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●第3章 冒険者として  ~4話 特殊依頼って何?

久しぶりの投稿です。

よろしければ覗いていってね!

「一応、ここが特殊依頼に記されていた依頼場所になっているのだが、合っているのだろうか?」


「え、本当にここですの? ここって普通の――――」


「ん~? …………教会」


「だよね。フェインさん。本当にここなんですか?」



 シルファ、モモ、エリメラ、ククルフィールの4人とフェインを含めた瑠璃色の乙女の面々は特殊依頼に記された依頼場所へと足を運び、古いレンガ造りの建物である街中の教会の前に到着するが、依頼場所が普通の教会であることに戸惑う少女4人。その様子に懐かしいものでも見るようなフェインが足を進めていく。


 「ああ、大丈夫だ。合ってはいるが、ただこちら側じゃあないからな。ここの裏側になるんだ。取りあえず付いてきてくれ」


「「はーい」」


 物珍しそうな4人と慣れた様子の1人が向かったのは教会の裏庭。教会と同じくらい古いレンガ造りの質素な建物が見えてくる。


 壁面は蔦に覆われており、古ぼけてささくれた木製の扉は、錆びたノッカー備え付けられている。窓は汚れで曇り中を窺うことはできない。


 一体この場所でどのような依頼が、冒険が待ち受けているのかと胸を躍らせる4人の少女たち。


 特に戸惑う様子もなくフェインがノッカーを叩く。そして何が起こるのか、もしかしたらもう一度ゴブリンのようなエルフの老婆が再び現れるのかもしれない。



 しばらくしてゆっくりと扉が開いていく。


 ((おお~………お?))


 まあ、普通に若いシスターが顔を覗かせるのであった。





「お久しぶりですね。フェインさん」


 倉庫から両手で小さい木箱を抱えた、年の頃は25~6歳位のシスターであるベルーナから嬉しそう話しかけられたフェインは、両肩に大きな木箱を乗せて、並んで歩く。


「ああ。ここ最近はセラリルで活動していたからな。久しぶりのこの街での依頼になるな」


「あら~。そうなんですか。じゃあ本当に今回は運が良かったんでしょうね。数日前から依頼を出していたんですけど、なかなか引き受けて頂けなくて、困っていたところなんです」


「いや、こっちも丁度よかったよ。できれば一度ここにあいつらを連れてきたいと思っていたんだ」


 広間の端に木箱を置いたフェインとベルーナは再び倉庫に戻る。


「にしても、冬支度には少し早いんじゃないか?」


「それなんですが、長雨で野菜が高いんですよ。ですので早めに準備しておこうかと思いまして」


「あ~、なるほどな。本格的に高騰したら大変だもんな。食い扶持も多いし」


「ええ。食べ盛りの子達ばかりですからね」


「確かにな」


 再び冬支度用の道具が入った木箱を倉庫から広間に運ぶ。広間のあちこちで楽し気な黄色い声が響いている。


 アールハール教バルバリア教会付属孤児院。


 ここでは12歳以下の身寄りのない幼い子供達がアールハール教会の庇護の元で集団生活をしており、今回の特殊依頼は『教会の冬支度の準備また子供たちの世話』といった内容なのである。


つまり、フェインが冬支度の準備を手伝い、そして他のメンバーたちは、現在子供たちの世話を行っているのだ。



「早く逃げないと捕まえてしまうぞ~!」


 キャーと笑顔の子供たちが散り散りに走りだす。子供達と鬼ごっこをしているのはシルファだ。


「い~ち。に~い――――」


 楽しそうな顔の子供達のようすから「しっかりお姉さんしてるじゃないか」とフェインは感心する横で、ベルーナが「あんなに小さいのにしっかりしてるんですね」と呟く。実際瑠璃色の乙女のメンバーで唯一成人しているシルファであるが、残念ながら違和感なく混ざっている。



「――と青オーガが手紙を置いて家を出て行こうとしたところで、赤オーガと村人が家に飛び込んで青オーガを縛り上げて言いいました。お前のやろうとしていることはまるっとお見通しだ!なんと赤オーガは村人に事情を正直に話していたのでした――」


 部屋の隅ではモモが子供たちに本を読み聞かせている。普段ののんびりした口調ではあるが、意外と上手い。なぜか集まっている子供が男の子ばかりなのは、巨乳に魅せられた悲しい男の性なのかもしれない。




「じゃあ君がお母さん役で、君がお父さん役ね」


「おねえちゃんのやくはなあに?」


 おままごとをしているのはククルフィールだ。こちらは女の子が多く集まっている。服を引っ張る小さな女の子に、にっこりと明るく元気な声でククルフィールが答えている。何ともほのぼのとした光景である。


「僕は、間男役だよ」


「「まおとこってなあに?」」という子供たちに説明しようとしていたククルフィールを急いで止めたフェインであった。



 ちなみにエリメラはここにはいない。瑠璃色の乙女の中で一番料理が得意だという彼女は年長の子供たちを連れて厨房で料理を一緒につくっている最中である。


「魔族風スープを皆様にお教えいたしますわ!」


とキラキラした瞳でエリメラの角を見つめる子供たちを引き連れていった。絵本や吟遊詩人の歌う物語に必ずと言っていいほど登場する正義に英雄である魔族は子供にも大人気なのである。





数時間後――――


冬支度用の木箱を全て倉庫から運び出したフェインが目にしたのは、エリメラのつくったスープを飲んでお腹が膨れた子供達がぐっすりと眠りこける孤児院の子供達と、その子供たちに埋もれるように寝息を立てる瑠璃色の乙女の少女たち。


「あらあら」とベルーナが子供達とシルファに毛布を掛けている。


「すまんな。ベルーナさん」


「くすっ。いいんですよ」



静かになった孤児院。優しい瞳で眠る子供たちを眺めるフェインを見て笑みを零した。


「あいつらに……」


「はい」


「あいつらに、冒険者ってもんを嫌いになって欲しくなくてな」


「はい」


「冒険者のイロハも知らない、成人したかしないか分からない、そんなひよっこが人の悪意に晒されて、

まあ、なんだ。今日は息抜きもできたんじゃねえかなとな」


「はい」


「そんなわけで、助かったよ」


「こちらの言葉ですよ?」


「まあ、受けとっといてくれや」


「ええ。はい」



ゆっくり、ゆっくりとレンガ造りの古びた孤児院の時間が過ぎていく。







「今日はどうだった?」


特殊依頼を達成したフェインは少し眠そうな4人を連れて夕暮れの中を歩く。


「今日はどうだった?」


「うむ。依頼というのは色々あるものなのだな」


「ん。楽しかった」


「ええ。あのような形でも笑顔をつくれる。すばらしい依頼ですわ」


「そうだね。これまで魔獣退治や討伐依頼しか経験なかったからね。初めてだったよ」


「そうか……」


地面に伸びる長い影もどこか満足げに見える。


「ところでお前ら」


「「はい?」」


「まだ、宿屋代稼げていないからな?」


「「ひゃー!!」」


叫ぶ少女たちの姿に笑いが止まらないフェインであった。





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