17話 最後
長いですがよかったら最後まで読んでください。
17話 最後
「何の話をしに来たんですか?」
俺はそうアカガネ少尉に尋ねてみた。
「幼馴染に頼まれてな。お前が俺達の知り合いに似ているからよろしく頼む、力を貸してやれってな」
やっぱりその事か。
この人の事は良く知らないし、出来ればあんまり話したくないんだが、上官ではある。
下手な事を言うと、今後めんどくさい事になるかもしれない。
だからと言って、馬鹿正直に言って勘違いされても後々めんどくさいかもしれない。
どっちに転んでもめんどくさいだったら、適当に受け流すしかない。
とりあえず、
「何でそんなに俺の事を教官やあなたは気に掛けるんですか?」
そう、この人達の友人に俺が似ているのかもしれないが、だからといってこんなに気に掛けるのは普通はないだろ
う。
特にあの教官がそんな事をするような人には見えない。
「まっ、そう思うのも無理もない。俺はともかくお前はコンゴウの教え子、あのぶっきらぼうで厳しいあいつが訓
練兵をそんなに気に掛けているのが意外に思うかもな」
俺はただ頷いた。
教官の中には俺達訓練兵とそれなりにコミュニケーションを取ってくる者もいたが、あの人はそんな事を一切
しなかった。
だからこそ、訓練兵を卒業する時に俺を呼び出して話たのは意外だったし、ちょっと話題にもなった。
俺達とは全く関わろうとしなかった人が、知り合いに似ている程度でこんなに気に掛けるものなのか?
そんな疑問はずっとあった。
「あんな怖い顔で、あんまり関わろうとしてなかったから意外かもしれないが、あいつは訓練兵、自分の生徒
をよく大事に思って気に掛けてたよ」
「えっ、本当なんですか?」
「ああ、昔よく電話してた時には自分の生徒の事を話してたよ。まあ、それも自分が最初に請け負った生徒
が死んだ時に俺に話さなくはなったがな。それでも、あいつが生徒を思っていることは変わらない」
あの無愛想な教官がそんな人なんて、意外だ。
「だから、あいつがお前の事を気に掛けてる事は何もおかしくはない」
そう、アカガネ少尉は言い切った。
「じゃあ、なぜ少尉も?」
コンゴウ教官の事はなんとなくわかっても、じゃあなんでこの人も同じように気に掛けてくるかはわからない。
それこそ、俺はこの人と全く関わっていない。
コンゴウ教官より謎である。
「頼まれたからですか?」
教官に頼まれたから、それだけの理由でわざわざ時間を作って、この忙しい時にくるとはとても思えない。
だから、何か別の理由があると俺は思った。
「そうだな。俺も最初あいつから電話を受けた時には特に君に興味がなかった」
まあ、そうだろうし、それが普通な気がする。
所詮は全く知らない赤の他人なわけだし。
「だが、今回の事件でそれも変わった」
事件って、今回の異世界人との接触のことだろうな。
「こういう事を上の立場が言うのはいけないと思うが、今回の作戦は特段な問題、異世界人と戦う事にな
るなんて思っていなかった」
まあ、そりゃあ本音を言ったら、そう思っている人がほとんどだろう。
この島国で限られた侵攻経路、海は既に固められていたわけである。
相手が今回一年も時間をかけた大規模の作戦だったわけで、誰も気づくことができなかったわけなんだから。
しょうがないと言えばそれまで。
「こればかりは俺含めて反省しなければいけ事だ」
それでも、上の立場の人は今回の事を簡単に流す事はできない。
実際に、進行されてピンチになっているわけではあるから。
「だが、その事は今は置いとくしよう。俺がお前を気になったのはお前が今回異世界人と接触したからだ。し
かも、ただ見ただけではなく、戦い、尋問をうけた。普通そんな体験を受けて、生きてる奴の方が少ないか
らな」
そうだろうな。
相手側に一回捕まった奴で助かった人は少ない。
一般的には生きては帰れない。
帰れたとしても、たいていは精神に異常、廃人になる。
もしくは、敵の魔法の餌食になって、洗脳状態になる事の方が多いい。
実際、俺の検査のほとんどは魔法による洗脳をされていないかの脳の検査などが占めていた。
「お前の出身から、お前が今まで経験していなかった事はわかる。だが、今回の事でお前は十分経験したと
俺は思う」
さらに、腕を組みなおして話を続けていった。
「その経験を経てお前がどう変わったかが気になってな」
「気になるとは」
「お前がコンゴウの言う通り本当に似ているのか、そうじゃないかが気になってな」
それが、少尉がわざわざ来た理由なのか。
それだけの理由で来るのか?
