目をやり助手の人に聞くと、
「コウジさんがやるのであれば私も」
と、同意し、
「4人、計6人というわけになる。不可能には変わりないが、可能性は上がるだろ」
そう話した。
「待て待て待て、俺はその”勇者の救出”の意味について聞いてから協力するから決める。頭数に入れられても困る」
だが、俺はそれを否定した。
それに、まだ否定しなきゃいけないこともある。
だが、
「だってよ」
と、コウジさんがヨウさんに話を振って、遮られてしまった。
その振りに対して、少し迷っている感じがしたが、
「わかりました。でも、何を話せばいいんですか?」
何か納得した様だ。
「彼は”魔王の死体”に用があってな。俺はそのために勇者の力が必要だと考えてるんだ」
「”魔王の死体”?でも、そんなの彼は協力しないんじゃ?」
「さあ、俺はそいつの事は良く知らないが、彼の目的と勇者の目的は同じみたいだぞ」
「という事は彼も?」
「ああ、まあ詳しい事はまだいいだろう。今はとりあえず勇者が捕らえられたわけとその力を教えてやってくれ、そうすれば彼も理解すると思う」
二人はそんな話をした。
そして、
「私は捕えられている勇者と同じパーティーだった魔法使いって奴です」
ヨウさんは俺達に自分の事を話始めた。
「勇者の名前は”ライチ・シルヴァー”、彼はこの戦いに対して王政に反発をしてパーティーの一人は殺され、私以外は捕まりました」
要はその勇者は俺達の世界で言う、革命軍って奴か。
異世界にもそう言う反発はあったのか、しかも勇者、向こうの最大勢力の一人がな。
「彼が反発した詳しい理由はわかりませんが、多分それは彼が持つ加護の影響だと思います」
加護、各勇者が一つずつ持っている物。
神から祝福、俺達の世界でいうギリシャ神話のオリュンポス十二神から与えられたものらしい。
「加護は代々勇者たちに継承されるもので、基本的には40歳前後で加護を移していきます。彼も10年前にヘルヘルメスの加護を継承しました」
加護、それが勇者の化け物みたいな力の源、その影響でその人は反発をしたらしい。
「多分加護の認識を力の継承と感じている思います」
そう言われ、俺は頷いたし、そうだと思っている。
「その認識で合ってはいますが、それでは足りません。継承されるのは力だけではなく、先代の記憶まで継承されます」
記憶!?
それって、
「今まで全部の?確か勇者って千年以上前からいるんだろ?」
今までの過去全部を知っているって、相当凄いというかやばい事なんじゃないか、色々と。
「いや、勇者が継承前に亡くなると、それ以前の記憶は全部途切れるので全てという事ではないです」
俺の推測とは少し違った物であった。
ただ、それでも十分な物であった。
多分コウジさんが言ってたのはこの事だろう。
「彼は元々、この戦い事態反対気味ではあった物の割り切っていました。でも継承後にその態度を変えました。私は先代の記憶から何かを知ったから彼は反抗したのだと思ってます」
先代の記憶から、異世界側が何かをしていたのを知った。
勇者はその事が気に食わなかったって事か。
でも、俺にとって重要なのはそこではなく過去を知っているという事。
つまり、
「魔物の領土の事をその勇者は良く知っているという事か」
俺はそう考えて、言うと、
「ああ、そうだよな。俺もそう思っているけど」
と、ヨウさんに確認を取るようにコウジさんは聞いた。
「ええ、先代の勇者と一緒に魔王退治に行ったからそれは確かよ」
ん?
先代の勇者と一緒?
