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●第2章 悪意と乙女  ~7話 真打登場

次回も戦闘回になります。


特に慣れない文章のため、読みずらいとは思いますがご容赦下さいませ。

 ホルスの用意した拘束具で自分たちを縛り、床に転がる『瑠璃色の乙女』の面々。


 マルタリオの『命令』に体は反応しようとするが、陸にあがった魚のように何もできない。


 契約魔術によって強制力のある命令を履行しようにも、できない状態を自ら作り出したのだ。





 そんな『瑠璃色の乙女』の状態に混乱するマルタリオであったが、すぐに周囲の配下たちに檄を飛ばす。配下の1人であるラナガは焦りながらも懐から笛を取り出し、襲撃の合図を鳴らした。






 激しい剣戟の音と怒声が地下空間に響き渡り、剣線に合わせてポロの花びらが舞い散り、白が赤に染まっていく。血を浴びた臓物石は赤く、朱く、紅く、宝石のようにぬめりと怪しく輝いている。


(くそが!歩く法の書が、こんなに強えなんて!)


 剣の腕を買われ、マルタリオの元で多くの悪事に手を染め、元から国に指名手配されている男は、目の前の青き鎧に身を包んだ『歩く法の書』と対峙する。


(権力だけで戦う力なんて無いってのは・・・デマかよ!!)


 男は踏み込み、相手の喉元を突くと見せかけて、寸前で手首を捻り強引に横から凪ぐ。


 しかし、向かい合う『歩く法の書』は身体を半身にし、手にした独特な形状の武器で受け流した。


 長い柄の先に反った片刃の武器は薙刀に近い形状をしていたが、柄は短めで、刀身は柄と同じ長さをしており、刃にも柄にも特殊な魔法効果が付与されている。


『歩く法の書』の技か付与の効果によるものか、男は剣を合わせた手ごたえ無く、勢い余ってたたらを踏む。


 それでも、男は無理な姿勢も構わず、強引に剣を振るおうと膝に力を籠めた。


 ゴッと鈍い音。


 痛みよりも先に視界が傾く違和感。


 男は力の入った膝を石突で突かれて、態勢を崩した。


『歩く法の書』は迷いない動きで、そのまま男の利き手を切りつける。


 魔素で強化さた腕は軽い傷をつけるだけであったが、男の注意を引くのには十分であった。


 男の視線が傷を負った腕に移った瞬間に、死角に回り込むように体を回転させる。


 回転させた勢いそのままに男の無防備な側頭部を峰で打ち付けると、男は意識を手放して崩れ落ちた。


 男を倒した『歩く法の書』の隊長であるホルスは叫ぶ。


「このまま押し込むぞ!」




 劣勢を悟ったマルタリオはラナガにいくつか指示を出す。


 頷いたラナガは先ほど異なる笛を取り出して吹くと、大声をあげた。


「歩く法の書に捕まれば、処刑は確定だ。ポーションを使用しろ!」






(ちっ! こいつら!)


 副隊長の一人である、ネネルは突然動きが変わったマルタリオの配下達に舌打ちする。


 笛の音と共に、瓶に入った液体を飲んだマルタリオの配下たち。


 それは彼ら用に調合された、身体機能の向上と引き換えに理性を飛ばす麻薬であり、剣を振るう力や速さが上昇し、動きは獣じみた動きは乱雑でありながら傷つくことを躊躇わない暴力的な破壊力があった。



