お母さん
飼猫のキュウちゃんが急に喋り出したので、あたしは実にとても驚いたのだが、目しか動かないので、何度も何度も目を瞬いてしまった。
キュウちゃんはゴロゴロと喉を鳴らしてあたしの顔に近づいて来て長い尻尾であたしの左頬を撫でながら額をザラザラと舐めた後、各部屋のドアの下部に付いてる猫用のドアから部屋を出て行ったのが視界の隅で見えた。
そして声だけが聞こえた。
『大丈夫、大丈夫、落ち着いて。説明するのに佳奈子に暴れられると、、、あちしも減給になっちゃうから拘束していたにゃん。
少ししたら上司を連れてまた来るにゃん、、、』
姿はどこにも無いのに耳元で声が聞こえた気がした、、、わっ、、、コレってテレパシーって奴かな?、、、てか上司って誰、えっ?ウチに来るの??キュウちゃんはいつから喋れたんだ???
そういえば、いつからウチで飼ってだっけ???
謎が多過ぎで、あたしは困惑しつつ考えてた。
どのぐらい時間が経ったのか覚えてないが、しばらくするとトントントンと誰かが階段を登ってくる音が聞こえた。
、、、この階段の上がり方は聞き覚えが。
そして、部屋のドアが開いて廊下の光があたしの部屋を照らした時、何かに縛られた様に動けなかった体が急に軽くなって動けるようになった。
[ガバッ!]とベットから起き上がりドアの方を見ると、手におたまを持ったお母さんがドアを開いて心配そうな顔をしながら半身を覗かせていた。
「佳奈子、どうしたん?びっくりした顔して、あれれ、、、勉強しないで寝てたのかー?まぁ、、、夕飯もうすぐ出来るから下に降りといで!」と言った。
そうだ!ご飯!!お腹が空いた〜〜〜!!!
きっと、さっきのキュウちゃんの事は夢だな。
あたしったらアニメの見過ぎの影響か変な夢見るなんてな〜反省!、、、とりま、洗面所で顔洗ってからご飯食べよう。とかポケ〜っと考えていたが、、、お母さんが怪訝な顔をして部屋を覗き込んだままなので、、、
「お母さん!料理途中じゃないの?そして、あまり思春期の娘の部屋の中をジロジロ見るなぁ〜!!!」
と叫ぶと「ごめん、ごめん、とりあえず早く降りといで、今夜はあんたの好きなハンバーグカレーだよ!」と言った後、ドアを閉めて一階に降りて行った。