22話 当日 後編
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22話 当日 後編
話を聞く限り、俺の樺太行きはなんとかなりそうな感は少し出てきた。
「ただ、なるべく早くしたほうがいいな。できれば夏が終わるまでには」
「その頃には避難が終わると」
「ああ、予想ではあるけどな」
って事は、2か月ちょいか。
まあ、十分何とかなるな。
パン、
「という事で、リングとその他諸々の件はこれにて終わりにして、次の本題だ」
クジョウさんは手を叩いて、そう言った。
そして、ずっと座っていた獣人の子に手を向け、
「彼女についてだ」
そう言った。
俺がタゴノウラに勝利した事により、奴隷から解放されることになっている。
「まず、解放してあげないとな」
解放?
別にもうされてるんじゃあないのか?
ココにいるわけだし。
「あんちゃんが思っているほど、奴隷って奴は仕組みが難しいだ」
俺が不思議がっていると、カモシダさんが言って来た。
「難しい?」
「ああ、第一いくら子供といってもどうして獣人、異世界人を奴隷にできると思う?」
異世界人は俺達と違って魔法を持っている。
俺達の世界の拘束方法ではそっとやそっとできない。
獣人も魔力量が少ないと言ってもできないわけではなく、子供も例外ではない。
他のゴーストタウンにも奴隷が広がっていたのらしいが、それを考えると少しおかしいのかもしれない。
「じゃあどうやってやってんだ?」
「それは今からやるのを見てればわかると思う」
そう、答えられた。
とりあえず、黙って見とくことにした。
「じゃあ頼むよ」
クジョウさんが後ろに立っているメイドにそう言いい、メイドが頷くと、獣人の子に近づいて行った。
そして、獣人の子の首を上に向かせると、
「何だあれ?」
そこには、紫色の模様が書いてあった。
「あれが奴隷の理由だ」
やっぱり、あれがそうなのか。
「前にも言ったけど、奴隷は元々異世界人の分化だって」
「ああ」
「結局は魔力を持った人を縛るわけだ。そこで開発され作られた魔法があの模様だ」
つまり、あの模様のおかげで縛れるって事で、
「魔法が使えなくなると?」
「その通り。付け加えると、命令に背くとあの模様に魔法が発動して激痛が走るらしい」
なるほどな、それで奴隷は攻撃する事ができず、縛れるって事か。
「でも、俺達には魔力がないんだし、そんな事ができるのか?」
奴隷になってしまう理由は分かったが、そもそも俺達には魔力がないから模様云々はあまり関係ないと思う
が、
「あの模様は魔力と主人の血が混じって書かれている。つまり、魔力の問題が解決できれば、」
「俺達でもできると、」
カモシダさんは頷いた。
「じゃあ、あのメイドさんってそうだよな?」
「ああ、多分な」
やっぱり、そうか。
あの人の付けてるリング、似てはいたが微妙に俺が付けていた物と違っていた気がした。
あの人はクジョウさんの奴隷って事か。
「彼女の事はなんとなくわかったかい?」
俺達はクジョウさんに頷いて返事した。
「わかっていると思うが、彼女は異世界人だ。しかも、”エルフ”だ」
そう言うと、メイドは腰まで掛るような綺麗な髪をたくし上げ、耳をさらけ出した。
その露わになった耳は、俺達の様なものと違って、長く鋭い。
まさにエルフだった。
「不思議かい?エルフが奴隷って」
「まあ、はい。エルフの魔法は危険だと習っていたんで」
訓練所では魔法の恐ろしさは嫌という程言っていた。
その魔法のエキスパートのエルフの事も。
「その子の様な子供ならまだしも、大人までそうなるなんて」
俺は思った事を言った。
「だろうね。私も最初はそうだった。なんなら奴隷の分化にも驚いたしね」
俺達がいた世界ではそんな文化はないから無理もないし、俺だってそうだった。
「獣人は魔力量の少なさから差別文化から、エルフはその見た目の良さから、奴隷によくされるらしい」
「そうなんですか」
「いくら優れた魔法があると言われても、その価値から目を付けられ捕らえられている。特に子供を色々な理
由から狙い目らしい」
多分、子供だったら魔法を覚えてる量や抵抗の弱さの関係からだろう。
子供の頃に学ぶ事が常識を作るように、自分が奴隷という常識を植え付けるためだろう。
嫌な文化だ。
そんな話をしている間に、メイドさんが獣人の子の首に手をかざしていた。
「彼女も例外ではなく、子供の頃に捕まり、売られていたらしい。それが、巡り巡って私が引き取ったんだ」
そう言って、クジョウさんはメイドさんの方を見た。
「理由は色々とあるが、一番の理由はコレからのを見ればわかる」
首にかざされていた手と模様が光始めた。
「奴隷の模様を付けるにも消すにも色々と条件がある。だが、ぞの条件が揃っても優れた魔術師がいなけ
ればできないが、運の良い事に彼女は優れた魔術師で、その条件を満たしている」
「優れた魔法を使えるからって事ですか?」
俺の言葉にクジョウさんは頷いた。
「ああ、私たちにはない文化だからね。とても心が踊るだろ」
わからなくはない。
魔法によって、火のない所から火を、水のない所から水を出す。
まさに無限のエネルギー。
そんな夢のような話、心躍らない人の方が少ないかもしれない。
そんなこんなをしている内に、獣人の子の首の模様が消えていた。
「これであの子はもう」
「ああ、大丈夫だ」
フー、
俺は息を吐き、安堵した。
とりあえず、勝つことで俺が望んだ事は叶った。
あとは、どうやって船に乗り込むかだが、考える時間はたっぷりとあるし、何とかなるだろう。
「さてと。ここっから本題だ」
クジョウさんが改まって言って来た。
本題?
