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これで本編終了です。

拙い文章に最後までお付き合いいただき、有難うございました。


あと少し、小話として、

エディ視点で続きの話と、ローレンの話を書きたいなと思っています。

よろしくお願い致します。


疲れた体をひきずるように公爵家に帰ると、私の傷だらけの顔を見たお祖母様と伯母様が卒倒した。

そして、この傷が治るまで外出禁止を言い渡され、ゆっくりと公爵家で過ごしている。


幸いにも深い傷はなく、そのうち綺麗に消え傷痕が残る事はないようだが、全ての傷が化粧で隠れるほど薄くなるには2ヶ月ほどかかると言われてしまった。


王妃教育もなく毎日ゆっくりと過ごす公爵家はとても居心地がいい。

家族の皆は勿論、使用人の皆もとても私に優しくしてくれる。アリーナが他の使用人の人達と笑っている所を見たのは初めてだ。

伯爵家では、他の使用人は、伯爵に睨まれているアリーナにもほとんど近付かなかったことを思い出す。きっとアリーナにとっても伯爵家は辛い場所だったのだろうと改めて思う。申し訳なさと感謝の気持ちでアリーナに抱きつくと、あらあらと優しく笑ってくれた。


「エディ様のご様子は?」

そんな公爵家の生活が2カ月近く経過した頃。

後始末のため、お城に詰めていてほとんど顔を合わせることのなかったローレンが久しぶりに帰宅した。

ローレンが苦笑しながら、

「久々に会ったお義兄様より、エディなのか?」

そう言われて、私は慌てる。

「いえ。ローレンに久々に会えて嬉しいわ。でもその、お怪我をしたエディ様が気になって。。」

そういい募る私を面白そうにみながら、よいしょ!そんな貴族らしくない掛声をかけながら、ローレンが私の肩にもたれかかってきた。

私はびっくりして固まってしまう。


実はあのあと、一度もエディ様とは会えていない。


お祖父様達によると、エディ様は、王様にもがっつり怒られ、王妃様には泣かれたらしい。

治療後問答無用で部屋に押し込められ、部屋から出る事を禁じられた上、王族としての教育のやり直しを言い付けられたと聞いた。教育係が部屋に居座り、朝から晩までしごかれているらしい。


そんなエディ様にかわりローレンが当時の報告書や、後始末にかけずり回っていた。


「ふふん。明日、エディにアリアに肩を貸してもらったと自慢しないとな」

そんな風にニヤニヤいうローレンに呆れてしまう。

「もう!重いですわよ!」

引き離す私に、

「エディの傷はほとんど治ってるよ。毎日アリアは?って鬱陶しく聞いてくるほど元気だ。お前のせいで、俺もアリアに会えてないと訴えると何故か嬉しそうな顔をするんだよ。むかつくよな」

そんな気心の知れた2人の様子を想像して、私も少し可笑しくなった。


何気ない会話が途切れると、ふと真面目な顔で、

「今日、伯爵家の最後の裁判が開かれたよ。審判がおりた。」

さらりとローレンが言った。


私はそんな話は聞いていなかった。

あの事件の後、お祖父様達は、私に事件の事を話してくれなくなってしまった。私が聞いてもはぐらかすのだ。


「じいさん達は、アリアを事件から離そうとしてるけど、俺はそれは間違いじゃないかと思ってる。

傷付いたアリアをみて過保護になっているが、どうせいつかはアリアも知ることだ。今知るのか、もう少し気持ちが落ち着いてから知りたいのかはアリアが決めるべきだ。

アリアは伯爵家がどうなったか今聞きたいか?」

私は、こっくりとローレンに頷いた。


頷いた私をみて、ローレンは私にゆっくり話し出す。

「伯爵家は、取り潰しとなったよ。」


ローレンは裁判中の伯爵夫妻の姿を思い出す。


証拠が集まり有罪が確定してくると、伯爵は、全て夫人とエリナのせいにして自己保身に走ってきた。

詐欺も犯罪行為も何かの手違いだと声高に叫ぶ。また、アリアを冷遇してきたこと、王妃の至宝を簒奪したこと、殿下への無礼な振舞いも何もかも夫人とエリナが勝手にした事だといい放った。自分はアリアを守ろうとしていたのだと、堂々と罪を夫人とエリナにかぶせ、自己弁護に走る姿はあまりにも醜かった。


