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04

はぁ。はぁ。

庭の樹木の陰にへたりこんだ。

この日のためのドレスはきっとぐしゃぐしゃだ。

アリーナと選んだドレスは、キレイな白のドレスだった。

華やかな刺繍と、派手すぎない初々しさを少し混ぜて、アリーナの納得する出来になったドレスは本当に素敵だった。

「アリア様は私の自慢のお嬢様です。今日は本当にお綺麗です。エディ様も惚れ直します!」

そんな風に送り出してくれたアリーナに申し訳なく、そして、これからの未来を思って私の目から一粒涙が零れた。


どのくらいそうしていたのだろう。

「アリア?」

そんな声が聞こえた。

はっと振り向くとエディ様が立っていた。

私はびっくりしてエディ様を見上げた。

「…ぷっ。アリアの驚いた顔なんて貴重だね」

そんな声に、私は驚いて開いたままになっていた口を慌ててとじた。エディ様は私の横に座ってきた。

私は驚いて、頭が混乱したまま話していた。。

「エディ様。。わ、私は王妃には相応しくありません。どうぞ、愛する人と一緒になってください。。」

絞りだしささやくような声だった。

私は見たくなかった。エリナとエディ様の仲睦まじい姿を。

王妃なんかいらない。

私は、、私はエディ様の隣に居場所が欲しかっただけだから。

それが例え政略結婚であっても私を婚約者に選んでくれたこと、ほんの年に数回お会いした時の笑顔、年に一度の誕生日カード。それが私の支えだったのだから。。

誰よりも愛が欲しい、そんな欲深い嫌な女なのだから。


私のそんな囁くような声にエディ様は静かに聞いてきた。

「アリアは僕との婚約は嫌だったの?」

嫌じゃない!支えでした!そんな心の声を飲み込んで私は黙っていた。


「…アリア。初めて会った時のこと覚えてる?」

私は考えた。


「…君は興味がないの?」

そう聞いてきたのは、エディ様。あれは、エディ様の8歳のお誕生日に何人かの令嬢が呼ばれ私も呼ばれた1人だった。

その頃の私は今ほど達観できず、父と義母の屋敷中の愛を一身に受ける妹と自分の差が惨めだった頃。

他の令嬢が、幼いなりに、エディ様に群がってる姿を遠目でみてた。

するといつの間にかそんな令嬢達の輪から抜けてエディ様が横にいた。

そして、

「…君は興味がないの?」

と聞いてきた。

私は何て答えたんだっけ?


「アリアはね、無表情でこういったんだ

「王子様には興味ありません。エディ様」ってね。

僕は嬉しかった。皆僕を王子としか見ないのに、アリアだけは、王子と僕をわけて考えてたから。」

「アリア。僕は婚約を破棄する気はないよ。僕は、あの日、無表情で、でも少し寂しそうな瞳で、僕個人をしっかり見つめてきた君の瞳に恋をしたんだ。君の少し寂しそうなでも力強い瞳が頭から離れなくなったんだ。だから、僕の我が儘で君が婚約者に選ばれた。やっと、やっとここまできたのに。」

そう言うエディ様の言葉に私は震える声で

「私とエディ様は、政略結婚では?王家と公爵家で国の強化のための。。」

エディ様は驚いたようにいった。

「どちらかというと、王家とアリアのクワァント公爵家との結婚は避けたかったんだよ。クワァント公爵家が力を持ちすぎることになるから。ローレンと僕は幼い頃から年も同じで仲もよく、ああみえてローレンは幼い頃から優秀と名高く将来の腹心間違いなしと言われていた。それだけで十分、王家とクワァント公爵家は密接だったんだ。僕の婚約者の候補は、隣国の姫君か別の侯爵家の姫君だった。でも僕は君が良かった。僕が絶対アリアじゃないと嫌だと両親と、宰相に粘ったんだよ。」

私は驚いてすぐには声を出せなかった。

「う。。うそ。だってエディ様、、私に会っても顔を背けたわ?話も弾まず楽しそうな様子なんて。。」

それは。。と頭を掻きながらちょっと照れた笑顔で

「それは久しぶりに会うアリアがとてもキレイで驚いたんだ。いつもと違うドレス姿で君がダンスの為に触れるだけで気持ちが高まって話かけられなかったんだ。ごめん」

そうまっすぐ私を見つめる瞳は、澄みきったブルーだった。

「ねぇ、アリア。もう一度聞かせて欲しい。僕との婚約は嫌?無理に王妃教育や重圧を掛けてきたことを恨んでる?」

震える声で聞いてきたエディ様に、私は、もうポーカーフェイスでいられなかった。

ポロポロと涙で顔を歪めて、エディ様にいった。

「私は、私は、エディ様の隣にいたいです。エディ様と愛し愛されて支えあって生きて行きたい!」

そう叫ぶと、エディ様の唇が私の唇におりてきた。

「アリア。可愛い。嬉しいよ」

何度も私の唇にエディ様の唇が降ってきて、恥ずかしさと嬉しさで私の顔はきっと真っ赤で涙で不細工で、いつもの強固な鎧はどこにいったのかしら?

「アリアの色々な表情をみれるのは、きっと僕の特権だね」

そういって、エディ様は私の涙の残る頬にもう一度キスをした。


私は、居場所を見つけたみたい。

ずっとずっと欲しかった私だけの居場所。





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