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落とし物を届けたら双子の美少女がやってきました  作者: taqno(タクノ)
迷走編

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第94話 目指せアイドルプロデュース!

 今日も組体操の練習の時間がやって来た。ペアを組む相手が溜め息を吐いているのが地味にダメージくるな。

 だがそんな悲しい現状も今日でおさらばだ。何て言ったって、俺にはとっておきの助っ人がいるからな。

 そのための代償は痛かったが、背に腹は代えられない。


「あ、ちょっといいか~? 俺そいつとペア組みたいから、もし良かったら代わってくんね~」


「は? えっと、まあいいけど……」


「さんきゅ~」


 そう、俺の助っ人……金髪! こいつが三点倒立を含む組体操全般のサポートをしてくれることになった。

 運動神経抜群のこいつがいれば百人力だ。その代わり、後で恐ろしいご褒美が待っているが……。


「悪いな氷川、俺なんかのためにさ」


「いいってことよ。なんてったって……うひひ。楽しみだぜ、お前のチア姿」


「そ、それは置いといて……。俺さ、サボテンもまともに出来ないんだけど大丈夫かな。膝の上に乗ってもバランス崩すんだよ」


「へぇ~お前って運動音痴なのな。じゃあほら、いっぺんやってみ」


「ああ……よいしょ!」


 俺は金髪の手を掴んで、90°に曲げられた膝の上に足を乗せる。

 だが、すぐにバランスを崩してその場から落ちてしまった。


「うーん、どうもお前はビビってるように見えるな~。そんなんだから三点も上手く出来ないんじゃね?」


「う、うるせぇな……。悪かったなびびりで。でもしょうがないだろ、出来ないもんは出来ないんだよ」


「ふ~ん。じゃあお前が土台になればいいじゃん」


「えっ、でも俺ヒョロいしお前より身長低いし……土台になんてなれるか?」


「周り見てみろよ。お前よりちっさいやつでも土台になってるやついるだろ?」


 金髪の言葉を受けて周りを見渡してみる。

 確かに俺より小柄でもしっかりと土台をやれているやつも少なくない。

 今まで全然気付かなかった。ただ単に自分が出来ていないことに焦りを感じるだけで、周りを見る余裕もなかった。


「なぁ? こういうのは多少体格差があったって、姿勢をしっかりしてれば簡単に倒れたりしねぇんだよ」


「そ、そんなもんなのか? でも俺とお前じゃ結構体重差あるだろ?」


「10キロあるかないかじゃん? そんくらいどうってことないって。ほら、やってみ?」


「わ、分かった……」


 腰を落として膝を直角に曲げる。そして金髪の手を掴み、膝に乗ってもらった。


「ぐわっ!」


「あぶねっ! おいおい、こんくらいで倒れるやるがいるかよぉ~」


「す、すまん……やっぱり無理じゃないか? 俺が上に乗った方がいい気が……」


「うーん……もういっぺんやってみっか」


 金髪は気にせずもう一回やろうと言ってきたけど、どう考えても無理なような。

 それとも何か秘策でもあるんだろうか。もしやこいつ、体重を軽くするようなスキルでも持っているのか?

