●第3章 冒険者として ~5話 大事なお仕事
長くなりそうなので2分割です。
カルガモの親子の行列ならぬフェインの後ろをついて歩く瑠璃色の乙女の少女たち。
微笑ましいはずの光景ではあるが、どことなくしょんぼり元気がない。
そんな瑠璃色の乙女のパーティーは今日も変わらず冒険者ギルドに足を運んでいる。
少女たちは結局お金が足りなくて宿屋の代金をフェインに立て替えてもらったのである。
「リーダーとして情けないことこの上ない」
「ええ。本当にお恥ずかしい限りですわ」
「ん。借金生活」
「頑張って、身体で返すね!」
反省している様子の3人とよく分からない1人。
「まあ、気にするなとは言わないが、安心しろ。それに、今日はしっかりと身体で稼いでもらうからな」
「「えっ!?」」
4人にニヤリと少し意地悪く笑いかけフェインは依頼掲示板ではなく、受付カウンターに向かう。
「ふ、フェイン殿。いったいどんな依頼を受けるのだ?」
エリメラとモモは顔を見合わせ、リーダーであるシルファがフェインを見上げながら、おずおずと聞いてきた。
一体何をするのだろうか? も、もしもの時は一番年上の私が!! と決意し、ククルフィールは今日は黒のお気に入りだから大丈夫!!と無い胸を張っている。
受付カウンターの受付嬢に何かしら話をしたフェインは受け取った依頼用の木札の紐に指を入れてくるくる回しながら後ろの4人に振り返った。
「街の安全と平和を守る、大切なお仕事さ」
と言う訳で、再び瑠璃色の乙女が訪れたのは――
「「孤児院?」」
「というか、今日は教会だな。そうだな~……。ちなみに教会の役割って分かるか?」
「成人の儀式だろうか。私も受けたばかりだし」
「結婚のお祝いや登録も教会が行ってますわよね」
「ん。お葬式。この間のククルフィールのお葬式の時いた」
「うわー。モモ止めてよ。その言い方。あとは、墓地とかの管理とか、孤児院の運営とかかな」
「おっ。意外と知ってたな。で今日の依頼はというと……まあ、護衛任務なんだが、ククルフィールが言った『管理』に関係しているんだ」
「それは、冒険者ギルドで借りてきました、これが関係しますのかしら」
「ん。ぶかぶか」
「それに、ギルドの人達の様子も何だかおかしかったよね」
エリメラ達が持っているのは、カンテラに地味な色合いのフード付きのマントとブーツ。数枚の布切れと短剣。
ギルドで依頼を受けた際に、借り受けた物品である。
特に、シルファ、モモ、エリメラ、ククルフィールにはマントとブーツのサイズが合わずに苦労した。冒険者ギルド職員が。
だが、冒険者ギルドの職員の瑠璃色の乙女のメンバーを見るまなざしは、不憫な、まるで出荷される子猪を見るようなもので「頑張ってね!」と頭髪の薄い年配のギルド職員などは涙を浮かべていた。
更には、その様子を見ていた、ベテランだと思われる冒険者からも「えらいな嬢ちゃんたち」と果汁水を奢られた。
一体何をやらされるのであろうか。
「まあ、行けばわかるさ」
「「??」」
「ここにな」
とつま先で地面をトントンと蹴った。
ぼんやりと頼りないランタンの灯りが薄暗いレンガ造りの通路を歩く瑠璃色の乙女のメンバーとアールハール教のシスターであるベルーナの周囲を照らす。
コツコツと響く足音は通路の脇を流れる水路の音にかき消される。
狭い通路は辛うじてフェインが頭を下げずに歩ける程度の高さしかなく、幅も2メールほどしかない。
フェインを先頭にシルファ、ベルーナ、モモ、ククルフィール、エリメラの順で歩いているが、冒険者ギルドから借りたフード付きのマントとブーツを履き、口元を布で覆った隙間から見える瑠璃色の乙女の少女たちの瞳に生気は無い。
ここはバルバリア城塞都市の地下。汚水流れる下水道だ。
「地下の下水道ってのは、変な獣が紛れ込んだり、空気が澱んで瘴気が発生すんだよ。瘴気で魔獣かしたり、駆除しないと疫病を流行らせたりするからな。んで、瘴気を『浄化』できる教会が領主から下水道の管理を任されているわけなんだが――」
と言ったところで水路から水飛沫を上げて小さな羽の生えた一つ目の蛇の小さな魔獣がフェインに飛びかかってくる。それを冒険者ギルドで借りた短剣で東部を一突きしてする。
水飛沫、もとい汚水飛沫がぴちゃぴちゃと少女たちのマントに振りそそぐ。
小さな鱗のドロップアイテムを拾い、フェインは話を続ける。
「ええっと、どこまで話したっけ。――――お前らやけに静かだな。まあいいか。それで、下水道には特に瘴気がたまりやすい場所があってな、そこまで浄化ができるベルーナさんを護衛する依頼が、教会から回ってくるわけだ。元が領主からだし、依頼料はかなりいいからな。楽しみにしておいていいぞ」
((出来るかあ!))
と言いたい瑠璃色の乙女の少女たち。
水の中で活動するコウモリの革で作られ、防臭効果のある草の汁で染められたマントとブーツに、消臭と解毒効果の魔術紋が縫い込まれた口元を覆う布。汚物により発生するガスの爆発を防ぐための火を使用しない魔術具のランタンに火花が発生しない塗料で塗られた短剣。
完璧な対下水道用装備。
((なのに何で臭いのよ!!))
不思議なことに臭い。
途轍もなくだ!
口を開けることも躊躇われる。
魔物が水路から飛び出してくるたびに、ねっちょりとした何かがマントに跳ねる。マント越しでも伝わる感触。フードと口を覆う布の僅かな隙間から、肌に黒い茶色の何かがついた気がするが気のせいだ。そう気のせいだと思いたい。
汚されてしまった。
ちなみにベルーナは全身を清浄な空気で包む特殊な魔道具を持っている為、汚れることも臭いも問題ない。ただし1人用である。
すでに3個目の瘴気が発生しやすいポイントをシスターが浄化した頃には、無残な姿の冒険者が出来上がっていた。
なぜだろう。しっかりと革ひもで縛ったはずのブーツの内側のつま先側がぬちゃぬちゃするのはなぜだろう。泣きたい。
そんなシルファ達の様子に苦笑いを浮かべながら、フェインは内心驚愕していた。
(何というか、伊達にA級冒険者じゃあないってことか)
過去依頼で頭に入っている地下下水道の構造や水面の長年冒険者として培ってきた感。それらを総動員して、魔獣の突然の襲撃に対応しているが、それでもギリギリになり、マントの汚れは酷い物である。
しかし、A級冒険者である少女たちは、あきらかに汚れ具合が異なっている。ぐっちゃぐっちゃのどろどろのフェインに比べると、ぬちゃぬちゃのねろねろで済んでいる。今も死角から襲撃を見て確認したうえで余裕を持って対処している。目は死んでいるが。
(何よりも、前衛の二人だけじゃあなく後衛のモモとククルフィールも同じくらい凄いしな)
さすがのA級冒険者であった。
次回は戦闘回です。
久しぶりの文章はどうですか?
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筆者のやる気スイッチですね。




