#2 彼女の魔法に彼は興味を示す
「ところで、ルート?」
「ん?」
「今から買い出しに出かけるから、つき合いなさい」
「い、今から!?」
「そうよ。夜ご飯の材料がなくて……買い出しに出かけようとしたら、あなたみたいなのに捕まってしまったの! あなたはこれで顔だけでも綺麗にしなさい!」
「ぼ、僕みたいなのってちょっと余計かなぁ? でも、ありがとう」
ミューは懐から濡れたタオルを取り出し、突き出すようにルートに手渡した。
彼はなぜ、彼女は水がないところにいるのにどのようにしてそれを作ったのかに興味を示したが、いと今度こそ殺められると思い、慌てて顔を拭き始める。
一方のミューは少しずつ綺麗になっていくルートの顔を見て少し見とれ、彼の未来を想像していた。
「ミュー、どうしたの?」
「いいえ、なんでもありませんわ」
「僕の顔にまだ血とかついてないかなぁと思って……」
「そのことね。ルート、安心なさい。あなたの顔には何もついていないわよ」
「本当? ありがとう!」
「では、行きましょう。あなたのボロ雑巾みたいな服もどうにかしないとなりませんし」
あのあと、ルートとミューは彼の服と食事の買い出しをしていた。
ボロボロの服を着た少年と黒ずくめの女性というあまりに見慣れない組み合わせのため、端から見ると彼らはなんとも言えない不思議な組み合わせである。
「さて、そろそろ家に帰るとしましょう。早くしないと暗くなってしまうわ」
「家はここから遠いのか?」
「ええ。黙って私のあとについてきなさい」
「はい」
両手に荷物を抱えている二人はミューの家に向かってゆっくりと歩いていた。
その道中は緩やかなところがあれば危険なところも存在する。
彼らは荷物を抱えているため、とても険しい道のりではないかとミューは判断した。
「たくさんの荷物を抱えているから……アレを使いましょう」
「アレ?」
「ええ。浮遊魔法!」
「う、うわぁ……」
彼女が言っていた魔法を発動する。
その魔法は名前の通り浮遊の力で移動しているのだ。
「う、浮いてる……こ、これが魔法……?」
「そうよ。さっき、私があなたに手渡した濡れたタオルも魔法で用意したものよ」
「さっきのタオル……?」
ルートは先ほどミューから受け取った濡れたタオルを思い出した。
彼女は水がない環境でどのようにして準備していたのか分からないくらい、タオルは全体的に程よく濡れており、どのようにやったのかと興味を示していたやさき、ミューの口から魔法であると告白してきたのである。
「そうか、あの時のタオルも魔法だったのか!」
「ええ」
「凄い! 僕にもできるかな?」
ルートが嬉しそうに口にした時、彼女は複雑な表情を浮かべていた。
その理由は彼のような人間の子供が魔法を学んだり使ったりすることができる可能性は極めて低いのではないかと――――。
2018/07/24 本投稿