リング、奴隷、俺が勝った事による条件は全部済んだはずだ。
他に何かあるのか?
そう思っていたら、
「この子の今後の事だが、」
「あっ!!」
クジョウさんが獣人の子を見てそう言って、俺は気が付いた。
「考えが何かないか聞こうと思ったが、その反応。特にないみたいだね」
やんばい。
何も考えてなかった。
奴隷とかいう謎文化にキレて、行動しただけだし、その後の事は何も。
こんな所に異世界人、しかも獣人の子が生きていけるわけない。
捕まって、もっと悲惨な事になってしまう。
異世界人が今全力でこの場所を取ろうとしたとしても、結局死んでしまう土地。
奴隷から解放されても、待っているのはこの子にとって地獄に等しい。
「クジョウさんの所はダメなんですか?」
「ああ、ダメだな」
そう、答えられた。
「私自身、巻き込まれて父を亡くしている身だ。できるだけ多くの人を救いたいと思っている。ゴーストタウンも
そうだ」
そう、話てきた。
「リングを亡くした者の末路、そしてゴーストタウンの噂を私は聞いた時に、それが事実だとわかった。だから、
そんな人達が暮らすゴーストタウンを自分が管理して、できるだけ救おうと思い、私は作ったんだ」
クジョウさん、そん事を考えてたのか。
「実際、俺が見た中ではあそこは大分いい所だ。弱肉強食が当たり前の世界、そこらへんに死体が転がっ
てるなんて当たり前だ」
俺はあそこが初めてだから、他の所の事は全く知らない。
「ただの荒れ地の所もある。良いところだよ」
カモシダさんがそう言うならそうなんだろう。
俺と違って、いろんなとこに行ってるみたいだし。
「エルフの彼女もその思いから引き取った。形式上は奴隷となっているが、そんな扱いはしていない」
その言葉に対して、メイドさんも、頷き、
「感謝しています。昔の事を思い出しと、今でも、」
と言って、涙ぐんでしまった。
その様子からクジョウさんの言っている事が本心なんだろう。
奴隷とか、試合を見たがるから、あまり良い性格していないと思ってたが、勘違いみたいだ。
「できるんだったら、彼女も何とかしてあげたい」
少し間を空け、
「だが、結局は私も自分が一番かわいいんだ。エルフの彼女は耳さえ隠せばごまかせるが、この子はそれが
難しい」
そう言われて、俺は獣人の子を見た。
耳と尻尾、今はまだ子供で小さいが、ゴーストタウンで見ただけですぐ気づく特徴ではある。
「彼女がエルフだと知っている物はココにいるものだけ、バレたら私も彼女も危ないからな」
そりゃあ、そうだ。
スパイ、裏切り者だと思われてしまう。
「この家の他の物に知られれば、私の命は危ない。悪いが、そのリスクは減らしていんだ。だから、すまない」
そう言われた。
まあ、普通は当然だ。
カモシダさんも同じ理由で無理だし。
このままじゃ、ココで一人で生きなきゃならない。
そんなの無理だ。
だって、ここは1年もしたら、、、。
しばらく考えようと思ったが、こうなった原因は俺にある。
だったら、答えは一つしかない。
「俺が連れていきます」
これしかない。
「いいのか、あんちゃん?」
「ああ、元々俺の無責任で起ってしまった事だからな」
そう、俺は責任を負わねばならない。
それに、
「俺が行こうとしてる所は異世界人もいるし、そこまで行ければ何とかなると思う」
行けさえすれば、獣人の一人や二人いるだろう。
引き取ってくれるはずだ。
だから、俺が引き取るのがいい。
「君がそれでいいなら任せるよ」
クジョウさんの言葉に俺は頷いた。
「なら、それで」
これで、この話は終わり、
「それでどうする?」
と、思っていたが、まだあるみたいだ。
「この子に再び、今度は君が主人となる模様を入れるかだ」
また、奴隷にするかどうかって事か、だったら、
「そんな事は、」
「まず、話を聞いてくれ」
俺が否定しようとすると、遮られた。
「君が言いたいことはわかる。わざわざ解放したというのに、また縛るのかと。しかも、今度は自分が」
ああ、そうだ、その通りだ。
俺が言いたかった事はそういう事だ。
「だが、そう単純なものではない。私も彼女を奴隷として縛っている」
そう言うと、メイドは髪を上げて、うなじにある模様を見せてきた。
「理由は単純、彼女が強いからだ。君もわかるだろ、魔法の強さは」
