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03

私は、華やかな集団から目を反らし、喉を潤すため、グラスを傾けた。

泣かない。泣かない。心を落ち着かせる。

泣きそうな心と裏腹にきっと顔は完璧なポーカーフェイスだろう。

いつもは嫌いな自分のポーカーフェイスが、今だけは私を守る鎧のようだった。


そこへ、

「お姉様!」にこやかな笑顔でエリナが近づいてきた。

「お姉様。エディ様ってとっても素敵な方ね!ローレン様もお話が上手でとても面白いの。でもやっぱりエディ様が一番素敵!私にもとても優しくお話してくれるの。とても素敵な王子様だわ」

「…そう」

ニコニコと頬を染めながら、どれだけ楽しかったか、エディ様がどれだけ優しく接してくれたのかエリナは私に話し続ける。

エディ様とローレン様と他の皆様は同じ年で、学友だったとのこと。

この国の貴族男子のほとんどは16歳~18歳まで学園で学ぶ。勉学や剣術などを学び、寮で集団生活を送るのだ。

ちなみに女性も学園はあるが、強制ではない。

女性はどちらかというと、社交デビュー後は、サロン活動を行い社交活動を広げ婚姻相手をみつけたり、情報収集し将来の社交に繋げていく役目となる。

そんな学園生活時代の話を聞いたのだとエリナは教えてくれた。

私も聞いたことのないエディ様の姿の話をエリナは嬉しそうに話していた。

そして、ニッコリ笑ってこういった。

「ねぇ。お姉様。エディ様って本当に素敵ね。とてもハンサムで王子様なのに全然気取ったところがなくてお優しいの。

ねぇ。お姉様とエディ様は政略結婚なのでしょう?

お父様が言ってたわ。政略結婚はそれはそれは冷たく辛い結婚なんですって。例え身分が違っても正妻ではなくても、真実の愛の方が何倍も素晴らしく美しく尊いのですって。

お父様とお母様のように。」

そううっとりと言った。そして、

「ねぇ。お姉様。私とエディ様が真実の愛となるわ。

お姉様は、正妃として国で一番の女性になるのでしょう?

十分なことよね?

だから私はエディ様の寵姫になるわ。エディ様を愛しそして愛されて子供も沢山産むわ。

ねぇ。政略結婚で可哀想なエディ様が笑顔になれるように私がエディ様を支えるわ!素敵でしょ?」

私は頭がまっしろになった。

何をいってるの?

妹はわかってないのだろうか?

エリナのセリフは、政略結婚した私の母も私も貶め、また私の未来をも奪おうとしていることを。。


私は、ガタガタと手が震えるのを抑えることが出来なかった。

手が震え持ってたグラスの中身が零れそうになるので慌ててテーブルに置こうとした。だがその時、興奮したエリナが私の腕を押すようにくっついてきた。

グラスの中身が零れる。そして、私にくっつき夢中で話していたエリナのドレスにかかってしまった。


「…ドレスが!酷い。お姉様、なんでこんな事を!」

エリナが大声で泣き声をあげる。

何事かと周りがみる。

そこでみたのはポーカーフェイスで妹にグラスをかける私の姿。。

義母が走ってきて、声を荒げる。

「アリア様!いつも身分が低いと言ってエリナに冷たくあたって!こんな時にまでこんな酷いことしないで下さいませ!

いつもエリナの物をバカにしたり壊したり!酷いですわ」

そういって可哀相にとエリナを抱き締める。

はぁ?なにそれ?

私はそんなことしたことない。

普段全く接点などないのに。

どちらかというといつも私の物を勝手に持っていったり取ったりするのはエリナじゃない?

気付いてないと思ってたの?

私がいない隙に物が無くなること、知らないとでも思ってたの?

私のお母様の形見の宝石だって、今ではほとんど私の手元にない。

それでも、家族だから、伯爵家に養われてる身だからと黙っていたのに…。


「まぁ。なんて酷い」

はっと気付くと、ざわざわとそんな声が私の耳に入る。

「私は…私はそんなこと…」

私の小さな声は誰にも届かない。

心が真っ黒になる。泣きそうだ。

それでも私の顔はきっと完璧なポーカーフェイス。


そこへ、エディ様が現れた。

「アリア?エリナ嬢?何が?」

大声で泣き続けるエリナにエディ様が声をかける。

「エディ様!!お姉様が!お姉様が私にグラスをかけたのです。今日のためにお母様が選んで下さったドレスだったのに。」

そういって、エリナは涙をいっぱい溜めた顔でエディ様に抱き付いた。


私は。。

私はきっと妹に辛くあたる冷酷な令嬢にみえているだろう。無表情で妹を虐げていると。

エディ様にもそう思われる?

エディ様がエリナを優しく抱き締める姿を見ることなんて出来なかった。

エディ様の隣に立つことだけが私の居場所だった。

でも、きっと私の隣には誰もいない。

これからずっと、隣をみると、花のように笑うエリナとそんなエリナを抱き締めるエディ様の姿。

そんな姿をこれからずっと見続けないといけないの?


私は周りの目を避け、何も言わず庭に向かって逃げた。


もう、私の居場所はどこにもない。


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