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6

「うわぁ広い!ここ、ずっと来てみたいと思ってたんですよ!」


車から降りた瑞穂は、嬉しそうな声を上げながら建物を見上げる。


彼女達がやって来たのは、横浜にあるアウトレットモールだった。


太陽の光がガラスに反射し、キラキラと輝いている。


「やっぱり女が揃えばショッピングですよね!行きましょうっ!」


ハイテンションの瑞穂を先頭に、4人は中に入って行った。


「噂には聞いていたけれど、すごいわね」


たくさんのテナントを見ながら、華江が呟く。


中にはハイブランドの店舗も入っており、休日という事もあってか家族連れやカップルで賑わっていた。


「本当。人酔いそう」


人混みがあまり好きではない優は、行く前から溜め息を繰り返していた。


「なに言ってるんですか。ほら、行きましょう」


「ちょうど新しいスーツが欲しいと思っていたのよね。取り敢えず、片っ端から見て行きましょう」


しかしそんな優をよそに、スイッチが入った瑞穂達は、嬉々として先陣をきっている。


「買い物買い物って、どうして女は買い物が好きかな」


結果的に連れ回される形になり、優はため息をつきながらぼやく。


「あら、あなただって女じゃないの。……まぁ、言いたい事はわかるけれど」


呟き、華江は既にいくつも紙袋を持っている瑞穂・さゆり両名に視線をやる。


「これじゃあ私達まるで、2人の保護者みたいじゃないですか」


「強ち間違ってないかもね。迷子にならないように、しっかり監視していなきゃ」


話しながら後をついて歩いている時、ふと前方に見知った人間を見つけた。


「あれ?あそこにいるの、新道君じゃないですか?」


「え?どこ?」


振り向き、優が指差した方向を見る。


確かにそこには、大荷物を抱えた新道が、紙コップを片手にベンチに座り込んでいた。


「どうかした?……あれ。新道さんだ」


後ろから瑞穂達も顔を出し、目を丸くする。


「こんな所で会うなんて偶然ですね。ちょっと声かけてきます!」


唯一新道と面識のある瑞穂は、そう言って駆け寄った。


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「新道さん!」


「え!?」


ぼんやりしている時に後ろから肩を叩かれ、幸一は驚きながら振り向いた。


しかしそこにいる人物を見た瞬間、更に驚いた。


「こ、近藤!?」


「こんな場所で会うなんて奇遇ですねー。デートですか?」


ニヤニヤ笑いながら聞くが、幸一は浮かない表情で深く息を吐いた。


「デートならいいけどな。今日は家族サービスだよ」


「家族サービス?」


「あぁ。あっちこちに引っ張り回されて、終いには荷物番だ」


そう言う幸一の横には、たくさんの紙袋が置かれている。


「凄い数ですねぇ」


「女ってのはハンパ無いからな。お前こそ何でここに?デートか?」


呟きながら、軽く周囲を見回す。


「違いますよ。今日は同僚と買い物に」


「同僚?って事は秘書課か?」


「はい。ほら、あそこに」


指を差された方に視線をやる。そこにはさゆり達秘書課メンバーが揃っており、目が会うと軽く会釈した。それを見た幸一はふと疑問を抱いた。


「アイツはいないのか?」


「アイツ?」


「新人だよ」


「新人?あぁ、深雪ちゃんですか」


その言葉に頷き、視線を戻す。


「新人だけ仲間外れってのは、なんか酷くないか?」


「別に仲間外れにしたわけじゃないですよ!深雪ちゃんは多分、今頃旦那さんと仲良くしてるんじゃないですかねぇ」


「旦那?あぁ、そうか」


既婚者だという事を忘れていたらしく、幸一は曖昧な笑みを浮かべてぼやく。


「女はすげぇよな。こんな人混みの中でも全然パワー落ちないんだよ。俺なんかもうヘトヘトだ」


「そりゃあ、ショッピングはストレス発散ですからね」


瑞穂は満面の笑みを浮かべ、両手にぶらさげている紙袋を見せる。


「ある意味尊敬するよ。──そろそろ戻った方がいいんじゃないか?待たせたら悪いだろ」


再度、離れた場所に立っている3人をチラリと見ると、紙コップの中身を飲み干す。


「あ、いけない。じゃあまた会社で。家族サービス頑張って下さいね!」


「あぁ……」


溜め息混じりに言うと、立ち去る瑞穂を見送る。


再び1人になった幸一は、ぐったりと体の力を抜いた。

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