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5

「それじゃあ、また月曜日に」


再び崎村を呼び寄せると、皆を駅まで送り届ける。


無意識に顔が綻んでいたのか、崎村はバックミラー越しにこちらを見た。


「随分とご機嫌ですね」


「えぇ。こんなに充実した休日は久しぶりだったわ」


女同士でお喋りをして、美味しいものを食べて自分磨きをする。


今まで自分には別の世界のものだと思っていた事ばかりだ。


「コウは家にいるわよね?」


「はい、お出かけするご予定は伺っておりません」


「じゃあ、ちょっとスーパーに寄って貰えるかしら。夕飯の買い出しをしたいの」


「はい、かしこまりました」


崎村はウィンカーを上げると、近くのスーパーの駐車場へと入って行った。


「ただいま」


深雪が帰宅したのは、予定通り午後6時を少し過ぎた頃だった。


ドアを開けて玄関に入り、ふと違和感を抱く。


いつもは2人の勤務用の靴が揃えてあるのに、何故かシューズボックスに隠すようにしまわれていたのだ。


「おかえり、楽しかった?」


奥からコウが現れ、笑顔で出迎える。


「えぇ。楽しかったわ。──誰か来ていたの?」


なんとなく、そんな気がした。


しかしコウは「まさか」と笑い、逃げるように戻っていく。


深雪も買い物袋を下げながら後を追う。


リビングに入った瞬間、強いタバコの臭いがした。


「タバコ吸ったの?」


普段はもっぱら小物入れにしていたクリスタルの灰皿には、山盛りの吸殻が入っている。


「あぁ、ごめん。仕事に集中していてつい。窓開けるよ」


窓が全開になると、少しだけ臭いがマシになった。


「少し吸いすぎよ。気を付けてね」


灰皿を片手にシンクへ向かう。中身を捨てようとした時、ふと気づいた。


コウが吸っているのはケントの9ミリロングだ。


しかしこの中には、もうひとつセブンスターの吸殻が入っていた。


「……」


やはり、誰か客が来たのだ。


しかもこの銘柄には見覚えがある。


確か──。


(まさかね。もう縁を切っているはずだもの。今更会うはずがないわ)


これは何なのか気になる。


しかし、なんだか触れてはいけない気がして、黙って吸殻をゴミ箱に捨てた。



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