あれ?来るとこ間違えたかな?
はい、なんか思いついた
この世のどこかに存在する魔王を凌ぐ実力を持った真のラスボスは、必ずどこかに居て我々勇者たちを待っている……。
秋風が吹き厚着を着込み始めた10月の初め頃。
二人の男たちがこんな噂話をしていた。
「なぁ、そういえば、勇者が魔王を倒したらしいじゃねーか。この世界も安泰だよな〜」
「あぁ、そうだな! こうやって呑気に昼間っから酒が飲めるのもあの金ピカ勇者のおかげだよまったく」
頬を赤くそめフラフラの足取りで商店街を歩く2人組は仲良く肩を組みジョッキを片手に楽しそうに笑っていた。
「そういえばさ、最近聞いた話なんだがどうやらこの辺りに変わった喫茶店があるらしいんだが、行ってみないか?」
「あ? なんだよそれ。変わった店って……面白そうだ。このまま行こうぜ〜あははは」
完全に思考回路がお酒によって焼き切られている2人はこの後に待ち構える、試練を甘く見ていた。
ケラケラと笑いながら2人は噂されていた喫茶店を探すことにした。どうやら、スラム街の外れにあるそうでここから少しだけ離れていた。
教えてくれたふくよかな女性に礼を言いつつフラフラと向かった。
「あの人たち……あそこに行って何をするのかしら?」
婦人のそんな言葉を気にもとめず2人は楽しそうに歩いていった。
スラム街に入るとそこは殺伐としており人っ子一人として歩いてはいなかった。
時折見かける人はボロ雑巾みたいな服を着た子供たちだけだった。
窓から見える人影の中には彼らを睨みつけすぐさま閉めてしまうほどに。
「なんだなんだ? やけに嫌われてんな〜あはは」
「仕方ねーって、ここの連中は家賃が払えなくて追い出されたはみ出しもんばっかりだからよ。それに、子供たちの目に生気が見られねぇ。いいもん食えてねーんだな」
少し覚めてきたのか2人はそんなことを呟いていた。
「お兄さん達〜ちょっとよってかな〜い?」
アバンギャルド高めの女性陣達が手を振りながら誘惑をしてくる。
その日暮らしの彼女達の収入と言ったら、体を売る他ないのだ。
そんな、辛い現実を見る度に思い出される魔王が作り出した魔物の数々。
魔物たちによって死んで行った数々の英雄、勇者、冒険者たち……。
そんなものに思いを馳せていた時期もあったと彼らはしみじみと酒をかっ食らう。
軒先に小さく看板が立てられている。
【喫茶ミル】
矢印の方向を見るとそこにはスラム街とは思えないような店構えの綺麗に整備されたお店がぽつりと一件立っているではないか。
「おいおい、ここじゃねーか?」
「あぁ、多分そうだろうよ。でも、なんか雰囲気違くね? 俺、チビって来ちまったよ。ああ、漏れそう」
「ここで、その癖だすなよ。ほんとに漏らしていいこと無かっただろ?」
そんなことを痴話喧嘩見たく話していると奥からコーヒーのいい匂いが漂ってくるでは無いか。
その匂いに釣られるように2人はその扉を開けてしまった。
扉を開けるとそこは趣のある内装だった。
長いカウンターに、腰掛ける木目調の椅子。赤い座布団はふかふかであまり使われていないようだった。
丸い立ちテーブルが2つありそこには色鮮やかな植物が飾られている。
壁面には数多くの花々が散りばめられておりコーヒーの匂いに混じり柔らかな雰囲気を醸し出している。
「いらっしゃい」
そんな店内で1人異質と言うべきか、赤いドレスを身にまとった麗しき女性がグラスを磨いていた。
「えーと、ここは?」
「喫茶店ですよ。ご注文は何になさいますか?」
差し出されたメニュー表を見ると、コーヒー、紅茶、そして、【私】と書かれたものだった。
「えーと、ここのおすすめはなんですか?」
女性は少し考えると、にっこり微笑み優しい声でこういうのだ。
「コーヒーにする? 紅茶にする? ……それとも…………わ、た、し?」
男たち2人組は首を傾げて問うのだ。
「私を選んだ場合はどうなるんです?」
突如流れ出す軽快な音楽。RPGとかで良く流れそうなラスボス戦の曲調!?
いかにも暴れてくださいと言わんばかりの硬い床に高い天井。辺りには紫色に燃える松明がずらりと飾られている。
極めつけが、先程までのドレスを脱ぎ捨てセクシーさを増した女店主。
小さく生える角がチャームポイント!!
そしておどろおどろしい声で女性の店主が叫ぶのだ!!
【さぁ! ラスボス戦のはじまりじゃー!!!!】