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落とし物を届けたら双子の美少女がやってきました  作者: taqno(タクノ)
出会い編

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第27話 母親に双子のことがバレた

「か、母さん……どうして……」


「酷いわ亮ちゃん! 久しぶりにママが帰ってきたっていうのに冷たい! うう、ママ泣いちゃいそう……」


「気持ち悪いからやめろよ……」


 オヨヨ……とくどい鳴き真似なんかしやがって。わざとらしいリアクションがいちいち癇に障る。



「リョウ君のお母さん……? ウソっ二十代にしか見えないんだけどー!?」


「はぅ……とってもキレイな人……」


 俺の背に隠れていたミカとユカが顔を出して母さんをまじまじと見つめる。

 そんな二人を見て、母さんは両手を口の前に添えて驚いた表情をした。


「え~!? 亮ちゃん、この子たち誰ェ~? すっごく可愛いじゃない。もしかして亮ちゃんの彼女~?」


「違うわ。二人はただの友達だ」


「朝倉ユカでーす。はじめましてお母さん! リョウ君とはいっつも仲良くさせてもらってまーす!」


「あぅ……ミカは……朝倉ミカ……です。あの、こ……こんにちは」


「うーん! 二人ともとってもいい子ね! まさか亮ちゃんにこんな素敵なお友達が出来るなんて、ママ感激ー!」


 母さんは二人を両腕で抱きしめて頬ずりをする。やめろ、年甲斐もなくはしゃぐな。二人から離れろこのアラフォーめ。


「なぁ、こんな人放っておいて早く飯食いに行こうぜ」


「ちょ、リョウ君のお母さんなんでしょ!? その言い方は冷たくない?」


「そうだそうだー! ママ悲しいぞー!」


「うるせぇ! いいんだよこの人は別に。母親って言っても別居中だしさ」


「え……? あ、そう言えば……りょう君の……お父さんって……《《単身赴任》》だって……」


「そうだよ。父さんは一人で転勤したけど、この家にいるのは俺一人。つまりこの人とは一緒に暮らしてないんだよ」


 俺はこの人のことを母親だと認めていない。何しろ俺が物心ついた時には既に別居していたのだ。母親らしいことをしてくれた記憶もない。

 そのくせ本人は母親面して絡んでくるのだ。鬱陶しく感じても仕方のないことだろう。


 小学校の頃、母さんのことで同級生にからかわれたりもした。思えば俺が陰キャになったのはそれが原因だったかもしれない。


「うわうわ、どうしようミカちゃん……! もしかして複雑な事情があったりするのかなー……?」


「うゆぅ……ミカたち……おじゃま……かも? ユカちゃん、ミカ……気まずい……」


「別に二人が気にするような事じゃないけどな。これは俺と母さんの当人同士の問題だ。ま、母さんは家で好きにくつろいでなよ。俺たちは出かけてくるからさ」


 昼飯を食った後はいつも通り母さんが帰るまで外で時間を潰すか。

 あーあ。折角の日曜日なのに気分が悪くなってしまった。さっきまでは楽しく過ごせていたのに、まったく困ったものだ。


「ちょーっと待ったー!」


 俺が外に出ようとした時、母さんが強引に俺の手を引いた。


「せっかくだからママも一緒に行くわ! ミカちゃんとユカちゃんに私達のこと、話しておきたいしね。いいかしら二人とも?」


「は、はい。ユカは別に構いませんけど……」


「ミカも……。シリアスな空気に……ならないなら……」


 安心しろミカ。この人絡みで重い話なんてあり得ないから。

 悲劇じゃなくて喜劇寄りな話はあるけどな。この人の事情を聞いたらきっと、俺たち親子の事を滑稽だと思ってしまうだろう。

 だがそんなの慣れっこだ。母親のことで苦労してきた俺にとって、哀れに思われるくらい何とも無い。


「決まりね! それじゃあ出発よー!」


 母さんはミカとユカを脇に抱えて意気揚々と玄関を出る。36歳なのにやたら元気だなこの人。

 そういうところが苦手なんだよ、母親としての自覚が無いその無邪気さが。



 ◆◆◆◆◆



「さあ好きなの頼んじゃって~! お金はお姉さんが全部出すから!」


 お姉さんて……歳考えろよ。自分がおばさんって呼ばれる年齢なの分かってるのかこの人。


 だがユカもミカも、この人のボケ(だと俺は思ってる。本気で思ってるなら嫌すぎる)を特に気に留めずに、嬉しそうにするのだった。


