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落とし物を届けたら双子の美少女がやってきました  作者: taqno(タクノ)
出会い編

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第5話 休日に美人の双子と遭遇する

 今日は土曜日なので、隣町のアニメショップに来ていた。

 ここは漫画の品揃えもいいし、アニメのグッズも大量に置いてて最高だ。

 オタクの聖地というと過言かもしれないが、少なくとも都会に住んでいない俺からすればありがたい存在だ。


「あ、確かお気に入りのサークルが新刊出してたな。そっちも確認しなきゃ」


 アニメ・漫画コーナーを出て同人誌のコーナーへ行こう。

 ちなみに俺の目的は全年齢のものだから、やましいことはしていない。

 ちょっと間違えて暖簾がかけられているコーナーに迷い込んでしまうこともあるが、それは事故だ。

 俺は健全な男子高校生なので、事故ならしょうがないのだ。


「よし、残り少ないけどなんとかゲット出来た。でもレジに持って行くのは恥ずかしいんだよなぁ」


 別に店員は俺のことなんてどうでもいいんだろうけど、どうも気にしてしまう。

 そういうことが気にならない図太い神経が欲しいものだ。例えば金髪のような。


 そんなことを考えながら、俺はレジの前をうろうろと行ったり来たりを繰り返していた。


「そろそろレジに行かないと怪しまれるよな。よし、行くか」


 俺が勇気を出してレジに駆け出そうとした――その時



「嘘だろ……?」


 見覚えのある顔を発見してしまった。


「ミカちゃんってこのキャラ好きだよねー」


「う、うん……優しくてかっこいいから……すき」


「そうなんだー。ユカ、アニメとか詳しくないから分からないけど、確かにかっこいいよねー」


 朝倉姉妹!? 何故こんなところにいるんだ!?


 いや、俺たちの地域から電車で一本。すぐ来れる場所ではあるが……。

 それにしたって、何も俺が同人誌を買うタイミングで現れなくてもいいじゃないか。

 こんなの買ってるって同級生にバレたら、末代までの恥だ……。


「何としても、あの二人に見つかるわけにはいかないな……」


 もし見つかったら、もうまともに顔を合わせることが出来ない。


 朝倉姉妹はレジから直接見える場所にいる。

 ここにいたら絶対に見つかる、隣の棚に移動だ。



「あ、優しいって言えば! 最近ミカちゃん楽しそうだよねー」


「え……そ、そうかな……」


「うん! 学校が終わったら寂しそうにしてるもん。もしかして、優しい誰かさんが関係あるのかなー?」


「そ……そんなこと……にゃ、にゃい……よ」


「あははっ、照れてるー! ミカちゃんったら分かりやすーい!」


「ひぅ……ユカちゃん……いじわる」



 何を話しているのか全然聞こえない……!

