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日常の守り方。  作者: 近衛 サクラ
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出会いのやり方

「っらっしゃいやせー」

電気屋なんて久しぶりだ。いつもパソコン用品がおいてあった場所には子供用のおもちゃ用品が置いてある。春下旬で少し暖かくなってきたからか冷房が効いている。少し肌寒いくらいだ。客は少ない。平日だからか。パソコン用品売り場をさがしてキーボードを物色する。

「お客様何かお探しですか?」

うわ。でた。客が少ないときに発生する何かお探しですか攻撃。これは引きこもりニートコミュ障の3つがそろってる俺にとっては究極奥義並みにダメージが入る。

「いや・・・えっと・・・」

いかにもコミュ障の返答しつつあった俺は気づいた。少し高いアニメに出てきそうなかわいらしい声がきこえた。

「いえ、大丈夫です!」

話しかけられてるのは後ろの人だった。

これはこれで恥ずかしさからダメージが入る。さっさとキーボードを買ってここを出よう。そして家に帰っていつもの日常に戻るんだ。

「まぁGMするには慣れたキーボードがいいか」

なんてつぶやいて無難に壊れたキーボードと同じ種類のものを手に取ったとき、

「あのー、おにいさんGMプレイヤーですか?」

さっきのすばらしい声の持ち主だ。女性だけあって顔を見れない。これだからコミュ障は。

「あ、はい。一応。」

「私もそうなんです!マウス新調しようとおもって。どんなのがいいと思いますか?」

ニュービーかなと思いながらもある程度マウスをおすすめした。有線マウスがいいとかなんとか。

「なるほどぉ!ありがとうございます!」

度々語尾をのばすのがまたかわいいなぁとか思いつつ「いえいえ」と首を振る。

キーボードを購入し終わって岐路につく。もうお昼時で正午ちょうどなのかお昼の音楽がなっている。

「あの、ありがとうございました。」

声をかけられ振り返ると帽子をやや深めにかぶった女の子がいた。声であの子だとわかった。マウスについて話していたがその子の姿を見るのは初めてだった。少し小柄でピンクのワンピース。体つきは華奢で腰上まである金髪は一本一本が生きているように風に吹かれてなびいている。レジ袋を持っているということはマウスを買い終えたのだろう。

「あ、いえ、どういたしまして。」

彼女は帽子をとって自己紹介を始めた。

「私、高橋沙羅っていいます。GMでは『SARA』ってプレイヤーネームでプレイしてます!あの、これから時間あるなら少し付き合ってくれませんか?」

粉雪が降ったような白い肌に、パッチリとした大きな瞳。それはまっすぐ俺を見つめながらにっこり笑いかけている。言葉が出なかった。ただただ、見とれていた。あれ、まって、今SARAっていった?いやいやそんなことはないだろうこんな美少女がGM1位?いやいやいや。

「えっと、どうかしましたか?」

「あっえっと、はいっ!」

声が裏返った。はっと我に返ったときにはもう返事をしていた。どういう話だったっけ。

「よかったぁ!ではちょっとそこの喫茶店に寄りましょう!!」

冷静さを取り戻しながらも平日なのにお昼時ということで席が埋まりつつある喫茶店に入っていく。

「ご注文決まりましたらお呼びください。」

喫茶店の席に腰掛けたところでだんだん事の重大さを実感していく。

女子と喫茶店という状況は俺にとっては緊急事態だ。逃げ出したい。

「いやぁお礼したくてお誘いしたんですが、すみません嫌でしたか?」

どうやら俺の心情は顔にモロに出ていたらしい。

「いえ、そんなことは。あ、あと敬語は大丈夫ですよ。」

おお、少しだけコミュ障の克服に近づいた気がした。気がしただけかもだが。

「そう?ならあなたも敬語じゃなくても大丈夫だよ!」

「わかりまし、わかった。俺の名前は東条憂でプレイヤーネームはTenpestでやってる。」

時々思うが俺のプレイヤーネーム『Tenpest』は中二病くさい。変えたいとも思ったが2位まで上り詰めた名前を変えるのはどうも抵抗がある。

「え!Tenpestさんってランク2位の!?」

「うん。一応。ねぇ君のプレイヤーネームもう一度聴いていい?」

「SARAですけど。あと私のことは沙羅でいいよ!」

「じゃあ沙羅はランク1位の?」

「あ、うん一応そうなってるね!」

まじか。今の俺の心情を表すのはこの一言に尽きる。まずなぜ俺は沙羅のことを沙羅と呼べたのか。確かに架恋のことは幼馴染だが名前で呼べる。しかし赤の他人を!この俺が!でもまぁこのことは俺がコミュ障克服においていい方向に向かっているということにしておこう。もうひとつが彼女がSARAだってことだ。いやいやどんな確率だよ普通出会わないだろとか突っ込みながら話を続ける。

GMの話で3時まで話し込んだ。といっても沙羅が話を進行して俺が反応し答える感じで約3時間過ぎたわけだ。喫茶店前で別れて俺は今日の沙羅とか言う美少女を思い出す。あのルックスでランク1位なんだから反則だ。まぁもう会うこともないだろう。そうやって俺はまたヘッドホンのなかに遮音性の高い自分の世界をつくって新しいキーボードを接続する。ゲームスタート。

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