まあ、理由は人それぞれだし、少尉がそう言うなら少なくともこの人の中ではそうなんだろう。
「それで、お前は何か変わったか?」
「何かとは?」
まさか、この人聞いたのか?
「君のたいそれた夢は変わったのか?」
やっぱりこの人、教官から聞いたのか?
それだったら、適当にごまかす事もできない。
少しめんどくさい事になったかもな。
「やっぱりそうなのか」
少尉は何かを納得したようだ。
「何がそうなんですか?」
「お前の夢だよ。あいつ、コンゴウはそれについて何も言ってなかったけど、似ているって言ってたから何となく
わかってたが、その様子ならあたりみたいだな」
わかってなかったみたいだが、俺の反応を見てわかったみたいだ。
「何か隠したい事があるならもっと気を付けるんだな」
「はあ、でも顔にそんなに出してないと思うんですけどね」
実際にバレはしたが、俺は態度に気を付けてはいた。
なのに、簡単にばれてしまった。
「日本には”目は口ほどものを言う”と言うことわざがある。それに間もあったしな」
言われてみれば、目線はわからないが、俺はすぐに答える事は出来ていなかった。
「まっ、それでも大体検討が付いてたってのもあるがな」
「なるほど」
「で、どうだ。変わったか?」
そして、アカガネ少尉は話を戻した。
「なんでそんな事を?」
「経験して、わかっただろう。自分が抱いてた目標がどれだけバカだったか」
「んっ、」
俺は声が詰まった。
「どんな世界か知らなかった。だから抱いていた目標が実際に知った事で、それが無理だと思ったんじゃない
か?お前も」
確かに、俺は今まで舐めていたのかもしれない。
訓練所で時折見たあの目。
俺は自分ならあの目を変えられると思っていた。
だから、俺はその夢を持った。
でも、その目が実際に向けられたのはそれが初めてだった。
「確かに現実は想像以上でした。しかも、俺はまだあれで全てを知ったわけではないです」
あの時、俺は”できない”と、思った。
だから、ブレットの命を狙った。
「そうだろうな」
「でも、俺は変わらないですよ。想像とは違っても俺は」
変わらない俺は。
一瞬無理だと諦めようとした。
あの時、俺の夢は叶うものではないと思った。
でも、一人、ブレットを変えることはできた。
そう、逆に言えば俺は一人、あの目を変える事ができたんだ
あの人は死ぬかもしれないとわかっている状況でも俺を助けた。
彼は笑って、死んだ。
俺に”頑張れ”と言って。
「だから、俺は頑張りますよ。そう言われたんで」
「頑張れ?まあ、それは言いとして、これを見てみろ」
そう言うと、リングを操作して、俺にある資料を見せてきた。
「これは、、、。戦死者?」
「ああ、何も戦場はここだけじゃない。何ならここよりもひどい所もある」
つまり、ここ最近に起こった各地で亡くなった人をまとめた資料ってことになるのか。
さすがに数が多いいし、当然と言えば当然か、ほとんど全く知らない人の名前ばかりだ。
この人の隣に書いてあるかぎかっこの中には地名?が書いてあるのか。
んっ!
これは、そういう事か。
「わかったか?」
アカガネ少尉は気付いて話かけてきた。
「あっ、はい。これは各地で亡くなっている新兵のリストですね?」
「ああ、その通りだ」
やっぱりか、このかぎかっこの地名はどこの出身かを表してるのか。
んっ、この欄は!!