魔王退治は異世界と混合する前に終わってるはずだから30年前の話だろ。
この人は見た目的には俺より少し上くらいだと思うけど、
「私はエルフって奴よ。長寿なの」
俺が不思議がっているとヨウさんはそう答えた。
でも、
「普通だぞ、耳」
ヨウさんは左耳は髪で隠れているが、右耳は見えている。
その耳は人間、俺達と同じような耳の形をしている。
ゴーストタウンでのクジョウさんの屋敷で見たエルフの耳ではなかった。
「私は”ハーフエルフ”で半分は人の血なのよ」
そう言うのもあるのか。
じゃあ隠れている耳がエルフ耳って奴なのかと思っていると、ヨウさんは髪をたくし上げた。
「んっ!!」
だが、そこにはあるはずの左耳がなかった。
「一応これでも”ハーフエルフ”の有名人でね。反対派の一人として、王政には追われてる身、隠れるために切り落としたの」
大胆な事をするが、重要なのはそこじゃない。
問題なのは”勇者の救出”のメリットって奴だ。
「大体話は分かった。要は勇者を助ける事で魔物の領土の情報が詳しく手に入るって事だろ?」
「ああ、でもそれは付属に過ぎない」
コウジさんにとってはそこではないみたいだった。
「重要なのは君と勇者の目的が一緒だという事だ。勇者を助け君の作戦に同意すれば敵の最強の戦力の一つを手にいれる事になる」
そう言い、ヨウさんの方を指して、
「しかも、勇者が協力すればパーティーメンバーも協力するだろう。そうだよな?」
「まあ、はい。他に捕らえられた二人も協力すると思います」
ヨウさんはそう答えた。
「彼女もダイヤモンドの称号持ちだ。実力は折り紙つきって奴だな。まあ、助けても協力するとは限らないが、やる価値はあるんじゃないか?」
コウジさんのいう通りだ。
色々とリスクの高いものだが、リターンも高い。
第一俺一人で”魔王の死体”回収は不可能、自殺志願者も良いところだった。
だったら、
「俺もそれにできる限り協力しよう」
答えはこれだった。
「良し、面白くなりそうだ」
コウジさんは嬉しそうにしていた。
「でも、戦力的にはどうなんですか?所詮”ヒューマノイド”の一人、コウジみたいな頭があるわけもないですし」
少年ウリはそう言った。
”ヒューマノイド”は異世界人達が俺達の人類を指す言葉。
元々、向こうの世界には人間に似た魔物を指していた言葉らしい。
少年が言いたい事はわからんでもない。
俺達の強みは武器と集団による連携、個人じゃ大したことがない。
「でも、ウリお前は彼に負けただろ。それに最近まで軍人だったなら俺達よりも政府の近況はわかっている。十分な戦力だろ」
コウジさんがそう言うと、少年は黙り、
「そうかもしれないわね」
ヨウさんはそう言った。
「ああ、じゃあ決まりだな」
俺が加わる事に全員が納得したようだが、
「その前に一つ条件がある」
俺にはまだ納得できないことがある。
「何だ条件って?」
俺はフレアの頭に手を載せて、
「この子をできるだけ安全な所に返してやりたい。それを手伝ってくれ」
と、俺は条件を付けた。
「どういう事?」
「この子はここに来る途中に色々あって連れてきたんだが、本当はこの場所で分かれるつもりだったんだが、この島に生物兵器、ウイルスをばら撒くらしくて安全じゃなくなった。だから、別の場所、安全な場所まで連れていきたいんだ、何か当てはないか?」
俺は旨を伝えた。
フレアとここで分かれたら結局ウイルスに巻き込まれてしまう。
だから別の場所が良いが俺は異世界側のそこらへんはよくわからない。
だから、条件として頼る事にした。
「いやです、私」
だが、俺の条件は本人であるフレアに断られてしまった。
「は?何言ってんだフレア」
「私も先生たちと一緒に戦うって言ってるんです」
フレアは俺に向かって強くそう言った。
だが、
「ダメだ。わざわざそんな事する必要ない。危険すぎる」
俺はフレアのその言葉を肯定しなかった。
たった一か月程の道中であったが、多少なりともフレアには情が沸いている。
というより、情云々関係なく死ぬかもしれない無謀な事を小さい子にやらせるわけにはいかない。
だから、フレアには安全な場所に避難して欲しい。
「でも、私も先生と一緒に戦いんです」
強くフレアは俺にそう言った。
「先生は前に言いましたよね。自分のやりたい事をやれって、これが今の私のやりたい事なんです」
続けてフレアは俺に言って来た。
以前、俺はフレアが死にたがっている所を助けた時にそんな様な事を言った。
実際問題、人数の少ないのが現状で、一人加わるのは良い事なのかもしれない。
でも、そんな危険な事をやらせるわけにはいかない。
どうやって、フレアを説得させるかを考えながらフレアの目を見て、
「はぁー、ただし覚悟しとけよ」
俺は説得しないことに決めた。