「殺す。殺して、犯しつくしてやる」


「死ね死ね死ね死ね死ね!!」


 意識は辛うじて保っているようであるが、目は血ばしり、口角からは泡を飛ばしながら叫んでいる。


 だが、それでも『歩く法の書』は止まらない。


 膝を砕き、腕の健を切り裂く。峰打ちで脳を揺らし、意識を刈り取っていく。


「大切な証人だからね。出来るだけ殺さずに捕らえな。ただ無理はするんじゃないよ」


 ネネルは振り下ろされた斧を躱すと、低い体勢で斧使いの踵を切り付け、よろめいた相手の手首を振り上げた勢いの峰で叩き、あらぬ方向へ曲げる。


 そのまま手首を返すと石突が斧使いの顎を捕らえ、血と唾液と歯をまき散らしぐらりと倒れた。


「意識を刈り取るか、両手両足を砕いちまいな。じゃないとこいつらはとまら・・・・」


 ネネルが隊員たちに注意を呼び掛けていると、聞こえてきた重たい足音に悪寒が走った。



「ネネル!!」


 ネネルは誰かに抱えられて横に飛んだ。臓物石の上をポロの花にまみれながら、転がる。


「ホルスたい――――」


 ネネルは抱えて転がったホルスに、理由を問おうとするが、灰色の巨大な塊が先ほどまでネネルがいた場所を地面ごと抉る光景に言葉を飲み込んだ。






 灰色の塊が、ゆっくりと体を起こし、ネネルとホルスに首を向ける。





「ポポタン? いや・・・ポポタンフルン!」




 騎獣として人に飼われたポポタンの野生種である、ポポタンフルンは俊敏性こそポポタンに劣るものの、倍近い体躯に、厚い皮膚、何よりも前足の退化したポポタンと異なり、鎌の様に鋭いかぎ爪のある凶暴な長い前足が特徴であり、B級種『B級冒険者が1パーティーで問題なく倒せるレベル』程の戦闘力を誇る獣である。


 しかし、それほど優秀な力を持つポポタンフルンではあるが、本来は恐ろしく臆病で、身に危険があると闘うことよりもすぐに逃げ出してしまい、人にも懐かないことから調教師泣かせな動物である。





「がぐうっ! がっ!! ぐううう!!」


 だが、ホルスとネネルを視界に捉えたポポタンフルンは狂ったように吠える。


 唾液をまき散らしながら、涙を流す赤黒い瞳が憎悪に染まっている。体には赤黒い血管のようなものが全身に根を張る様に蠢いている。


「くそっ! 麻薬で興奮して凶暴化してるのか」


 不自然に盛り上がった筋肉に微かに腐臭のするポポタンフルン。


 ネネルとホルスは立ち上がると武器を構える。


(ちょっとまずいわね~。B級レベルのポポタンフルンが麻薬で凶暴かして、身体能力も上がっているとしたら)


「1班と2班はこいつを抑える。他の班はそのまま戦闘を継続」


 ホルスは隊員に命令するが、隊員から「敵、更に増援です」との声にホルスとネネルは隊員の視線を追った。


 黒く巨大な塊が花畑を踏みしめて近づいてきていた。


 更に5体のポポタンフルンが人への増悪を滾らせ唸り、そして泣いていた。



「ぐがっ! ぎゃっ!!!!」


(しまった!)


 近づくポポタンフルン5体に注意が反れた瞬間に、先ほど突撃してきたポポタンフルンが再度、巨大な角をホルンとネネルに向けて駆ける。


 2人は武器を構えるが、まともに受ければ致命傷になりかねない。




(間に合わない)






 灰色の塊がぶつかった。



 巨大な岩同士が衝突する音、衝撃。


 ポポタンフルンはホルスとネネルを避けるように右へと方向を替えて、少しよろめいた後、地面に突っ伏した。


 2人の前には大きな盾を構えた長身の男。


「痛っ~! ふたりとも大丈夫か!?」




 B級冒険者フェインがいた。






「真打登場ね。助かったわ」


 ホルスは礼を言いながらフェインに笑いかける。


 けれどもフェインは首を横に振った。


 地面に突っ伏していたポポタンフルンが立ち上がり、怒りの視線をフェイン達に向けている。



「いいえ、違いますよ」


「え?」


 盾を構えながらどこか余裕の表情のフェイン。ポポタンフェインが突撃しようと地面を蹴った瞬間。






 銀の一閃。






 ポポタンフルンの凶暴な角を、厚い皮膚と固い頭蓋を、小さな脳を細長い光の帯は貫通し、一直線に突き抜ける。


 ポポタンフルンの肉体を貫通した小さな跡は、追うように嫌な音を立てて、その周囲を肉塊へと粉砕し、肉と血の雨をまき散らした。



 鉄の門の前に佇む人物。



「本当の真打は――」




 被っていたフードを脱ぐと、銀の髪とエルフ耳。




「A級冒険者、瑠璃色の乙女」




 巨大な弓を構え、すました表情の少女。





「ククルフィールだ!」












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