今まで全く知らなかった名前と地名ばかりだったが、急に自分が知っている地名がきた。
そして、そこには名前だけ知ってる者やよく知っている人物がいた。
「っ、、、」
俺はその情報に言葉がでなかった。
「自分の知らない至る所で人が死ぬ。その中には自分の知り合いなんかも含まれる」
アカガネ少尉はそう言った。
そうだ、全く知らんかった俺は。
「コレを踏まえてもう一回聞く。変わった、お前は?」
俺が知っている奴も死んでいる。
あいつも、、、。
俺は、だけど、
「変わらないですよ。俺は絶対に」
「これからも、こんな事が何回も何十回も嫌だと思っても起こり続けるぞ」
そうだろう、続く限りは。
だから、
「もう、起こらないようにするためにですよ」
そうだ、そんな事もう何回も起こさせない。
俺がそうするんだ。
俺は真っ直ぐとアカガネ少尉を見た。
「そうか」
アカガネ少尉はその俺の言葉と顔を見て、納得した。
「それで、どうするんだ?どうやって、達成しようとするんだ?」
そう聞いてきた。
どうやってか。
そんな方法全く浮かばない。
今回のコトで一つハッキリとした事がある。
このままじゃ絶対にできない。
例え何人の異世界人のあの目を変えたとしても、あの目をしているのはこっち側にもいる。
どちらかの目を変えたとしても、もう片方も変えなければならない。
俺は偉くなれば、自分の意見が反映されるようになれば、できると思ってた。
だは、それは甘かった。
キリがない。
多分、この10年で溝が深くなりすぎたんだ。
もう引き返せないくらいに。
だから、
「まだ、わからないです」
そう、わからない。
そもそも、そんな方法がないのかもしれない。
だが、一つハッキリとわかった。
「ただ偉くなるだけじゃダメてっことがわかりました」
「つまり、軍にいるんじゃ意味がないと?」
「えっ、いや」
やば、つい言ってしまった。
と言うより、何でこの人に俺はペラペラ喋ってんだ、俺。
この人の喋りやすさのせいか?
いや、そんな事よりも、俺の話を普通に聞いたら軍を抜けたいとかに勘違い、いや捕らえられてもおかしくな
い。
「つまり、」
俺は何を言うか考えていたが、俺の考えはこの人が思った通りだ。
軍で偉くなってもダメだと思った。
多分今までも俺と同じ様な考えで出世した人もいただろう。
だが、まだ続いてる。
できなかったんだ。
普通のやり方じゃダメなんだ。
終わらせるためにはもっと別の何かの方法でやらなければいけない。
それこそ、軍に縛られていたんじゃできないんだ。
「まあ、そうですね」
俺は特に言い訳が思いつかなかった。
それで、正直に答えた。
変な言い訳はかえって疑われるし、これ以上間が詰まっても同じことだろう。
俺の言った事を真に受けて、変に思わない事を祈るしかない。
「いいのか、ごまかさなくて?」
「別にごまかすも何も考えの一つですよ」
こう言うしかない。
それに、実際にあくまで考えの一つで何もプランなんてないしな。
「そうか」
そう言って、アカガネ少尉はしばらく何もしゃべらなかった。
そして、再びリングを操作してある資料を見せてきた。
「これは?」
俺はその資料を最後までじっくりと呼んだ。
「次のお前の作戦、つまり2日後までに決めろ」
そして、俺のリングに近づけ送信してきた。
俺はすぐに送られてきたものを確認してみると、別の資料が送られてきていた。
「詳しくは言わない。自分で考えて決めろ」
そう言いながら立ち上がり、部屋を後にした。
「つまり、これってどういう事だ?」
俺は見せられた資料を思い出しながら、送られた資料を見てその意味を考えた。
そして、
「そういう事か」
その意味に気付いたが、
でも、これっていいのか、うけても?
