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3

「触んな」


「は?」


低く唸る様に吐き捨てられた声に優也は耳を疑った。


一瞬にして、周りの空気が凍るのを感じた。


それが腕の中に捕らえている女から発せられたものだと気付くのに暫くかかった。


「い、今……な、なんつった?」


口が上手く回らない。


改めて深雪の顔を見て、言葉を失う。


てっきり前のように、恐怖に怯えていると思っていた。が、彼女の顔に浮かんでいるのは、気味の悪い笑みだった。


反射的に体を離し、銃を向ける。


これは玩具ではない。勝己がその筋から仕入れ、正真正銘の本物だ。


遠目からはわからないかもしれないが、目の前で見ている人間が気付かないわけがない。


しかしこの女は冷笑を浮かべたまま微動だもしない。僅かな汗が、額に浮かぶ。


「こ、このっ……テメェ!?女だと思って、調子に乗ってんじゃねぇ!」


威嚇するが、その声は震えてしまった。すると突然、深雪は口に手を当てて高笑いを響かせた。


「あははは!どうして怖がっているの?私は丸腰なのに」


少し前と同じ口調で言う。


しかし今は、とってつけた様にしか感じられず、違和感が有りすぎる。


深雪は涙を浮かべ、腹を抱えて笑い、やがて恍惚感に酔いしれるように息を吐いた。


得体の知れない恐怖が全身を啄む。


ついさっきまで溢れていた勢いが、跡形もなく消え去っていた。


彼女はそんな優也を見て、まるで挑発をするかのようにヒールを鳴らし、一歩ずつ近付いて来る。


そして先ほどとは打って変り、低い声で言い放つ。


「どうした?ビビりながら銃構えたって当たらないぞ」


言われて初めて気付いた。自分の体が震えているという事に。


「来るんじゃねぇ!ま、マジで殺すぞ!!」


それを振り払うかの様に、わざと声を張り上げる。


しかしそれは、なんの意味も成さなかった。


とたんに彼女の瞳に殺気が宿り、取り返しのつかない事をしてしまったと直感した。


口元だけには相変わらず笑みを浮かべている。


それは不気味とした言い様のない表情だった。


「撃てよ。お前みたいな腰抜けにできるならなァ!!」


女とは思えない程覇気のある声が響く。


その瞬間、銃を持つ手に力を込めた。


このままだとヤバい。


直感し、雄叫びのような声を上げて両手を前に突き出した。

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