夫人は全て悪いのは、エリザベスとアリアなのだと聞くに耐えない暴言を延々と喚いていた。

かと思えば、エリナがどれほど素晴らしい存在かうっとりと語る。夫人は劣等と優越に支配された執念の塊だった。


エリナは、あのあと自分の殻に閉じこもり、ずっと笑っている。自分が愛されない現実は放棄し、自分の幸せな世界だけをみることにしたらしい。

罵りあう両親をみても華のように笑う姿は、誰がみても狂っていた。


でも、そこまでアリアに話す必要はないだろう。


「裁判中、3人は全く反省の様子はなかったよ。真実の愛の2人は罵りあい、エリナは自分の世界にこもっている。」

そして、少し間を置いて、


「…3人は有罪。極刑となった。1週間後に処刑される。」

告げられた言葉に、私は息をのむ。


「エリナは当初のままなら、平民の教会預かりで済んだだろうが、さすがに王太子とその婚約者に刃をむけ傷をつけたんだ。ここまで来るとどうしようもない。」

「そう。」

私はただそれだけ呟いた。


1週間後、

処刑の鐘の音を私は公爵家で一人聞いていた。

きっと今頃伯爵家の3人は処刑台に立っているのだろう。

「エディ様に会いたいなぁ。」

そう呟いて静かに目を閉じた。


その時、執事が手紙を持ってきた。


差出人は、「エド・アルフォード」。

その名前をみて、私は驚いた。

それは、間違いなくエディ様の幼名。エディ様と私にだけ通じる特別な名前。

その手紙の字が間違いなくエディ様の筆跡であることを確認してから、封をあけると、小さな鍵と手紙が入っていた。

手紙には、あと一刻ほどで会いに行くと書かれていた。


私は慌ててアリーナを呼ぶ。

「アリーナ!今からエディ様がくるの!」

そうアリーナに声をかければ、一瞬驚いた顔をしながらも、心得たとばかりに、

「久しぶりにお会い出来るのですね。とても可愛いくいたしましょう。」

そういって髪とメイクを整えてくれた。


「久しぶりだね、アリア。顔の傷が綺麗になっていて安心した。ローレン達からもう大丈夫だと聞いていたけど、実際にみるまで心配だったんだ」

そういうエディ様に、私も同じだと頷いた。


庭園をゆっくり歩く。

公爵家自慢の庭で私のお気に入りの場所だ。

「エディ様、この鍵は何の鍵ですの?」

私が不思議そうに鍵を見せると、エディ様は照れたように笑って、胸元から箱を取りだした。

「このプレゼントの箱の鍵だよ。開けてみて。」


箱を受け取った私は慎重に箱をあけた。

中身は、とても素敵な指輪だった。

大きなダイヤモンドを中心に、エメラルド、アメジスト、ルビー、サファイア、トパーズが埋め込まれている。

少し並びは違うけれど、これは。。

D:ダイヤモンド、E:エメラルド、A:アメジスト、R:ルビー、E:エメラルド、S:サファイア、T:トパーズ。

宝石達を揃え並べかえると、DEAREST?

嬉しさで手が震える。


「気付いた?」

にっこりとエディ様が笑った。

「アリアに贈るつもりだった、DEARESTのリガードネックレスがあんなことになったから、やり直したくてね。

改めてDEARESTの気持ちを込めた指輪なんだ。

急いで準備したんだけど、こんなに遅くなってごめん。

それでも今日に間に合って良かった。さっき届いたから慌てて出てきたんだ。」

言葉にならないほど嬉しい。

「有難うございます。本当に、、本当に嬉しい!」

箱ごと抱き締めて私はお礼をいった。

しばらくそうしながら、

「でも明日でもよろしかったのに」

そう不思議そうに呟くと、エディ様が言った。


「今日はきっとアリアが泣いていると思ったんだ。だから、少しでもアリアを喜ばせたくて。」

「…!」

私は驚いてエディ様を見上げた。


私は、、

私は、今更お父様達に会いたいとか、お父様達を赦して欲しいとかそんな事は全く思わない。伯爵家での扱いは、思い出しても辛いことばかりだ。裁判をみてはいないけれど、私に対する事だけではなく、処刑となるほどの罪をきっと犯していたのだろう。


それでも、心に冷たく重い複雑な思いが渦巻いていた。それは16年もの間諦めたと思いながらも、家族から愛されたいと叫び続けた私の心の一部分が、消えないトゲとなり、望み叶わず行き場をなくしたのかも知れない。

自分でもどうしようもない悲しさが消えず、心の底で鉛のように重かった。

でもそんな気持ちは誰にも、特に公爵家の人達には言えない。

これほどに大切にしてもらいながら、ほんの心の片隅とはいえ、伯爵家への思いが残っているなんて。

だから、何でもない振りをしていつも通り過ごしていた。

私のポーカーフェイスは完璧だもの。

でも、、

そんな私の気持ちを、エディ様は気付いて下さっていたのだ。


涙が溢れてきた私を何も言わずに、エディ様は抱き締めてくれた。エディ様の胸に包まれていると、心が落ち着き、鉛のように重かった心が少しずつ軽くなり、温かいもので満たされていく。


私の涙が止まるのを確認して、エディ様がゆっくり箱から指輪を取り出すと、私の指に指輪をはめてくれた。

「アリア。これから先、いついかなる時も君を愛し、生涯守ることをここに誓うよ」

真摯に響くエディ様の言葉に胸が震える。

「エディ様。私も。。私も生涯エディ様を愛し、貴方の支えになることをここに誓います。」


その言葉を待っていたかのように、ゆっくりとエディ様の唇がおりてきた。


あぁ。全てが終わったんだ。

そしてここから始まるんだ。



エディ様と唇を合わせながら、これから先の幸せな未来を思うと、先程とは違う、温かい涙が零れた。


~fin~







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