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序章
異世界モノは初投稿、長編作品も初投稿です。
温かい目で見守って頂ければ幸いです。
俺は、父親の顔を知らなかった。父は、俺の産声を聞くことも無く、魔族に惨殺されたと母親から聞いた。
幼少期に聞いた事実だ。当時の俺は、父親の不在について疑問を感じた事は無かった。
だが、幾星霜の年月を経た俺の心には、魔族に対する嫌悪の念が芽生え、気が付いた頃には、嫌悪は怨恨への昇華を果たしていた。あの頃の悲哀の念は潰えず、復讐を切望する心は、真紅の焔を纏い、燃え滾る。
復讐を果たす為ならば、俺は悪事さえ厭わない。
酷い鈍痛を感じる瞳で上天を見据えて、白砂の如き純白の入道雲を睨み付ける。
そうだ。俺が此処に在る理由は、父親の無念を晴らす為に魔族を掃討する事。ただ、それだけだった。