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6

帰宅した深雪は、ダイニングに肘をつき、忙しない様子で時計を見つめていた。


午後10時。そろそろコウが帰って来る時間だ。


あの後、秘書課に戻った深雪は、皆に信じて貰おうと弁解した。


自分はヤクザには全く関係はないこと。ましてや、愛人等ではないと。


しかし彼女達を信じさせるには、何より旦那──コウの素性を明らかにしなければならなかった。


テーブルの上には何時間も前から夕食が出来上がっており、すでに冷めかけている。


トントンと指先でテーブルを叩き、溜め息を繰り返す。


その時鍵が開く音がし、急いで玄関に向かった。


「お、おかえりなさい」


「ただいま、仕事がなかなか終わらなくて遅くなった」


そこにはいつもの顔をしたコウが立っていた。


鞄を差し出され、恐る恐る受け取る。


深雪の浮かない表情を見て、コウは小さく微笑む。


「今着替えて来るから、話はそれからでいいか?」


「え、えぇ」


強張った表情で頷き後について行く。


ソファーに座り、ソワソワしながらコウが戻るのを待った。


「今日の事だろ?」


隣に座ると同時に問われ、小さく頷く。


「私……考えたの。やっぱり言う事にするわ」


そう言うと、コウは目を細め「そうだね」と言った。


予想していた答えだったが、否定されなかったのが嬉しくなり、涙が込み上げてきた。


「ごめんなさい……。迷惑かけて」


「良いんだよ。深雪が泣いてる方が辛いから。それに、みんなも受け入れてくれるよ」


「ありがとう」


抱き着き、目を閉じて涙を流す。


コウは軽く髪に口付け、大丈夫だよ、と囁いてくれた。


本当に大丈夫だろうか。


その言葉が意味合いを変えて頭の中を廻る。


正直、確信もなければ自信もない。


しかし残された選択肢は1つしかないのだ。


明日、2人の事を皆に話そう。


コウの胸に頭を預けながら、再度そう決心した。

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