知っている。
半端な戦力なら、簡単に負けてしまう。
だから、俺はキツイ訓練を受けていた。
「獣人の子も例外ではない。魔力の量は少ないかもしれないが、成長すればその力に勝つことはできない」
それも知っている。
獣人の素の身体能力の高さは異次元だと。
俺達の世界のトップの成績を抜かす奴がうじゃうじゃいると。
この子も成長すれば簡単に俺を抜かすかもしれない。
それだけのポテンシャルを持っている。
「奴隷だった子の心は君が思う以上に壊れている。機会さえあれば殺しに来ても何らおかしくない」
確かに、この子の今までどんな暮らしをしてたかは俺にはわからない。
この世のすべてを恨む程の事をされていてもおかしくない。
おそらく、クジョウさんの実体験なんだろう。
「それに君は旅をすることになるわけだ。寝込みなど、機会などいくらでもある」
俺は獣人の子を見た。
何を考えてるのかは全くわからない。
そりゃあそうだ、わかる方がおかしい。
「その機会を防ぐことができる。異世界人の所まで連れていけば、簡単に模様を消す事もできるようにしとけ
ばいいだけだ。そうすれば、君の願いは叶うと思う」
クジョウさんはそう言った。
その通りかもしれない。
わざわざ、危険を冒す必要はない。
俺の最終目的はその先にあるわけだ。
そんな死に方はできない。
が、
「その話はなしだ」
俺の答えは変わらない。
そのために、戦ったのだから。
「わかった」
クジョウさんも納得してくれた。
「でも、もし俺が了承したらいれたんですか?」
「ああ、いれたよ」
少し奴隷の模様の事で俺は気になる事があった。
多分もうこんな機会がないと思うから聞いてみる事にした。
「その時、俺はどうやって縛れるんですか?俺達には魔力がないんだから、無理じゃないですか?」
模様を入れるのはエルフの人がいればできるが、その後は俺達には魔力がないのだから、結局無理なんじゃ
ないのかという話だ。
「そいつは簡単さ」
そう言うと、後ろの執事の人が懐から緑色の石を取り出した。
「こいつは”魔晶石”と言われる異世界の物で、その名からわかるように魔力を持っている。向こうの世界では
生活といった暮らしの簡単な所で使われていたらしい」
なるほどな。
「察しが良ければわかる通り、コイツがあれば魔力を持たない者でも奴隷を縛ることができる。実際、異世界
でも同様な方法で使われていた」
そう説明を受けた。
そして、クジョウさんんは首に掛かったアクセサリーを見せてきた。
「大体はこういった感じに加工され、肌身離さず持っている」
鍵みたいな物って事だよな、多分。
でも、思った通りかもしれない。
「やっぱり、詳しいですね。どうやって、知ったんですか?この事を」
「なるほど、あまりはぐらかさずに聞いてくれないか?そう言う探り探りはこういう場でやるのは疲れるというよ
りめんどくさいだ」
何かを察して俺にそう言って来た。
だから、
「上は奴隷文化を受け入れている。いや、行ってますよね」
俺は気になっていた事を正直に聞いてみた。
百歩譲って、クジョウさんの様な上の人達が行っているのならば納得する部分があるが、ゴーストタウンにまで
流れているのはあまりにも不自然ふだと考える。
逆に、無法地帯だからこそという部分もあるから否定はできないが、少なからず俺達は魔力がないのだから、
縛る手段、それどころか模様を描く手段もない。
なのに、模様を描く手段も縛る手段も既に知っている。
クジョウさんのエルフがいなくても”魔晶石”とかいうので描く手段があるんじゃないか。
じゃなきゃ、カモシダさんが他の場所にもいたというのにも納得いく。
「何でそう思ったんだ?」
「浸透しすぐだと思ったからです。何のためにかまではわからないですが、多分上はこの事を研究したんじゃ
ないんですか」
俺は頭の中でそう結論付けていたが、あくまでタダの予想。
それを確かめるために俺は聞いた。
「ああ、君の言う通りだよ。上はこの事を研究している」
やっぱり、そうだったか。
「でも、何でそんな事を?」
その答えに対して、カモシダさんも気になったらしく聞いた。
俺も気になってはいたから、丁度いい。
「簡単な事さ、魔法の研究のためだ」
魔法の研究?
