08
ブクマに心からの感謝を。
有難うございます。
「…というわけで、イチャイチャしてるだろうアリア達の所に走ったと。そしたら、案の定イチャイチャと抱きついてたから…」
「そっ!そんなにイチャイチャ何度も言わないで下さい!!」
私は少し涙目で睨んだ。
たまに会う従兄弟は昔からこうだ。何かと私を構い苛めてくるのだ。
無表情な私をいつも困らせて、私が反応すると喜ぶ子供みたいな所がある。でも、本当に嫌な事をされた事はない。
ローレンが来ると、普段は無視する父や義母が少し優しくなるし、あの寂しい家が賑やかになるので嬉しかった。
でも、年々ローレンが家に来る機会は減り、ここ数年は全く会っていなかった。
私は少し不思議だった。
替えのドレスが準備されていた事といい、エリナや義母の宝石の事といいまるで都合のいいように話が進んだ気がするのだ。
それをローレンに言うとニッコリ笑った。
「俺達は、いつかのこの日のためにずっと罠をはっていたんだよ。公爵家は伯爵家に何も出来ないと油断させ、言い訳無用で落とすこの時を待っていたんだ!まぁ。出来ればお前の誕生日なんかに事を荒げたくなかったが…向こうが何かを企んでいたのが分かっていたから、色々準備していたんだ」
私はぽかんとローレンをみた。
「何から話そうか?アリーナが俺達公爵と繋がっていた事は聞いたよな?」
私は頷く。
「前は乳母が、乳母が体調を崩してからはアリーナが密かに俺達と連絡を取り情報を流してくれていた。エリザベス叔母さんの宝石をあの伯爵夫人が横取りし王家の至宝まで自分のものにしてる事も前から知っていた。また、アリアに届く贈り物も勝手にエリナに渡したり売り払っていることも。流石に王家からのものはアリアが知らないと不味いのでまずはアリアに渡してから、エリナが好きなものを盗っていることも。公爵家の贈り物を自分からだとして伯爵が贈っていることも知っていた。でも、アリアが小さく伯爵の庇護下にあるから俺達はじっと怒りを抑え耐えていた。いつか一番言い逃れ出来ない所で断罪するために」
ローレンがニヤリとする。
「そんな時、エディが落ち込んでるから何事かと話を聞くと、エドの名前でアリアに贈り物をしたのにアリアから反応がないと落ち込んでいた。エディなりにアリアと距離を縮めるため、アリアにだけ分かるエドの名前で贈り物をして驚かせるつもりだったらしい」
「…私は受け取った事なかったの。」
しょんぼりと私が言うと、
「わかってる。だから、その時初めてエディにアリアの現状を伝えたんだ。間違いなく贈り物はアリアに届いてないってね。」
その時のエディの怒りは凄かった!そうローレンは言いながら手で鬼の角を作ってみせた。
「すぐにでも、伯爵家に行こうとするエディを抑え、俺達の仲間にした。その時でアリアは15歳。このままアリアが16歳になれば公爵家に取り戻せる。今伯爵家を攻撃して、アリアの養子の話が無しになればもう伯爵はアリアを家から出さないだろう。お前の妃にもなれない!そう言うと途端にエディは大人しくなったよ」
くっくっとローレンが笑った。
「きっといつかエディの贈り物もエリナは身に付けて社交デビューするだろう。だから、それまで知らないふりをして、エドの名で更に贈り物も続けるよう指示したんだ。
ただ、dearestのリガードネックレスは、本当は昨日の祝いの場で直接渡すつもりだったらしいよ。だから、包装して部屋に置いておいたらしいんだが、執事が気をきかせてエドの名前でいつものように贈ってしまったらしい。渾身のプレゼントだったからその落ち込みようといったら」
ちょっと同情したなぁと全く同情した素振りもみせず、ローレンは続ける。
「昨日のパーティーで、俺達が話してる所に空気も読まず飛び込んで混ざってきたエリナの首に、まさにそのリガードネックレスがあって、エディは一瞬表情をなくし泣きそうになってたよ。」
「私。エリナとエディ様達がとても楽しく盛り上がってるのだと思っていました。。」
そう呟くと、
