●第3章 冒険者として ~8話 これからの展望
その日の夜。
宿屋の食堂に集まった瑠璃色の乙女のメンバー達は食事を楽しみながらフェインの言葉に耳を傾けていた。
「とりあえず、俺の事情で申し訳ないが、一度セラリルに寄りたいんだが大丈夫か?」
こくこくと頷く少女たち。
申し訳なさそうに後頭部を掻きながら、フェインは話を続ける。
「で昼間の話だが、瑠璃色の乙女として、どうやっていきたいとか、何か目的とか目標とかはあるのか?」
「う~む。それなのだが……」
質問に対して答えたのが瑠璃色の乙女のリーダーであるシルファ。
だが、どことなく歯切れが悪い。
実のとこと冒険者になってすぐにマルタリオ商会に騙された彼女たちは、その後ククルフィールが倒れ、紆余曲折を経てフェインと出会い今に至る。
つまるところ瑠璃色の乙女としてどうこう考える余裕などなかったのである。
「ん~」と悩む4人のメンバーにフェインは、「そんなに悩まなくてもだな――」と話を続けた。
「例えばどこか行ってみたい場所があるとか、やってみたいことがあるとか、別に難しく考えなくてもいいんだがなあ」
「それならば――」
と小さく手を挙げたのは瑠璃色の乙女のリーダーであり、大太刀使いの剣士、シルファだ。
「私は、一度地下迷宮で冒険者活動をしてみたい。様々な魔物に地下迷宮特有 の環境で自分がどの位通用するのか知りたいのだ」
「お! そうそう。そんな感じだ。いいそリーダー」
フェインに褒められ、口をもにょもにょ動かすシルファ。
照れ隠しか給仕に飲み物を頼んでいる。
「ちなみに地下迷宮だと、近いところで有名なのはブブリュン地下大迷宮だな」
ブブリュン地下大迷宮。またはその周辺を指してブブリュン迷宮都市とも呼ばれる。バルバリアからセラリルを抜けて更にその先にある都市である。セラリルを通るので丁度いいんじゃないかとフェインは説明する。
「では、わたくしも、行ってみたい都市がありますわ」
上品な仕草で手を挙げたのは巨大な戦斧を使いこなす魔族の戦士であるエリメラだ。
皆の視線に促されたエリメラ。
「水上都市国家スアチネですわ。実は以前から興味がありましたの」
巨大なスアチネ湖周辺の都市が集まり形成された都市国家で、風光明媚な観光地でもある。そして別名、芸術の都スアチネ。文化と流行の発信地。
「舞台観劇に行きたいのですわ――」と少し上気した表情で語る。
「いいんじゃねえか? ブブリュンからちと離れているが、まあ行けないことはねえと思うぞ」
「もぐもぐもぐ。ごっくん! はい! はい。は~い」
と元気よく手を挙げたのはエルフの回復魔法と弓の使い手ククルフィール。
「僕もあります。いいですか?」
「おう! どんとこい。ちゃんと呑み込んだな。えらいぞ」
「ありがとうございます! 行きたいのはアオレドリア王国です」
アオレドリア王国。あらゆる物と情報が集まる小国だ。力のある商人達が裏で経済を動かしている。食の都としても名高い。
「一気に海を越えたな~」
「おいしいものが食べたいです!」
ちなみにアオレドリア海王国は別大陸。海を渡らねばならない。
そして最後に、まだ発言していない少女である獣人の魔法使いであるモモに視線が集まった。
「…………」
「「…………」」
「……………………」
「「……………………」」
「ん。……ルフィスの塔」
「「おおー」」
魔法と魔道具、そして学問の国と言われるエヴェングール聖皇国の首都にあるルフィスの塔。様々な研究がなされている最高研究機関だ。
「夢は大きくだな!!」
アオレドリア王国と同じ大陸にある上に、更に遠く、首都は内陸部にあり、途中険しい山脈が控えている。
「それじゃあ、こういうのはどうだ? バルバリアである程度、稼いでセラリルで旅の準備を整える。まずはブブリュン地下大迷宮に行ってとにかく迷宮で稼ぐ。その後は陸路で水上都市国家スアチネで観光して、港町から船でオレドリア海王国に移動して、向こうのギルドで依頼をこなしながら最後にエヴェングール聖皇国に向かう。どうだ?」
「「わー!!」」
キャッキャとはしゃぎ、あーだこーだと目を輝かせて話す少女たちを何処か眩しい物でも見るように目を細めるフェイン。
通り過ぎた若かりし頃を思い出す。
鳥の肉料理を頬張りながら、どうにかして金貯めねえとなあと考えていた。
悲しきかな。先立つものが必要なのだ。
だが、まあ――
(目的がちゃんとあるっていうのは、張り合いがあるからな。あいつらには冒険者を楽しんで欲しいからなあ)
「フェインどの~」
「きゃあ! シルファがいつの間に酒飲んでますわ!!」
「ん。おにーさんの耳が唾液でテカテカしてる」
「もぐもぐもぐ。 あっ!!ずるい。僕もします!!」
姦しい夜は楽しい声で過ぎたいった。
ランプの灯りが質素な室内を照らし、これまた質素な椅子に腰掛けた男がひとり、ため息をこぼす。
「なんとも、困りました。どうしたものでしょう…………はあ」
気分を変えるため、男は趣味のアロマキャンドルに火をつけた。
男の好きな優しい香りが部屋を包んでいくが、それでも表情は冴えない。
「何かいい方法はないでしょうか」
眉間のあたりをもみほぐしながら、良い考えが浮かばないものかと悩む。
男の名はラディオンギーク。
ここは、バルバリア城塞都市の冒険者ギルド内の一室で、ドアの前には『副ギルド長室』と書かれた簡素な木札がかかっている。
44歳独身、副ギルド長など名ばかりで普通に受け付けもこなさねばならない、薄い頭髪が悩みのアロマが趣味な中間管理職の冴えない中年、ラディオンギークはひとり思いついたように呟いた。
「! そうです!! こんな時は彼に聞いてみましょう!!!」
ラディオンギークはひとりのB級冒険者の顔を思い浮かべてる。どうやら今日は胃薬のお世話ならずにすみそうであった。
果たして、瑠璃色の乙女たちは、たどり着けるのか!
何より、筆者が書ききれるのか!!!
応援よろしくです。
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