わざわざ、こんな魔法調べるのか?
もっと他にも知らなきゃいけない事あんだろに、まさかそんな支配方法考えてるんじゃ。
そう思っていると、
「多分君たちが思っているような理由じゃない。私たちの世界は魔法について何も知らない。まあなかった概
念なんだからね」
クジョウさんがそう言って、話を続けた。
「だから、異世界人から知らなきゃいけない。君が行こうとしている樺太だってそのために作られた研究所があ
るみたいだし、世界中にはそんな所がたくさんある」
実際に俺が会いたい人もそこにいるし、俺の故郷もそうだ。
「そうやって進めて、色々な計画があったらしいが、この戦いのせいで全てがパーになってしまった」
「計画てそんなにあったんですか?」
「さあ、詳しくは知らないけど、魔法と科学技術を複合させて、深海・宇宙探索や危険地の研究、魔王の
死体回収なんかの計画が進行していたらしい」
カモシダさんが聞いた事に対して答えてくれた。
俺もそこまで色々計画があった事は知らなかった。
「ただ、パーになったと言っても、相手が魔法を使って攻撃してくるわけだから研究を続け、対策をし続けなけ
ればいけない。その中でもある魔法を重点的に調べなければならない」
「防御、もとい”結界魔法”ですね」
「さすが、元軍人よく知ってるね」
こちらが今最も苦戦している魔法はその”結界魔法”である。
この戦争、最初こそ苦戦をしていたが、こちら側勝つと言われていた。
理由は簡単、異世界人は地上戦、海戦どちらも強くはあったが、空戦はあきらかに劣っていた。
向こうには飛行魔法があったが、とても習得が困難なものらしく、こちらには戦闘機と言った物があり、有利
に事を進められる空中からの攻撃は防げないと考えられていた。
そして、その線で作戦が進み、敵の本拠手の王都を攻めにいった。
が、実際はうまくいかなかった。
その理由が”結界魔法”にあった。
今現在の科学力を持っての最大火力でも破れないと言われ、終わらせることができなかった。
「だからその研究を我々は進めなければいけない」
それはわかるが、奴隷ってのは何が関係するんだ?
いや、奴隷は何も縛る事ができるのが重要なんじゃないのか。
今まで極端に異世界人の捕虜が少ないのは魔法のせいだったが、それえお防ぐことができる。
「じゃあ手っ取り早い進め方は何か」
クジョウさんは少し間を空け、
「簡単だ本人、異世界人に聞けばいい」
そう答えた。
つまり、奴隷は魔法を詳しく研究するために、異世界人を捕らえる方法の一つって事か。
「だから、上はこの研究を真っ先に進め、異世界人を捕虜にして魔法を研究する段階に入っている」
それが奴隷の魔法を研究していた意味か。
「特にエルフはその筋のエキスパート。だから、捕虜にしたがって高価に流れているところを私が引き取った」
「そうだったんですね」
「ああ」
これで気になっていた事が解決できた。
それに、他にも色々と分かった。
思った以上にこのゴーストタウンに来た成果はあった。
「知りたかった事はこんなもんか?」
「はい、すみませんね色々と」
「いいや、いいよ。こちらも良い試合を見れて満足だからね」
そう言われ、握手を求められた。
だから、俺も答えて握手をした。
「これでさよならだ。行けるといいな」
「はい」
俺はそう答えた。
カモシダさんも立ち上がり、
「あんちゃん、頑張れよ」
と、俺に対して言ってくれた。
俺も、
「ああ、カモシダさんのおかげで色々知れたよ。ありがとう」
と、礼を言った。
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クジョウさんとカモシダさんに礼を言って、分かれた。
そして、その後に獣人の子を連れて、再び北へと向かった。
次回は未定です。
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