「はぁ?あり得ない。俺達が学園を卒業して以来の再会で盛り上がっていたら空気も読まず混ざってきたんだよ。一応顔見知りの俺に挨拶しながら、ちゃっかり真ん中に陣取って離れなかったんだ。皆しらけたけど、社交前のルールも弁えない子供のする事でアリアの妹だからと、我慢してたんだよ。それなのに、まぁ図々しく、俺達の会話に混ざって質問ばかりしてきて本当にいらっとしたよ。温厚で真面目なワインズやライアンまでもがひきつった笑いをしてたからね。」
私はあのときの自分の勘違いを知る。
軽々しく混じれないようなメンバーの中に混じっていたから、てっきりエディ様が呼んだのだと思っていた。
だからこそ、エディ様の愛妾になる!といったエリナの言葉を信じてしまったのだ。もしかしたら私の知らない所で2人は知り合っていたのかと。。
まさか、ただ空気もよまず飛び込んだとは思いもしかなった私は呆然とする。
「本来なら公爵家令嬢になったのだから公爵家ですべき宴を伯爵家が強行している事。アリーナから、エリナをその宴に出席させるべくそれはそれは凝ったドレスを作っている事をきいて、悪い予感がした俺達は念のための準備を色々としておいた」
ふとローレンが遠い目をした。
「まさか、伯爵家がエリナを愛妾にしようと画策してるとまでは思ってなかったけどね。せいぜいアリアを貶め嫌がらせをするのだろう、それならその時伯爵家の罪を断罪しようと決めていた。
それにしても、エリナがべらべらと色々話してくれて、予想外に国家反逆罪まで加算出来たのは良かったよ」
そうローレンは悪く笑った。
「王妃となるアリアの後ろにあの伯爵家がいるのは良くなかった。本当に、将来の王妃の生家を盾にやりたい放題だったからね。公爵家が陰から被害者達を救済し表沙汰にはしないようにしてきたがそろそろ限界だった。間違いなくアリアが嫁げば、更に伯爵家はやりたい放題するだろう。このままでは、アリアにも悪い評判がつく。だから、アリアを徹底的に被害者にして、王家と公爵家がアリアを救いだし、悪の伯爵家は罰されたと周りに知らしめる必要があった。」
飲み物を飲みながらローレンが話を締めた。
「まぁ、でも俺達が陥れたわけではない。本当の事を効果的に断罪しただけだ。伯爵家がこうなったのは、自業自得なんだよ」
ローレンのその言葉に私は微かに頷く。
「…私は、本当にお父様に愛されていなかったのね。。」
ポツリと呟いた私の声にローレンは何も言わなかった。
誕生日に贈られるプレゼントは、父の愛を少し感じられ、また私が伯爵家の人間だ、家族だと思える心の柱だった。
でも、その柱は嘘で固めたものだったのだ。
ちょっと私をみて顔をくもらせて、
「ごめんな。アリアが知りたくない事もあったよな。一応親だった訳だしな。」
その言葉にブンブンと首をふった。
「違うの。納得がいったの。いつも私を無視して嫌っている様子なのに、私の物はいつも一流の物を準備してくれて、誕生日もお祝いの一言もないのにきちんと贈り物は届く。
愛情があべこべで、私は家族に対してどう思っていいのかわからなかった。少しでも愛されていると感じた次の瞬間には遥か下に落とされて、心がいつもどうにかなりそうだった。」
私は自分の心を初めて晒す。
「私にずっと愛情を注いでくれていたのは、公爵家だったのね。お父様に一切愛されていなかった事はやっぱり辛い。でも、それ以上に私はちゃんと愛される存在であったことが本当に嬉しいの。ずっと公爵家も私をただの駒としてみているだけで、愛情などないと思っていたの。」
ポロリと知らず涙が零れた。
「ありがとう。ずっと見守って愛してくれていて。とても、嬉しい…」
私がそういうと、ローレンは照れたように笑った。
「愛してるよ、アリア。君は僕達公爵家の大切な家族だ。君が、エディと末永く幸せになることを、俺達は心から祈っているよ。」
ローレンの言葉が、私の心に染みる。
心に優しい言葉の雨が降り注ぐ。
愛情が欲しいと刺さっていた心のトゲが抜けるのを感じた。
なぜ気づけなかったのか?
自分の幼さにも情けなくなった。
ありがとう。。
そう、何度も呟いた。