いや、違うチャンスかもしれない。
だったら、俺はすぐにアカガネ少尉に受ける事を伝えた。
俺は部屋を出てある事を調べまわった。
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俺は部屋に戻ると一通のメールが送られてきたのに気付いた。
チェックしてみると、さっきの話の答えだった。
「やっぱりか」
あいつだったら、受けると思った。
声も顔も性格も全く似ていなかった。
でも、似ている部分、考え方はそうかもしれない。
リュウが教官になって気に掛けるのはわからなくもない。
だけど、そんな曖昧な部分で手を貸すわけにはいけない。
俺が手を貸そうとも思ったのはあいつが俺の小隊の部下だからだ。
あいつが俺の部下の一人で、終戦へと向かって行こうとしていた。
俺はその道の一つかもしれない場所をしめしただけ、
あいつに言われた通り手を貸したわけではない。
それに、おれはもうそんな無茶ができない。
守りたいものが多すぎる。
だから、今回の一回限りだ。
俺はもう一つ、2日後に行う作戦の資料を送った。
その作戦は俺が今回亡くなったスラッグの代わりに臨時に指揮を取って行う、建物周りの被害状況の調査
作戦だ。
これで最期だ。
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2日後、俺は予定通り作戦に加わった。
俺はスラッグ部隊が先の被害のせいで人数が減少してしまったため、俺は急遽こちらの部隊に移動して、作
戦を行う。
そして、その指揮をとるのがアカガネ少尉だ。
今回は爆発によって、その周辺の被害状況を見る簡単なものだ。
前回の作戦の爆発は急なもので、周りの被害が予測できないため、調査するものだ。
ただ、この作戦は現在の状況ではさっさと終わらせなければいけないため、本来前線に立たないアカガネ少
尉なんかもでてきたり、人が足りなかったため、俺のように部隊を移動してる者も多い。
実際に、俺以外にラッセルク上等兵も俺同様にスラッグ部隊に移動している。
そんなわけで、作戦が始まり、俺は建物中にいた。
「おい」
「どうしたんですか?」
ラッセルク上等兵の言葉に振り返り答えてみると。
「これ見てみろ」
「これは、」
そこにはヒビが入った柱があった。
おそらく、あの爆発による影響で傷んだだろう。
周りを確認してみると、ヒビが入った箇所が多かった。
とにかく、
「速く報告して、ここを出ましょう」
「そうだな。タイミング悪く崩れたらたまったもんじゃない、せっかく生き残ったてのに」
そう、ラッセルク上等兵が言うと、
ビキッ!!
と、大きな音が建物から聞こえた。
「まさか」
ラッセルク上等兵は叫び音の方向を確認していた。
その、まさかだ。
天井にヒビが加速していった。
俺はとっさにラッセルク上等兵を突き飛ばした。
「なっ、何すんだ」
そう、怒った瞬間に天井が崩れて、俺とラッセルク上等兵の間が塞がった。
「俺は何とか脱出するんで、後で会いましょう」
「おっ、わかった。すまない」
ラッセルク上等兵の方は出口に近いが、俺の方は少し周りに道になんとかしないとな。
俺は急いで走り出して、俺は向かった。
ビキビキ!!
やばい、時間が。
間に合うか?
そして、
ドッドッドッドン!!
建物が崩壊していった。
これが、俺の最後の作戦となった。
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プルプルプル。
俺が小隊の隊長室に戻り、資料の整理を行っていると一本の電話がかかってきた。
ガチャ。
俺はその電話を取った。
「もしもし」
「トラか?」
「ああ、そうだ」
どうやらコンゴウ、いやリュウの様だ。
自分の教え子が亡くなって連絡してきたのだろう。
「随分とはやいな」
いつかまた電話するだろうと思ったが、まさかその日のうちに来るとは思わなかった。
「まあ、たまたまだ」
「そうか」
「本当みたいだな」
「ああ、ウソなんて書かれると思うか?リストに」
「そうだな」
今までは自分の教え子の生存を気にするような奴じゃなかった。
いや、気にしないように見ていなかった奴だが、俺に電話に話すくらいには気に掛けた奴だったから、確認し
てたみたいだ。
「だが、そんなもんだろ?」
「ああ、そうだったな。それで、どうだった?」
おそらく俺達の幼馴染、麟太郎ことリンについてだろう。
「あいつはリンじゃない。お前が言う程似てなかったさ」
俺はそう答えた。
「だけど、面影というかそんなのはあったぞ」
と、反論してきた。
まあ、同じ志みたいのはあったが、
「お前程長くはないから関わりが」
「まあ、そうだな」
「でも、俺の部下だ。できる限りのことはやったさ」
「そうか。悪いなわざわざ」
「ああ、気にするな。だから、お前もいちいち気にするなよ」
俺はリュウにそう言った。
「それは出来ないかもな。俺の教え子たちを気にしないのはな」
そう答えリュウはさらに、
「別にバトラーが特別じゃない。他の奴らだって俺はいつも一人で気に掛けてるさ」
そう、涙声でリュウは言って来た。
「だったら、今度その愚痴聞かせてもらうぜ。酒でも飲みながら」
「そんな暇じゃないだろ。俺もお前も」
「だから暇になったらさ。その為にも俺はまだ残ってる作業があるから、またな」
「ああ」
そう言って、電話を切った。
意外と暇になるのにそう何年もかからないかもしれないぜ、リュウ。
そして、俺は作業へと戻った。
次は9時に挙げます。