というより、フレアの本気の目を見て説得できない事が分かった。
「はい」
俺がそう言うとフレアも喜んで、返事をした。
この決断は多分、フレアに対して情があるからだろうな。
赤の他人、知らない子供だったら迷わずこんな危険な事をさせなかった。
この1ヶ月の旅で生じた情って奴のせいでこんなバカな危険な選択を俺はしてしまった。
いつか後悔するかもしれない、いや、違うな。
しないために、俺は全力でフレアを守るだろう。
「って事で、改めて条件というより頼みがある」
俺は再びコウジとヨウさんの方に目を向けて、話を戻した。
「条件って?」
「フレアに魔法を教えてやって欲しい」
俺はヨウさんにお願いした。
「知識やら格闘何かは教えてたが、魔法に至っては何も教えられんかった」
俺は魔法についての知識は何もないし、魔力を持っていない
でも、フレアは異世界人だ。
俺と違って魔力を持っている。
魔法に関してのセンスがあるかどうかは別として、使える者は絶対に覚えたほうがいい。
ランクが上から2つめのエルフなら先生として、申し分ないどころか贅沢すぎる。
「そうね、私もその方がいいと思う。なら、あなたもウリにその格闘技とやらを教えてやってあげて」
「ちょっ、俺にそんな必要はないよヨウ」
と、少年は大きく声を上げた。
「私はウリに色々と教えたけど、魔法よりも近接、もとい剣士の方があってる感じなの。でも、私はあくまで魔法使い、しかも補助がメイン。魔法なしの条件下ならこの中で一番弱いくらい」
逆に言えば魔法があればこの中で一番強いのがこの人だろう。
「だからウリに近接に関しては何も教えられてないの。だから、教えてやって欲しいの」
「いや、こんな奴に教えられなくても」
「ウリ」
少年が何かを言おうとしたがヨウさんは大きな声で遮った。
「あなたは強くなりたいんでしょ?私じゃあなたをこれ以上強くする事はできない。私は魔法使いだから。何が気に食わないかわからないけど、あなたは一生そのばで立ち止まり続ける事になるけどそれでもいいの?」
先程までの穏やかな雰囲気と打って変わって少し怖いオーラが漂った。
少年、いやウリはその言葉で何か納得し、
「わかりました」
少し不満気ではあるが納得した。
俺はウリをヨウさんがフレアを見る事になった。
「それで、勇者の場所はどこなんだ?検討はついてるんだろ」
俺の質問に対して、ヨウさんとコウジさんは軽く頷き、
「ええ、彼は都市”アクエリアス”にいることはわかっているわ」
異世界人の大きな領土として12個の場所が挙げられる。
もちろんそれ以外にも彼らの拠点はあるが、政府はその12個の場所を2メトロポリス6シティ4タウンと分類した。
メトロポリスには異世界人の王族が関係している一番主要な都市で、結界魔法によって厳重に守られている。
そして、シティには有力な貴族が統治している都市で、その内の一つが”アクエリアス”である。
”アクエリアス”は向こうの世界では水の都と言われる、大きな湖の中心にあった島だったそうだ。
そして、異世界との混合によって、現在はロシアとモンゴル国境あたりにあった湖と混合してできた中心にあり、この特殊の立地によって、”アクエリアス”は12個の中で唯一の大陸の内部にある。
ただ、本当にそんな所に勇者がいるのかという疑問が俺の頭の中にある。
「そこで、間違いないのか?」
俺はヨウさんに確認するように聞いた。
相手は魔法を持っている。
テレポートによってばれないように移動だってできる奴らだ。
いない可能性は十分に考えられる。
「まず間違いないわ」
答えは返ってきた。
それもほぼ確信に近い形でだ。
「移動してる可能性もあるだろ?」
「確かにそうかもしれないけど、その可能性はほぼないでしょう」
やはりヨウさんはどこか確信を持っていた。
「勇者が捕まっているって事は秘密事項、知ってる人の方が少ないでしょう。だから、ほとんどの人は彼がまだ戦ってると思ってるわ」
「勇者が戦争に反対して捕まってると知られたら、反対派は躍起になるだろうし、政府側も黙ってないだろうしな」
「ええ、コウジの言う通り上もその事を気にしてるみたいなの。だから、彼を捕らえた場所”アクエリアス”で捕え続けてるの」
そうかもしれないが、
「全部転送魔法で解決できるんじゃないか?」
バレないように移動なんて、異世界側が実際に俺達にやっている。
事実、横浜にいた時、異世界人が移動していたことに軍が気づいていなかった。
「できない事はない。確かにそうかもしれないけど、転送魔法に色々とルールがあって、都市ごとの移動できる場所は決められてるの。しかも、その場所は目立つ場所で、隠れての転送魔法は禁止されてるの」
