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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編集

女神の素材

作者: 星馴染

開いて頂きありがとうございます。


バシュッ


ボウガンから放たれた矢は、楕円の弧を描きながら、対象へと突き刺さる。

「ピギャァァァァァァ」

 私はほっとして、獲物の前へ向かった。

 その生き物は、頭を貫かれ、絶命していた。良かった、これで弟を救う事が

できる。


 ユニコーンの角は、万能薬だ。

ピタタクライスラ病にかかった弟は、余命三ヶ月と診断されている。弟を救う

ためなら、何でもしてやる。

 そう決意して、私は情報を集め、ピタタクライスラ病を治癒できるユニコー

ンの角をようやく手に入れる事ができるのだ。


 ユニコーンの子供が、倒れたユニコーンのあたりでウロウロして泣いていた。

「お父さん!お父さん!……お姉ちゃん誰?ハッ、そのボウガン。まさか、貴

方ね!貴方が私のおとうさ」


バシュッ

「ピギャァァァァァァ」


 子供のユニコーンの角は、万能薬だ。高く売れる。


 角を折ろうとして近づくと、眩い光が現れた。

「待ちなさい!私は森の女神。何故このような酷い事をするのですか!」


「……弟が。弟がピタタクライスラ病にかかって……仕方ないんです」

「それは……大変ですね。生き物が助け合うのは私も嫌いではありません。

いいでしょう、そこのユニコーンの角を持っていきなさい」


 いや、女神と言っても、お前がそんな上から目線で持っていけ、と言う権利

はあるの?とジト目で睨みながらも、

「ありがとうございます、女神様」

 私はありがたくユニコーンの角を受け取る事にした。


 ふよふよ

「……」


 ふよふよ

「……あの、女神様。なんで付いてくるんですか?」


「貴方の弟の話が嘘かもしれないでしょう?ちゃんと見届けますから。嘘をつ

いていたら、貴方を殺しますからね!」


「いえ、まあ本当ですからいいんですけどね?」


 ふよふよ

……イライラする。


「グルルルル、ガァァァァア!」

 女神様と二人で歩いていると、急に熊が襲ってきた。


バシュ

「ピギャァァァァァァ!」


「ちょっ、熊さんを殺すなんて。貴方は何をしているんですか!」

 女神様が激おこだった。


「いや、襲われたから……。あのままだと殺されてたのはこっちだし」

 そういって、熊の身体をバラし、解体する。肉と薬になるのだ。


「酷い。なんて残酷な事をするん……」

「ガァァァァ」

「えい、天罰!」

「ピギャァァァァァァ!」


 躊躇なく熊を殺る女神様。オイ、とジト目で見ると女神様は顔を逸らした。


「……女神様。何をしているんですか?」

「女神を敬わない熊のけだものに天罰を与えたまでです。いいでしょう、この

天罰を与えられるべき獣の肉も持っていきなさい」

「……ええ、まあ貰いますけど」


 そして熊肉をリュックに詰めて歩き始めようとすると……

「えーん、えーん」

「お父さんが死んじゃったよぉ……。お母さんも病気だし、もう俺死んじゃう

よぉ……」

 解体した残骸の熊だった物に縋り付いて、子熊が泣いていた。


「……なんて可哀想な。貴方、どうするんですか?責任を取りなさいよ!」

 女神が私に向かって怒鳴る。

 いや、その子熊が縋り付いてるのはお前が殺った方の熊のだから。


「くすん、くすん。に、人間の目があれば治るのに……」

「……」


 すっと子熊にボウガンを向ける。撃つ瞬間、女神様はボウガンを足で蹴り飛

ばした。

「な、なにを!?」

驚愕する私に向け、女神様は懐から取り出したフォークで私の片目を抉った。


 ッッ!?


「……ほら、泣かないで子熊さん。この人間の目でお母さんを治しなさい」

「ありがとう、女神のお姉さん」

 イラッ……。


「何よ、貴方がユニコーンに対してやった事よりもマシでしょう?ユニコーン

は死んでるんだからね!それに魔法をかけて抉ったから痛くないでしょう!」

「……」


 少し歩くと、トカゲの子供が泣いていた。

「えーん、えーん。人の足が無いとお母さんの病気が治らないよう……」

 バシュッ

 反応する前に女神様は私の左足を切り飛ばし、トカゲの子供に与えていた。

「……ほら、泣かないでトカゲさん。この人間の足でお母さんを治しなさい」

「……ッツ!?」

 片足が無くなった私は、女神様の力でできの悪い義足を作られた。


「えぐえぐ、人間の腕が無いとおにいさんが……」

「くすん、人間の胸が無いとおじいさんが……」

「ひぐ、人間の髪が無いとおばあさんが……」


 片目、片腕、片足、胸肉、髪、内臓。女神の力で抜き取られながら、私は弟

のために家へと向かう。この森の動物、人間材料の薬が必要すぎだろ。


 ようやく家について、全身ボロボロの私は、ユニコーンの角をすりおろし、

弟に薬のおかゆを作ってあげる。

「あら、本当に病気の弟がいたのね!許してあげるわ!」

 最後まで上から目線の女神にイライラしながら、


 おかゆを食べ終わった弟は、ピタタクライスラ病の白い痣が消えて私は一息

を付く。この弟さえ助かるなら、私はどうなってもいい。それくらい溺愛して

いるのだ。


「ありがとうございました、女神さ……」

 女神様が弟の首を持っていた。胴体は切り離され、弟がもう動かない事は明

らかだった。


「まぁぁぁぁ……!?」

「いいのよ、生き物は助け合って生きていく物だから。良かったわ、これでピ

タタクライスラ病から完治した瞬間の人の首がないと治らないペガサスさんの

命も助かる事だしね」


 私はそっとボウガンを女神に向けて、首を抱いている女神を打った。

「ピギャァァァァァァ」


 女神の素材は……誰の命を救う事ができるだろう。

 誰か教えてください。


読んで頂きありがとうございました。

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