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彼女の旦那のことは誰も知らない  作者: 石月 ひさか
総務課 柏木広太朗
17/89

4

「ただいま」


暫くし、ドアの開けられる音と共に、コウの声が聞こえてきた。


「おかえりなさい」


玄関に出迎えに行くと、差し出された鞄を受け取る。


「んーただいまぁ!!」


「!?」


突然抱き着かれ、後ろに倒れそうになる。


「酔っているの?」


顔を近付けられた時、強いアルコールの臭いがした。


「ワイン、3本空けたからなぁ」


「そんなに?少し飲み過ぎよ。ほら、脱いで」


土足のままリビングに向かおうとするのを止め、なんとか靴を脱がせる。


足元がおぼつかない為、仕方なく肩を貸してソファーまで運ぶ。


コウはそのまま倒れ込むと、クッションを枕にして眠り始めてしまった。


「あ、ダメよ。シワになるわ」


なんとかスーツの上着を脱がせ、ハンガーにかける。


「もう……」


ズボンも脱がせたかったが、既に爆睡している。


呑気そうに眠る顔を見ると、なんだか急に面倒になり、そのまま眠らせておこうと、ブランケットをかけた。


「食べるって言うから待っていたのに」


どうせなら一緒にと、夕飯を食べずに待っていたのに。こんな事なら、やはり出前にしておけば良かった。


(もう夜だし、今から食べるのは体に悪いかしら)


そのまま寝ようかと迷ったが空腹には勝てなかった。


作った物は明日の朝食にしようと冷蔵庫にしまい込む。


代わりにキッチン台の下からカップ取り出すと、蓋を開けて湯を注ぎ込み、コウの間抜けな寝顔を見つめた。


----------------------------------------


辺りが白々とし始めた頃。


薄暗いリビングの中で、コウは頭を押さえながら起き上がる。


「あれ?なんでこんな場所で寝てんだ?」


寝惚けながら室内を見回す。


昨夜は取引先の相手と一緒にレストランへ行き、ワインを飲んだ。


そこまでは覚えているのだが、その後どうなったのか、どうやって帰って来たのかは思い出せない。


「痛っ……」


どうやらまだ酒が抜けきっていないらしく、頭の芯がズキズキと痛む。


ソファーから下りると、壁づたいに寝室へ向かった。


ベッドでは深雪が眠っており、時計を見ると9時少し前だった。


珍しく寝坊したらしい。


今からでは完全に遅刻の為、会社に連絡しなければ。


だがまだ酒が残ったこの状態で、今からシャワーを浴びて着替えて仕事に行かなければならない──そう考えただけで嫌気がさした。


(今日は別に会議もないし……。たまには良いよな)


寝室のドアを静かに閉めると、リビングに戻って電話をかける。


「──はい。よろしくお願いします」


穏やかな声で通話を終えると、邪魔なワイシャツとズボンを脱ぎ、のそのそと寝室のベッドに潜り込んだ。


(ダメだ。頭が痛い……)


すやすやと寝息を立てている深雪の体を抱き締め、ついでに目覚まし時計も完全にオフにして再び眠りに就いた。



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