「転送魔法の脅威はわかっていると思うが、それは異世界人も同じだ。向こうも全員が仲良しこよしというわけではない。意識の外から攻め込む事ができる魔法をお互いに自由に使うというのはある意味危険なんだよ」
奇襲にぴったりだもんな、言われてみればそうだ。
「それに、勇者が捕まっている事は極秘事項。知っている人は王政に関わるごく一部と”アクエリアス”を統治している貴族、メリク家くらいだと思うわ。現在の領主、”サダル・メリク”は墓の貴族との権力争いに優位に立つために勇者の加護の継承を自分達の関係者にやりたいと考えてるはず、だから”アクエリアス”から別の場所に彼を移動させるとは考えにくいわ」
転送魔法のルール、権力争いによる優位性を保つために都市”アクエリアス”から移動していないとヨウさん、コウジさんは考えているという事みたいだ。
そういった、政治的な側面について俺は良くわからないけど、少なくともそこにいる可能性が高いという事だけは分かった。
ヨウさんも色々と調べながらその結論に至っただろうし、その可能性に賭けてみる価値があると思う。
「詳しい場所はわかってるのか?」
「いいえ。私は一応追われてる身ではあるから都市の中に入る事もできない、それに極秘事項で詳しくはわかってないんだ。なさけない話」
俺の質問に対してヨウさんは申し訳なさそうに答えてくれた。
王政に反対していた勇者パーティーの一人、重要な都市の一つを詳しく調べられないのは無理もない。
「それで、その勇者の加護を継承するまでの詳しい時間もわかっていない?」
「ええ」
そうだろうな。
だけど、
「その時間はもうないと」
「全くもってその通りよ」
やっぱりか。
話を聞いている時、そんな感じがした。
そもそも、捕まってから時間も相当立っているしな。
いる都市はわかっているが、詳しい場所はわからない。
そして、その勇者の加護が継承されるまでの時間ももうない。
全くもってめでたいぜ。
「無謀だと思うか?」
俺に対して、コウジさんがそう言って来たが、全くもってその通りだと思う。
でも、勇者の救出自体は必要な事でもあるとも考えてる。
だから、
「まあ、やれるだけやってみよう。全力で」
そう答えた。
「じゃあ、一か月で色々と準備をして進めていくしかないな”勇者の救出”を」
コウジさんはそう言い、俺は頷いた。
「一か月、短い」
ヨウさんはそう呟いた。
でも、勇者の命のタイムリミットは着々と迫っている。
しかも、その時間は分かっていないときたもんだ。
だから、
「まあ、妥当な期間だな」
俺達はその短さで進めていかないといけない。
都市”アクエリアス”まで行く道のり、その侵入方法、フレアとウリの指導をそんな短い期間で。
でも、それでやるしかない。
進む道がハッキリしたのは良かった。
ここを目指したのは良かった。
後はその道を進むことが出来るかどうかだ。
「そうと決まったらさっさと取り掛かろう。時間ないんだし」
「そうね」
俺の言葉にヨウさんは同意してくれた。
「フレアも言う事きくんだぞ」
「はい」
「ただ、その前にちょっといいか?コウジさんとヨウさん」
と、二人を呼んだ。
「まあ、別にいいんだが、どうした?」
「ちょっとね」
と、濁して別の部屋に移った。
二人は不思議そうな顔をしていたが、付いてきてくれた。
そして、別の部屋に移動して、
「ヨウさんは”回復魔法”とかって使えるんですか?」
と、尋ねた。
「ええ、簡単な止血程度ならできるわ」
そう答えが返ってきた。
そして、俺は服を軽く脱ぎ、左肩を見せた。
「何だその包帯は?」
「ここに来る途中にちょっとな。中々治らなくて困ってたんだ」
と、包帯を取りながら樺太に来る途中の船で切られた傷を見せた。
俺はこの傷をヨウさんに直してもらおうと思ってこの部屋に移動した。
「ええ、いいけど、完全には治らないわよ。あくまで傷跡を塞ぐものだと思って」
そう、答えが返ってきて、俺は頷いて了承した。
「でも、なんでわざわざ移動してまで?」
部屋を移動した事を疑問に思ったのかヨウさんは聞いて来た。
「できれば心配させたくなかったんだよ」
「獣人の子を?」
「ああ」
そう答えると、ヨウさんは俺の左肩に両手をかざし、両手が光、肩の傷が塞がった。
痛みこそあるが、傷はしかっりと傷が塞がった。
すると疲れが一気にきて、俺はその場に座り込んだ。
「大丈夫か?」
「ああ、それより早く始めようぜ、時間ないんだしな」
俺はそう言うと、ヨウさんは少し心配そうな顔をしていたが、時間がないという事に同意したんだろう、頷き、俺達は再び部屋に戻った。
そして、俺達の”勇者の救出”作戦が始まった。
次回は未定です。
Twitterや活動報告で適当に次回については更新してます。
Twitter:@tScRxzYLtrcGXnG