 どこかの武術に伝わる秘伝的なアレを習得してるとか? んなわけないか。


「あーダメダメ。腰がまがってんよ~。ほら、もう少し後ろに構えてみろよ」


「えっと……こうか?」


「そうそう、そんな感じ。じゃあ行くぜ~よいしょっと」


「お、おお……おぉ!? で、出来た! すげぇ、出来たー!」


 金髪の指示通りに姿勢を変えてみると、今まで成功しなかったサボテンが簡単に成功した。

 自分でもびっくりだった。体型の違う相手を膝に乗せても、そんなにキツくない。

 膝や腰の曲げ方一つでこんなに負荷が変わるなんて。人間の体って凄い。


「ま、こんなもんよ。運動が苦手なら土台になってた方が楽だろ? さぁ、他の技も練習しようぜ」


「あ、ああ!」




 その後も金髪のアドバイスを受けながら、色々な技に挑戦した。

 今までの苦労は何だったのかというくらい、簡単に成功することが出来た。

 やっぱり真のリア充ってのは文武両道なだけでなく、コミュ力もあって人に教えるのも上手いんだな。


 しかし安心はしてられない。組体操が上手くいったとしても、〆の三点倒立が失敗したら台無しだ。

 一応金髪が教えてくれるとのことだが、果たして組体操の様に上手くいくかどうか。



「ほれ、地面に頭をつけて。あー違う! 腕と頭の間隔をもっと広げて!」


「で、でもこれだと腕に力が入らないぞ?」


「力入れる必要なんてねーんだって。バランス取るために間隔広げた方がやりやすいからよ~」


「そ、そうなのか?」


「そうなんだって。ほら、前のやり方より背中が真っ直ぐになりやすくなっただろ?」


「あ、確かに……。じゃあこのままやってみるか……えい!」


 地面を蹴ってみると、いつもとは違う感覚があることに驚いた。

 浮遊感とでも言えばいいのか……とにかく体が浮いているような錯覚を覚えた。


「あ、あれ? 出来てる? もしかして俺、三点倒立出来てるのか!?」


「よし! そのまま足を上に伸ばせ! いけるいける、絶対やれる! 焦らずゆっくり落ち着け!」


「お、おう! ぐ……うううぅぅ……ぎゃあ!」


 慎重に足を上に伸ばそうとしたが、途中でバランスが崩れて倒れてしまった。

 結果的に失敗だったが、今までとは全然違う手応えを感じた。


「惜しかったなぁ。でも何となく感覚は掴めただろ? あとは足をゆっくり伸ばせばオッケーだぜぇ」


「ああ……サンキューな氷川。これなら本番までに成功出来そうだ」


「礼なら言葉じゃなくて誠意を見せて貰いたいねぇ~。この後見せてくれるんだろぉ?」


「あ、ああ……そうね。三点に夢中ですっかり忘れてたわ……」


 とりあえず金髪の協力のおかげで、組体操の方はどうにかなりそうだ。

 だが問題はチアリーダーの方。孤立しているミカに俺が出来ることを考えた結果、これしか方法がなかった。



 待ってろよミカ。お前だけ寂しい思いはさせないからな。





 ◆◆◆◆◆





「待って、四組の朝倉さんが振り付け間違ってる! また一からやり直しね!」


「えー」


「また同じところで間違ってるじゃーん。何回目よこれでさ~」


「ご、ごめんなさい……」


 ミカは昨日と同じように、チアのメンバーたちから責められていた。

 失敗するのが嫌ならお前らがミカに教えてやれよ、とツッコみたくなるが誰もそれをしていない。

 全員ユカの周りに群がって、ここを教えてとかこれはどうすればいい? とか、自分のことしか考えてない。


 あれじゃあ下手な子はいつまでたっても上達しない。


 やはり俺が一肌脱ぐ必要があるようだな。


「はぅ……」


 ミカが溜め息を吐きながら、グラウンドの隅に移動するのを確認して、俺は金髪と一緒に彼女の後をつける。


「やっぱりミカ……みんなの邪魔になってるのかな……」


 酷く落ち込んでいる様子を見せるミカ。しかし彼女を気にかける女子は一人もいない。

 陰キャ特有の存在感の無さが悪い方向に働いているのだ。

 やらかした後にフォローしてくれる人間がいないと、人はどこまでもネガティブに考えて落ち込んでしまう。


 だからこそ、ユカがフォローすべきなのだが残念ながらユカは周りの女子の相手で手一杯。

 ならばミカの味方をしてやれる人間はここにはいない。故に俺がここに来たのだ。



「そう落ち込む必要なんてないよ朝倉さん」


「え……? だ、誰ですか……」


「おれ……じゃなくて私は通りすがりのチアリーダー! あなたの悩みを解決に来ました!」


「アシスタントの氷川だよ~。君が朝倉さんのお姉さん? めっちゃ似てるね~かわいい~!」


 いきなりの登場にミカは面食らっている。そりゃそうだろう、通りすがりのチアリーダーって何だよ。

 そんな人間がいて堪るか! 普通に不審者じゃねえか!

 でもこうでもしないとミカを助けることが出来ないのだ。仕方ないのだ。


「えっと……なんでチアリーダーの衣装着てるの……りょう君」


「ば、バレてる!? じゃなくて、私は進藤亮などではない! 通りすがりのチアリーダーだ!」


「でもその声……その顔……どう見てもりょう君……」


「私は進藤亮とは一切関係ない! いいね?」


「あっはい……」


 く、くそ~。せっかく女装してメイクも決めたのに、ミカに一発で看破されるなんて……。

 金髪が用意した衣装と黒髪ポニテのウィッグ、それに母さんが教えてくれたメイクで誤魔化せると思ったのに。

 よく考えたらミカは女装してる時のメイクを何回か見てるし、いくら俺が様変わりしたって見抜けるのかもしれん。

 想定外だった。だがここで俺が素直に女装しましたなんて言ったら、ミカに引かれる可能性は大だ。

 意地でも別人を貫き通すしかない。これも友達のためだ。


「ところで朝倉さんはチアの振り付けで困ってるようだね。もしよかったら私たちが手伝ってあげようか?」


「え……あの……りょう君ってダンス得意だったっけ……?」


「得意じゃないけど、こう見えて物覚えはいい方だぜ? 何回か練習見てて、振り付けも何となく覚えてるし……って、私は進藤亮じゃないけどね!?」


「そうそう、この子は通りすがりのチアリーダーだよ~。その名も進藤亮子ちゃん!」


「いやそのネーミングは流石に雑すぎねぇか!? ほとんど正体明かしてんじゃん! いや正体とかそんなの無いけどね!」


 金髪め、こいつネーミングセンスゼロかよ! いくらなんでも馬鹿じゃねえの!

 ほら、ミカもポカンと口を開けてしまっているじゃないか。

 こんなの通るか! やっちまったなお前!


「ぷ……ふふふ……」


 しかし何がおかしいのか(いや全部がおかしいけど)、ミカはクスクスと声を漏らして笑った。

 そして一通り笑った後に、少しだけ申し訳なさそうな顔をして俺に申し出るのだった。


「じゃあ……亮子ちゃんに……チアの練習手伝って貰っても……いいですか?」


「お、おう! モチのロンだ! じゃなくて、もちろんですわ!」


「おい進藤ぉ、早速キャラが迷子になってんぜ~」


「う、うるさいなぁ! お前もしっかり手伝えよな氷川!」


「おうよ! なんせお前のチア姿を存分に拝めるからなァ~願ったり叶ったりよ!」



 こうして俺と氷川による、ミカのプロデュースが始まった。

 目指すはトップアイドル! じゃなくて、まぁ体育祭で恥を掻かない程度に振り付けをしっかり覚えさせよう。

 安心しろよミカ。俺のアイドルプロデュース力はトップレベルだからな。

 今まで(ゲームで)何人ものトップアイドルを生み出してきたんだ。

 お前のことも目一杯輝かせてやるぜ!

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