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5

「が、ぁ……や、め……!!」


顔に血液が溜まり、真っ赤になっていく。


だんだんと意識が朦朧としていき、死を直感した。


「ばーか。殺すわけねぇだろ」


「はぁっ……!げほっげほっ!!」


瞼が下がりかけた瞬間、地面に放り投げられ、優也は肺一杯に空気を吸い込んで喘ぐ。


男はそのまま勝巳に歩み寄ると、間髪を入れず頬に硬い拳を叩き付けた。


何の態勢も整えていなかった所を殴られ、不様に地面を転がって行く。


「いいか?これは警告だからな。次姿を見せたら殺す」


「が、はっ……!!」


無防備な腹に、硬い革靴の先が何度も埋め込まれる。


そうして一方的に殴り付けると、男は満足したかの様に深い息を吐いた。


「あぁ、これは返して貰う。会社の金だ」


起き上がろうとする優也の脇腹を強く蹴ると、2人のポケットから5枚の万札を引き抜いて去って行った。


「畜生……あの野郎!!」


男が立ち去った先を睨みながら、フラフラと立ち上がる。


体が悲鳴を上げているが、それすらも感じない程にキレていた。


「あの野郎……殺す!マジでブッ殺してやる!!」


唸る様に呟き、口元を拭う。


一瞬にして考えを切り替えた。


あの近藤という女を使うのは止めだ。金等どうでもいい。あの会社を潰す。


優也は怒りに拳を震わせ、ふらふらと体を揺らしながら、なんとか立ち上がった。


とたんにどうしようもない嘔吐感が込み上げ、血混じりの胃液を吐き出す。


無意識に手に握っていたビラを引き裂き、意識を取り戻した勝巳に向かい、呟く。


「おい。銃、手に入れて来い」


「何丁だ?」


いくらなんでも、ただのチンピラに銃が回ってくる程、日本は甘くない。が、勝巳はなんて事もない、慣れた口調で呟いた。


彼は度胸に欠ける男だが、実はしっかりした筋に通じている。


だからこそ優也は、ずっと手を組んできたのだ。


「1つでいい。その代わり、軽いやつだ」


手に入れたとしても、扱えなければ意味がない。


優也は本気だった。


本気で、あの会社を潰そうと強く決めたのだ。

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