「いいんですかー!? じゃあユカはペッパーハンバーグの洋食セット、付け合せはライスで! あとードリンクバーとー……デザートにチョコレートパフェ!」


「ミカは……若鶏の唐揚定食……ド、ドリンクバー付きで……。それと……クリームあんみつも……いいですか……?」


「二人とも細いのに食いしん坊ね~。いいわ、他にも食べたいものがあったらどんどん言ってね。遠慮しなくていいから」


「じゃ、じゃあ……フライドポテト……!」


「イタリアンカプレーゼも!」



「めっちゃ頼むやん……」


 俺の記憶違いでなければ二人とも少食だったよね? ユカは読モやってるから食事には気を使ってるはずだし、ミカはそんなユカからお菓子とか制限されてるはずだが。

 というかお前ら、俺にこんなに奢らせる気だったのか!? 二人で樋口一葉《5000円》が飛ぶくらい頼んでるんだけど。


「私は塩サバ定食にしようかな~。亮ちゃんは何食べたい?」


「塩サバって……いや美味しいけどさ。じゃあ俺はカツ丼で」


「はいはい~。すみませーんオーダーいいですかー!」


 ファミレスで大声出すなよ恥ずかしい……。これだから苦手なんだよな。




「んん~! おいしい~! 今月は撮影無いから久々にいっぱい食べれるよ~☆」


「あらユカちゃん、撮影って?」


「あーユカ読モとかやってるんですよー。夏服の撮影も増えてきたし、体のラインとか気をつけないといけなくて大変なんですー」


「まぁ読者モデル!? すごいじゃない、ユカちゃんとっても綺麗だもの。初めて見た時、女優さんかしらって思ったわ」


「えへへ~そう言われると照れちゃいます~」


 母さんの言葉は大げさでも何でもない。事実ユカ程の美人は女優でもそうはいないだろう。その上性格もいいと来てる。まさに天は二物を与えちゃった系女子だな。



「ミカちゃんもモデルとか、やってるの?」


 母さんの質問にミカは気まずそうに目をそらした。そしてさっきまでの上機嫌な顔が鳴りを潜める。


「な、何もしてない……です。ミカは……ユカちゃんと違って……凄くないから……」


「そうなの。美人なのに勿体ないわね」


「あぅ……全然……そんなこと……」


 少しだけ場の空気が重くなった気がした。母さんもそれを感じ取ったのか話題を変える。

 さすが《《職業柄》》空気を読むことには長けている。こういう物事への機敏さを俺も欲しかった。


「さて! ご飯も食べて一段落ついたし、私と亮ちゃんの事について話そうかしら」


「あぅ……りょう君とお母さん……どんな因縁が……。も、もしかして……実は血の繋がってない……親子……!? お母さん……若すぎるから……あり得る……!」


「いやねーよ。正真正銘血の繋がった俺の母親だっての」


 流石にアニメの見過ぎだぞミカ。俺も人のこと言えねーけど。


「実は亮ちゃんが私に冷たいのはね……私のお仕事と関係してるのよ」


「どんな仕事なんですか? その、別居してるのもそれが関係してるんですよね?」


「ええ。中々忙しくてね……それに仕事の性質上、家族と一緒に暮らしていたら色々とまずいのよ」


「ってことは……お家でするお仕事……?」


 その通り。母さんは若い頃から今の仕事を続けている。それこそ俺が物心付く前から続けている仕事だ。

 だがその仕事のせいで母さんは授業参観や三者面談など、保護者としての責務を全うしてくれなかった。


 俺は母さんが苦手だ。母さんの仕事も苦手だ。それを受け入れている父さんに怒りを通り越して呆れてさえいる。


「私のお仕事はね――」


 忙しくてろくに家事も出来ず、仕事に専念するために別居までしている母。それこそまさに、俺の人生の汚点と言えよう。



「――私、ユーチューバーやってるのよ」


「マジですか」


「しかもアイドル的なやつ」


「マジですか」


 マジです。

『お前のかーちゃんユーチューバー』って小学生の頃散々バカにされたからな!

 言われたらめっちゃ傷つくんだよこれ。


 いやユーチューバーという職業は否定しないよ? 俺もバーチャルユーチューバーとか見てるし。

 でも自分の母親が既婚子持ちなのにネットでアイドル的な活動してるんだもの。息子として文句も言いたくなるだろ?



 あえてもう一度言おう。俺の母、進藤萌絵(36)はユーチューバーである。泣きたくなってくるぜ、本当……。


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