 だが見る感じ、すごい楽しそうだ。


 そういえばあの姉妹が話しているところを見るのは初めてかもしれない。

 性格が真逆だから普段はどんな会話しているのか疑問だったが、どうやら仲良くやっているようだ。



「そ、そいうえば……ミカ……他にも欲しい本……あるんだった」


「じゃあついでに買っちゃおうよ。一緒に探すよ?」


「ユ、ユカちゃんは……見ちゃ……ダメ!」


「えー? あ……さてはいやらしー本でも買うの? うわーミカちゃんってばいやらしー!」


「ち……違うから……!」


「はーい。じゃあ私は適当に見て回ってるねー」


 おや? ユカがその場を離れ始めたぞ。俺のいる場所からどんどん離れて行ってる。

 ミカも今いた場所から違う棚に移ったようだ。これで二人からはレジの方は見えなくなった。

 今のうちに会計を済ませるか。




「ありがとうございましたー」


「ふぅ……なんとか買えた。危ないところだった、もう少しで新刊を諦めそうだったぜ」


 さて、買い物も済ませたし一刻も早く店を出よう。

 友達に挨拶のひとつもしないのかって思われるかもしれないが、出来るわけがない。

 俺の手にはレジ袋に入れられた同人誌があるのだ。

 万が一にでもバレたらもう生きていけない。


「今のうち今のうち……」


 俺は焦る気持ちを抑えながら、早足で出口に向かおうとした。

 しかし、そのせいで財布を落としてしまった。

 いかん、慌てて行動すると何かしらミスが出るな。そう思ったのだが……。


「あの……落とした……よ」


 聞き覚えのある、控えめな声が後ろから聞こえた。

 その瞬間、俺の全身に冷や汗が流れた。

 気持ち的には、サウナに入った時よりも汗をかいた。それくらい焦ったのだ。


「や、やあミカ……。こ、こんなところで奇遇だな」


 朝倉ミカに見つかってしまった。

 別に悪いことをしているわけではないのに、ものすごい罪悪感だ。

 まるで警察官に挨拶された時みたいだ。無駄に焦ってしまう。


「きゅ、休日に会えるなんて……にゅふふ……ミカ……ラッキー」


 俺なんかに会って何が嬉しいのか分からないが、正直俺はアンラッキーだ。

 別にミカに会いたくないってわけじゃなく、このタイミングで会うのは嫌なのだ。


 俺はとにかく、手に持ったレジ袋に注意がいかないように全力で話題を逸らした。


「何だミカ。こんなところに来てるなんて、さてはミカもアニメ好きなのか?」


「う、うん……大好き」


「そ、そっか。はは、ははは」


 相変わらず、人形のように整った顔だ。見ていて溜め息が出そうになる。

 しかもその顔から「大好き」なんて言葉が発せられるんだ。破壊力がある。


「ミ、ミカは何を買いに来たんだ? お、俺は“魔殺の槍”って漫画買いに来たんだけど」


 嘘は言ってないぞ……! 同人誌の他に今名前を出した漫画を買っているんだ。

 つまり俺は『このレジ袋には魔殺の槍が入っている』という情報を開示することで、ミカに他の本も買ったことを悟られないようにしているのだ。

 これぞ頭脳プレイ。情報を出すことで、一見不利に見える状況を逆に利用するのだ。


「魔殺……ミカも読んでる……! アニメも……最高」


「あーアニメな! うんうん、あれも良かったなー! 作画もいいし、音楽とか壮大でさ!」


 くそ……レジ袋に意識が向かないように、必要以上に大きな声を出してしまう。

 これでは逆に必死感があって、かえって怪しいではないか。


「こ……今度……映画もやる……よね」


「そうそう、飛行機編な! あれも熱くて好きなんだよなー!」


「あれは……泣ける……よね」


 誰か助けてくれ。これ以上いたら、その内ボロを出してしまいそうだ。

 仕方ない。ミカには悪いけど、急用があるって言って立ち去ろう。


「あ、そういえばこの後用事があるんだった! 悪いミカ、また学校で!」


「え……あ、うん……また……ね」


 そんな寂しそうな顔をしないで欲しい。

 申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまうじゃないか。


 だがこれも俺の名誉のため、急いでここから立ち去らなければ。



「あれー? 進藤君じゃない?」


 おお……もう……。


「なになに? 進藤君もこんな店来るんだー。もしかしてアニメとか好きなのー?」


 し、しまった。俺がぐだぐだしている間に、ユカにまで見つかってしまった。

 というかユカよ、リア充が陰キャに向かってそんなこと聞くんじゃない。それは禁止カードだ。

 聞かれた時点で『アニメとか好きそうw』って思われてるんだってショック受けるから。

 それにこんな店とか、アニメショップに失礼だろう。置いてる商品を見ればその感想も妥当なんだけど。


「朝倉さん……コンニチハ」


「あれーどうしたの、そんな今にも死んじゃいそうな顔してさー。あー、さてはエッチな本買ったんでしょー」


 ユカはにやにやしながら、俺をからかってくる。

 いつもなら笑って流すけど、図星だから笑えない。

 いや、笑いはしてるんだけど、乾いた笑いしか出てこない。


「実はミカちゃんもアニメ好きなんだよ。いやー二人とも気が合うねー」


「ちょっと……ユカちゃん……!」


「はは、ははは……」


 駄目だ。何を言われても苦笑いしか出来ん……。


「そうだ! ミカちゃん、この前アニメのブルーレイ買ってたよね。二人で見ればいいじゃん!」


「ユカちゃん……!?」


「ね、進藤君?」


「うん、ブルーレイね。そうね……」


 ユカの言葉が頭に入ってこない。

 俺は反射的に相づちを打つことしか出来なかった。botか何かかな?


「よかったねミカちゃん♪」


「も……もう……ユカちゃん……」


 二人は何だかご機嫌な様子だ。姉妹の仲が良いのはよいことだ。




「それじゃあ進藤君、また学校でねー!」


「ば……ばいばい」


「うん、また学校で」


 その後、どうにか同人誌を買ったことはバレずにやり過ごすことが出来た。

 おかげで俺の体力はすっかり空になってしまったが、名誉を守れたと考えればまぁ。


「……ん? ブルーレイ……? 一緒に見る……?」


 もしかして、アニメの鑑賞会の約束をしてしまったのか?

 女子と一緒にアニメ鑑賞……!? 何だそれ!?

 オタクにとって夢のようなイベントだけど、陰キャの俺にはある意味地獄だぞ。

 あんな美少女と一緒に休日を過ごすとか、色んな意味で怖すぎる。


「なんだか……大変なことになってきたな……」


 こうして、俺は女子と遊ぶ約束をしてしまったのだった。

 正確な日時も決めてないし、少なくとも近日中ということは無いだろうけど。


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